ジム通いはしない、夕食では毎晩1本の白ワイン…糖尿病の名医が実践する「運動と食事」の絶対ルール
プレジデントオンライン / 2023年8月29日 9時15分
※本稿は、サライ編集室『5人の名医が実践する「ほどほど」健康術』(小学館)の一部を再編集したものです。
■夕食時には「辛口の白ワイン」
健康管理の一丁目一番地は「太らないこと」だと考えている私は、糖質制限で体重コントロールをしています。
糖質制限は、甘いものはもちろん、ご飯やパン、麺類といった炭水化物の摂取量を減らす一方、カロリーは気にせずに食べられるため、空腹を我慢することは一切ありません。
まだまだ多くの人が、「カロリーが高いものを摂取していると太る」と誤解していますが、それは大きな間違い。私はお酒も飲むし、脂っこいものも食べます。
毎日の食事を好きなように楽しむことは、私の健康法そのものと言ってもいいでしょう。
夕食時には、たいてい妻とふたりで辛口の白ワインをボトル1本飲みます。白ワインは、含まれるミネラル成分の影響で痩(や)せる効果があることがドイツの医学論文で報告されています。
一方、甘口タイプのワインは糖質が多いのでNGです。あくまで辛口のものを愛飲しています。
赤ワインも糖質は少なく、体にいい抗酸化物質のポリフェノールがたっぷり含まれていますから、料理に合わせてときどき飲みます。
日本酒は、そこそこ糖質は含まれていますが、あまり気にすることはないでしょう。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒は糖質ゼロですから、いくら飲んでも太りません。
■2リットル近くの水を一緒に飲む
一方で、ビールは糖質が多いので私はあまり飲みません。ビール好きの患者さんには、1缶までとして、続きは「糖質ゼロ」の商品に代えるよう勧めています。
なお、お酒を飲むときには、一緒に大量の水を飲むのが牧田流。水を飲むと血中アルコール濃度が薄まるため悪酔いしません。
具体的には、2リットル近く飲むでしょうか。外食の場合、何度もコップについでもらうのが煩雑なので、最初からピッチャー(水差し)を頼むほどです。
■たいていの日本人は脂質をもっと摂っていい
私は脂質もたっぷり摂っています。こちらも誤解している人が多いのですが、口から摂取した脂質が、そのまま体の脂肪になることはありません。それどころか、健康維持に脂質はとても大事で、たいていの日本人は「足りない」くらいです。炭水化物は控える傍(かたわ)ら、脂質はもっと摂っていいのです。
というのも、脂質は37兆個もあるといわれる体中の細胞の、膜をつくる原料となっていて、どんどん使われます。また、不要な分は便に出てしまうことが多いため、摂り過ぎを心配するには及びません。
ですから、油脂類もどんどん口にしますが、その質には気を配ります。なにしろ、細胞膜の原料となるのですから、おかしなものは摂りたくありません。
たとえば、安価なマーガリンやサラダ油などには、とても体に悪いトランス脂肪酸という成分が含まれています。トランス脂肪酸は心疾患のリスクを大きく上げることが医学的にはっきりしており、欧米では厳しく規制されていますが、日本はまだ緩いのです。
私が日常的に摂取している油はオリーブオイル。なかでも、エキストラヴァージンオリーブオイルと呼ばれる高品質のものを、サラダや料理にかけて食べています。オリーブオイルの健康効果は、本場スペインやイタリアだけでなく、広く世界で認知、証明されているからです。
バターは、自然放牧で育った牛の乳でつくった「グラスフェッド」と呼ばれるものを選んでいます。一般的なスーパーにはないので、ネット経由で入手しています。いずれにしても、油脂は鮮度が大切。時間が経過して劣化した油脂は体に悪いので、なるべく新鮮なものを摂るようにしています。
具体的には、オリーブオイルを買うときに、お得な大瓶でなく容量の少ないものを選んで、早めに使い切るといった具合です。
■減塩するとジャンクフードを欲しなくなる
一方で、塩分の摂り過ぎには気をつけています。というのも、塩分は、心疾患や脳卒中、慢性腎臓病など、怖い病気を引き起こす高血圧の大きな原因だからです。今は、尿を調べることでその人がどれくらい塩分を摂取しているかが、かなり正確にわかります。私自身の計測結果は1日6.7g。これは、同年代の男性と比べて相当低い数字です。
日本人男性の平均は11gですが、若い人は少ない傾向にありますから、中高年の場合15gくらい平気で摂っている人も多いと考えていいでしょう。普段から減塩に努めていると、いいことがもうひとつあります。薄味に慣れるにつけ、舌が素材そのものの美味しさを理解できるようになるのです。すると、添加物にも敏感になり、自ずとジャンクフードのような体に悪いものは欲しなくなります。
■食後のスクワットで血糖値を抑える
私の専門の糖尿病は、いわば一生付き合う病気です。自ずと患者さんたちと私の付き合いも長くなります。そんななかで、私自身の健康維持のために、彼らから教わることも多いのです。
私のクリニックでは、患者さんに「リブレ」という自動的に血糖値が測定できる機器を使用してもらっています。それによって、「いつ、どんなものを食べると血糖値が上がるか」がしっかり把握できるからです。また、運動が血糖値に与える影響もよくわかります。
血糖値を上げないためには、炭水化物を食べた後、すぐに運動するのが効果的です。患者さんたちは「どんな運動が一番いいか」をいろいろ試し、私に報告してくれるため、この点でも参考になることが多いのです。
患者さんから勧められ、私も挑戦してみた運動に「12秒スクワット」というものがあります。これは、普通のスクワットよりもゆっくりと膝の曲げ伸ばしを行ない、1回に12秒かけるというもの。太ももへの負荷が大きく、10回もやればかなりの運動量になります。
患者さんの実験によると、食後に15分間ウォーキングするよりも、12秒スクワットを10回やったほうが血糖値を抑える効果が高かったそうです。
■私の場合、ジム通いは健康に逆効果だった
それを聞いて、炭水化物を多く食べてしまったときなど、私もしばらく行なっていたものの、股関節に違和感が出てきたため、休止しています。どうやら、私には負荷が大きすぎたようですが、運動不足の人はしばらく試してみて、ご自身に合いそうでしたら取り入れてみてもいいと思います。
運動は、人と同じことをする必要はなく、自分の体の様子をみながら、長続きするものを選ぶのが一番です。私は、スポーツジムの会員になったこともありますが、長続きしませんでした。クリニックの仕事が終わるのがだいたい夜7時頃ですから、それからジムに行ったのでは夕食時間が遅くなってしまいます。夕食から就寝までの時間が短ければ消化にも悪いし、肥満の原因ともなるので、私の場合、ジム通いはかえって健康に逆効果だと気づいたのです。
そんな私が、ずっと続けているのが歩くこと。わざわざウォーキングタイムを取るのではなく、通勤を利用しています。自宅からクリニックまで、歩いて片道15分。この往復30分で4000歩くらいになります。
加えて、休日には1万歩ほどの散歩をするようにしています。
さらに、寝る前の時間を利用して20~30分間、筋肉トレーニングやストレッチをしています。筋トレを行なうと、ホルモンの一種である「アイリシン」が分泌され、脳の海馬という部位の萎縮が抑えられることがわかっています。
つまり、認知症予防にも効果があるということです。
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AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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