健康的に減量したいなら…〈プロテイン〉より〈サラダチキン〉を食べたほうがいいワケ【肝臓外科医が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月20日 11時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
日本人の国民病とも言われる「糖尿病」。予防するために重要なのは「脂肪を落とすこと」だと、肝臓外科医の尾形哲氏は言います。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、糖尿病の予備軍である「境界型糖尿病」に加え、「脂肪肝」と診断された広人さん(仮名)との会話を通して、健康的に減量する方法について見ていきましょう。
減量のカギは「タンパク質の摂り方」?
【登場人物】 ・前田 広人(会社員)……20代から10kg以上太ってしまった30代の会社員。健康診断により「肝機能」と「糖代謝」で要精密検査となり、スマート外来へ。スポーツドリンクの大量摂取が一因となり、「境界型糖尿病」と「脂肪肝炎」との診断が下される。
・前田 美希(主婦)……広人の妻。妊娠5ヵ月。
・尾形 哲(医師)……肥満・脂肪肝専門外来「スマート外来」担当医。外来患者の8割以上を3ヵ月で5kg減、脂肪肝改善に導くメソッドを確立する。
つらかった……。お腹がすいた。たまには、スポーツドリンクも飲みたかった。最初の10日間は、そんなことばかりを考えていた。でも、妻のサポートと順調に減る体重に支えられた。そして、2週間を過ぎる頃には、主食の量にさみしさを感じにくくなった。
そして、体重が86kgを切ろうかという朝、3度目の診察日を迎えた。
未精製の食品が健康な体を作る
診察室に入るや、O先生は立ち上がって僕らを迎えてくれた。
「1ヵ月、よくがんばりました!食事内容を見せてもらいましたが、美希さんの食事のおかげで、広人さんは目標の4kg減を達成できましたよ。気づいたことや調理の工夫も書いてあり、本当によくやってくださったことが伝わりました。途中で、お茶碗のサイズを変えたんですか?」
「はい。大きいお茶碗にちょこっとご飯だとさみしい感じがしたので、お茶碗自体を小ぶりにしました。夫がこの意味に気づいたのは、3日後でしたけど……」
と、妻は笑った。先生も微笑んでいた。
「あとは、以前、野菜不足にならないように野菜ジュースを飲むこともあったのですが、それはやめて地元の朝採れ野菜を2~3日に一度購入して、サラダやスープにするようになりました。私の朝の散歩にちょうどいいのもあって……」
「夏野菜はおいしいし、厳しい残暑から体を冷やすにも都合がいいですね。市販のジュースに頼らないで、旬の野菜を取り入れるのはいいことです」
「子どものためにも、私が食べるものもこだわりたいと思ってきました」
今日の妻はすこぶる饒舌だ。
「ご家族全員で健康になれますね。では、一緒に血液検査の結果を確認しましょう。空腹時血糖113。ヘモグロビンA1c5.9、AST36、ALT102、γ-GTP40。血糖値も肝機能も数値が改善しています。広人さん、1ヵ月の食事改善で体調に変化を感じていますか?」
「はい。最初の1週間はお腹がすいてすいて……。でも何をどれくらい食べていいのか判断がつかなくて、妻任せでした。飲食店に入るのも怖くて、お弁当を作ってもらったり。僕は余計なものを口にしないことだけに集中する日々でした。とにかく『極意5ヵ条』を守れたか、毎日、妻とも確認しながらやっていきました。
2週目になって、やっとランチで定食屋に入ることができ、おそるおそる『ご飯を半分で』と店員さんに告げました。一度体験してしまえば、次からはスムーズになるもんですね。明らかに体重が減る傾向が続いたので、次第にこの食事法でやっていけると思えるようになってきました。体重計に乗らなくても、体が軽くなったことを実感できています。
ただ、見た目はあんまり変わらないなと思っているのと、やっぱりお腹がすいたなと思う時間帯はあります」
「そうですか。1つ気になったことがあるので教えてください。朝と間食で、たまにプロテインを摂っていますね」
「はい。糖質を減らす代わりにプロテインならいいかと思って……」
「その考えは間違っていませんが、なるべく加工された栄養素よりも、元の材料がわかる食材を摂ることをおすすめします。しかも、某プロテインスプーン3杯分より、サラダチキン1個に含まれるタンパク質量のほうが多いのです。余計な添加物を摂って、肝臓に負担をかける心配もないですしね」
「……そうなんですか!? 今後はそうします」
〈先生からの処方箋〉食材を未精製に近い形で摂る習慣は健康な未来の「自分への投資」。
摂り過ぎも危険!1食あたりのタンパク質の摂取量の目安は?
「タンパク質の話が出たところで、タンパク質の摂り方についてもお伝えしておきましょう。先ほどすぐにお腹がすくという話がありました。広人さんはタンパク質量が少し足りないかもしれません」
「私もお肉やお魚をどれだけにすればいいのかよくわからなくって……。食べさせすぎてもいけないのかと思い、迷い迷いでした」
妻が身を乗り出してきた。
本当にありがたい。僕は食べ物なんて、味と量を重視でこれまで過ごしてきた。栄養素のことは、まだまだ勉強不足と言わざるを得ない。
「まず、タンパク質がなぜ大切か説明しましょう。タンパク質は体を作る栄養素と言われますが、筋肉量を維持するために重要な栄養素です。筋肉量が十分なら、特別な運動をしていなくてもエネルギーが消費されるんです。要は、糖質がエネルギーとして使われやすいということです」
「だから、タンパク質はたくさん摂ったほうがいいわけですね」
「ただ、いくらでも摂っていいというわけでもありません。タンパク質は、多く摂りすぎると生活習慣病のリスクが上がることが知られています。また、1度に多量に摂っても、消化吸収できないのです。毎食20g以上30g以下にするといいですね。安全なタンパク質は、順に①大豆、②魚、③とり肉、④赤身肉(牛・豚)です」
なるほど。改めて、栄養素について知らないことばかりだ。
「何事も適量があります。広人さんのように糖質を減らしてすぐ空腹になるなら、野菜と一緒に毎食タンパク質を20~30g摂りましょう。この習慣を身につけたことで、ダイエットに成功した人は多いですよ」
肉や魚を増やして減量できる。俄然興味深く、先生の話に耳を傾けた。先生は、目安となるタンパク質20gの覚え方を教えてくれた。まず、肉と魚は100gでタンパク質20gになるそうだ。
以下の食品は、タンパク質7g分の分量として覚えておくといいらしい。①豆腐は3分の1丁、②卵は1個、③納豆は1パック、④無糖のヨーグルトは150g。これらの食品を3つ選んで食べれば、タンパク質を21g摂れることになる。
「この換算法を知っていると、献立を考えやすくなります。それに、朝食でタンパク質20gを摂っておくと空腹感が減って、減量もさらにラクになりますよ」
今の僕にとって、大変ありがたいアドバイスだった。
〈先生からの処方箋〉朝食にタンパク質を20g摂ると、空腹感が減り減量がラクになる。
尾形哲 長野県佐久市立国保浅間総合病院 外科部長/「スマート外来」担当医
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