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なぜ日本企業は無能な高齢社員が居座れるのか…非常に頭のいい人が日本から去ってしまう納得の理由

プレジデントオンライン / 2023年8月29日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tijana Simic

日本企業が成長を遂げるには何が必要か。イギリス在住で著述家の谷本真由美さんは「ビジネスの現場でミッションを達成するには、『特殊部隊の超精鋭による超短期間の破壊工作』といったプロフェッショナルの仕事が求められる。しかし、日本企業は『新卒一括採用』『終身雇用制』により全く違う戦い方をしている。これでは秀吉のように優秀な人材が現れてもさっさと足抜けして浪人になり、外国に行ってしまう」という――。

※本稿は、谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

■超少数精鋭による超短期決戦

仕事において高い付加価値をつけられるようなスキルを持つ人々が求めるのは安定性やステータスではなく、何か新しいことをやってみたい、よりよい製品やサービスをつくりたいといった情熱です。

つまり、仕事というのは、ただお金を稼ぐだけではなく、自分自身の興味の追求だと捉えているわけです。自分の興味がある方向に徹底的に進むことで、結果として、面白い製品が生まれてくるのです。

そして、興味がなくなったり面白いと感じられなくなったりすれば、また別のところに移動したり、まったく違う人と新たなチームをつくり上げるわけです。

これを別の例でたとえると、特殊部隊の超精鋭による超短期間の破壊工作です。目的を達成したら、解散したり別のところに行ったりして、別のミッションに従事するわけです。

また、これを戦国時代にたとえると、敵の城をどうしても落としたい場合に力のある侍を調達してきて短期決戦で戦いに挑むようなものです。

城に立てこもっている側からすると、戦いのプロが短期間で一気に攻め込んでくるわけですから勝てるわけありません。そして、侍たちはまた別のところで異なる武将に雇われて、次の戦に挑んでいくというわけです。

■無能な管理職が居座っている

ところが日本企業の場合はこのような戦い方をしていません。

ビジネスモデルがまったく違うわけです。

いまだに日本の企業は40年前と採用の仕方が変わっていません。

大学を卒業したばかりの専門性も経験もない学生をとりあえずたくさん囲い込み、会社の中でゼロから育てて、いろいろな部署を経験させて村社会を形成し、長くその会社で働き続けてもらうというやり方を続けているのです。

これも戦国時代でたとえると、周辺の農民を非常に少ない報酬で引っ張ってきて、異なる藩や領主のところに移動させずに、特殊な技能や知識も身につけさせずダラダラと働かせるというやり方です。

「新卒一括採用」「終身雇用制」はものをつくればつくるほど売れた戦後の時代であれば問題なかったのです。しかも当時は上にいた優秀な人々が戦争で大量に亡くなってしまったので、ちょっと才覚のある若い人々が仕組みをどんどんつくり上げることができる環境でした。

その他大勢の人はそれに従ってわーと大量に働いていればよかったわけですから、専門性のない働き手がたくさんいてもまったく問題なかったわけです。

ところが今は違います。

全世界にビジネス上のライバルが大量にいるのです。

そして、競争が激しい中で売れるものというのは、非常にユニークで付加価値の高いソフトウェアや高品質の工業製品です。

そういうものをつくれる人は豊富な知識と高いスキルを持たなくてはいけません。要するに、精鋭中の精鋭でなければ無理ということです。

そういった人材を同じ国の中で探していても限界があるので、全世界から募る必要があります。また同時に、超高額の報酬、いい環境、自立性の高い働き方を提供しなければ優秀な人は来てくれません。

■日本でDXが進まぬ理由

日本と海外はビジネスモデルだけではなく、デジタル化でも大きく水をあけられています。日本でも最近DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるべきだという主張を聞くようになりましたが、海外では、すでにデジタルは浸透しきっています。

情報技術ネットワーク 世界中のワイヤレスデバイスを接続するためのインターネット
写真=iStock.com/ookawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ookawa

ビジネスにおいては非効率さや不便さは一番の敵です。それがわかっている欧米の国々では、デジタル化を最優先で進め、ビッグデータを収集することで、効率化を図っています。

また、先ほど紹介したように、欧米ではプロジェクトごとにチームを構築していくスタイルなので、別の人間になっても仕組みが動くようにしなくてはいけません。それが一番安く、最も簡単にできるのがITを利用することなのです。

ところが、日本は少数の優秀な人材を集めるのではなく、スキルの低い大量の人材を集める労働集約型のビジネスモデルなので、効率化よりもとにかく安い労働力を大量に投入することが優先されます。

日本のDX化の現状がいかにお粗末で「負け戦」なのか、また戦国時代でたとえて見てみましょう。

日本企業のような農民集団の中にも、秀吉のように優秀な人間が現れることもあります。しかし、彼らは非常に頭がいいためにさっさと足抜けして浪人になり、よりよい環境に身を置くようになります。

外資系企業はまさに浪人の集団です。浪人とは要するに、スキルがあってどこでも自由に働ける人間です。そういう人たちは海を越えて、外国に行ってしまうのです。

外国の人は幕府や日本国内の藩よりもはるかに高い報酬をくれるので、そっちに行ってしまうのは当たり前です。しかも今や日本は鎖国しているわけではないので、自由に移動ができるのです。

■失敗することを避け「何もしない」状態

このように、日本の組織は超優秀な武将や浪人を高待遇で雇うという柔軟な仕組みになっていません。なぜかというと、上にいる大名やその家臣が無能だからです。

無能でありながら権力を持っている人たちは自分の現状に満足しているので、現在の体制を維持することに心血を注ぎます。

そういった組織では失敗をすることが極端に避けられるので、「何もしない」ようになります。

これが日本企業で無能な高齢の社員が居座っている理由です。

この状況を打破するためには、多くの武士が藩から足抜けをするほかありません。そして優秀な武将や浪人たちは自分たちで別の藩を立ち上げたり海を越えて海外に行ってしまい外から圧力をかけるほかないのです。

北米や欧州では会社というのは武将や浪人が集まっている集団なので、指導する人間が無能な将軍の場合はみなで逃げ出したり、謀反を起こしたりします。なので、組織のトップ層が割と短期間で入れ替わるのです。

そして、有能な人間ほど高い報酬を得る体系になっています。ビジネスとは命をかけた戦いなので、そうなっていなければ不公平だと感じる人が多くなり、組織としては成り立ちません。

つまり、日本企業は全世界が戦国時代の状態であるのにもかかわらず、鎖国されているふりをして、いまだに孤立した中でなんとか商売を回しているのです。しかも年寄りはどんどん増え、子は生まれず、戦える人がどんどん減っていくという危機状況です。

そして、子どもには戦国の世の厳しさを教えず、毎日毎日能や生花、詩歌の稽古など、役に立たないことを教えている。要するにゆとり教育です。実際に戦場で戦う人々にそんな教育は必要ありません。

彼らに必要なのは敵を叩きのめす腕力と武力であり、重や弓矢を使いこなす知識です。しかし、今の日本は海外からすでに攻め込まれていることにも気づかず、のほほんと現状維持を続けているわけです。

■「女性」に働いてほしくない政府

しかも、不思議なことに、日本政府は「働き手が不足している」と言っていますが、実は働きたくても働けない人たちが日本にはたくさんいるのです。それは「女性」たちです。

日本では、子育て世代の20歳代後半から30歳代の就業率が他国と比べて低い傾向があります。そういった女性たちは、教育レベルが高く、やる気もありますから、どんどん働いてもらうべきなのですが、職場が女性にも働いてもらえる環境を整えないのでどうしようもありません。

魅力的な実業家は、タブレット PC を使います。
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

そこにこそ日本政府が手を入れるべきなのですが、なぜか放置されています。

これも戦国時代にたとえればもっとよくわかります。

戦場に出て行かなければならないのは年寄りと指示待ちの農民だらけです。しかし敵は大砲を持ち、厳しい訓練を積んだ軍勢でありなんとかして国土を守るために戦わなければなりません。

体力があってやる気もある女性たちはたくさんいるのです。この人々をなんとかして活用する方法を日本政府も日本の会社も考えなければならないのです。

しかし上に居座っている人々は、現状維持で失敗を恐れる人々で、外様である女性たちから攻撃されることが怖くてしょうがないのです。

こんな人々はさっさと見限って女性たちややる気のある武将や浪人たちは自分たちの組織をつくってどんどん出て行ってしまったほうがよいでしょう。

■本当に必要なのは特殊スキルを持った浪人

人不足の解決策として日本政府は日本の入国管理法を改正して外国人労働者も日本にどんどん定住できるようにしています。

実は先進国において日本は非熟練労働の外国人が労働許可や定住許可を取るうえで最も簡単な国なのです。しかも労働ビザの取得費用も激安でこれほど簡単な国はありません。

谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)
谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)

要するに政府は日本の労働集約的な仕事のやり方を根本から改善することなしに、とりあえず激安で働いてくれる足軽農民を外国人でもいいからどんどん入れてなんとかしようという非常に短絡的な考え方なわけです。

しかし教育を受けていない足軽農民には付加価値の高い漆器やからくり人形をつくることはできません。多勢の足軽よりも必要なのは特殊スキルを持った指導者や職人、相手を確実に仕留める浪人です。

数ではなく質なのです。

日本の女性たちには武将や優秀な職人、技術者、研究者、花火屋、忍びの者、大工の末裔もいます。

わざわざ文化も言葉もわからない外国人を苦労して連れてくるよりも、日本の国土や文化を理解しており、空気を読むことにたけていて、忍耐力があり、教育レベルも高い彼女らを訓練して隠密や職人、刺客に仕立てればよいのです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
著述家、元国連職員
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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(著述家、元国連職員 谷本 真由美)

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