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高収入で忙しい人ほど引っかかる…お金のプロが口をそろえて「絶対手を出してはいけない」という"NG保険"2つ

プレジデントオンライン / 2023年8月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ivan-balvan

貯蓄型の保険はお得なのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「貯蓄型の保険商品は貯蓄と投資を兼ねられるように見えて、実は手数料が高い。『つみたてNISA』と『掛け捨て保険』の組み合わせの方が効率的だ」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

福井さん(仮名/29歳)のケース

年収 800万円
貯金 1000万円
月々の保険支払額 10万円

■仕事に忙殺されて貯金だけが増えていく

「投資」してお金を増やしたいけど、ちょっと怖い。でも、「保険」には安心感がある――。そんな気持ちをすくい取った“貯蓄型保険”が人気です。「お金も貯められて、万が一の備えもできるならいいね」ということでしょう。でも、貯蓄型の保険商品は、フィナンシャルプランナー的には赤信号。注意したい実例を交えてお伝えします。

誰もが知る有名外資系企業にお勤めの福井涼子さん(仮名/29歳)の年収は800万円。仕事に忙殺されていますが、本人もキャリア志向かつ好きな仕事のために苦でもなく、土日もセミナーや勉強会に顔を出したり、スキルアップのために本を買い込んだりと、充実したシングルライフを送っています。

そんな生活スタイルなので、「お金は貯まるいっぽう」と話します。仕事が趣味という彼女だけに、お金を使う時間もほとんどないのです。プライベートで使ったとしても本やセミナー参加費程度のもので、日々の食事代もビュッフェスタイルのおしゃれな社食が格安の価格で食べられるとあって、浪費するタイミングはほとんどありません。こうした生活を数年続けた結果、福井さんの貯金はいつの間にか1000万円になっていました。

■貯蓄型保険に月10万円を払うことに

とはいえ、彼女や周りの同僚たちも、「さすがに普通預金に塩漬けしておくのはもったいないよね」という意識があったようで、同僚の知り合いである外資系保険会社の外交員が、会社の休憩時間に営業にくることになりました。そこで福井さんは貯蓄型の保険商品を知り、貯金と保障が一挙にまかなえる楽さと安心感から、月10万円もの契約を決めたのでした。また、同僚たちも同じような考えをした方が多かったようで、続々と契約。保険外交員も、業界では有名な一流営業マンだったようです。

「保険」というと、何かあったときの備えとして安心を感じる方が多いように思います。一方、同じ備えでも「資産運用」の場合、元本割れのリスクがついてまわることもあり、その不安を払拭してくれるような「保障」が一緒になった貯蓄型の保険商品は、今とても人気があります。ただ、貯蓄型保険商品である「外貨建て終身保険」と「変額終身保険」は、フィナンシャルプランナー業界では「2大NG保険」と言われていることをご存知でしょうか……。

■「外貨建て」も「変額」も手数料が非常に高い

まず、外貨建て終身保険について。その名の通り米ドルやオーストラリアドル建てで毎月の保険料を運用するものですが、日本の金利より高い場合が多く、予定利率は3%ほど。これに死亡保障などがついていることで安心を感じる方が多く、福井さんが加入した商品もまさにこのパターンのものでした。もうひとつの「変額終身保険」は、投資信託と保障がセットになった保険商品で、運用実績によって保険金や解約返戻金額が変わります。

木製ブロックに書かれた円とドルのマーク
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn

では、なぜFPが「外貨建て終身保険」と「変額終身保険」に警鐘を鳴らすのかと言えば、どちらも保険商品であるために、手数料や関係費用が非常に高いのです。手数料の算出は非常に複雑かつ、明確に開示されていないので、運用中に一体どれだけの諸費用がかかっているのか、契約者には見えにくい現状があります。パッとわかるのは保険料の支払い期間が短い保険の解約時に「解約控除金」としてバコッと取られる時なので、諸費用の実態がわからないまま、毎月、積み立てることになります。リスクへの備えとして保険に対して警戒心を持っていない方が多いかと思いますが、その思考こそが落とし穴になっているのです。

■「つみたてNISA」×「掛け捨て保険」のほうがいい

まず、基本として貯蓄も投資もしたい場合、「保障」と「運用」を分けて考えることが大切です。特に、福井さんのように独身で20代という若い方の場合、死亡保障が本当に必要かどうかをまず考えたいところ。もし保障が必要だとしても、掛け捨てで十分な場合がほとんどです。また、保険商品の場合、受け取り時に税金がかかることもデメリットとして挙げられます。

「運用」でいえば、つみたてNISAやiDeCoは、税制優遇の恩恵を受けることができる分、圧倒的に効率がいいと考えられます。つみたてNISA、iDeCoのどちらも運用中の利益は非課税ですし、iDeCoの場合、掛金が全額、所得控除できます。特に福井さんのように所得の高い方にとって節税効果が高い商品を選ぶのは大切なポイントです。

このように考えると、「保障」と「運用」を別々にする「つみたてNISA(またはiDeCo)」×「掛け捨て保険」がもっとも効率よく保障と運用が行えるのではないかと思います。

■「資産は分散」は基本中の基本

一方、つみたてNISAやiDeCoにもデメリットはあります。iDeCoは60歳まで引き出せないですし、つみたてNISAは大きくお金を育てられる可能性がある分、大暴落する可能性ももちろん、あります。外貨建て保険や変額終身保険の場合も元本割れのリスクはあるのですが、保障もついてくるという安心感が安定した商品と思ってしまうところなのかもしれません。ただ、デメリットがない万能な商品はないので、貯める目的などをよく考えて、一点集中は避けることが大切です。「資産は分散」も、基本ですね。

また、保険の代理店で相談する場合、一社専属の保険外交員より偏りはないのですが、時期によっては「特定商品の契約成立で手数料10%アップ」といった代理店向けのキャンペーンが行われていることがあり、その場合には、代理店側も自分たちの利益確保のために手数料が高い商品を猛プッシュしてくる可能性もあるので、気をつけたいところです。

■仕事に追われている人は、お金に無頓着になりやすい

そして今回感じたのは、学歴もキャリアも年収も貯金も申し分ない方でも、お金に関して無頓着な方が少なくない、ということ。生活に余裕があり、仕事に追われている福井さんのような方は面倒くささのほうが上回ってしまうのか、効率の悪い商品に一点集中でお金をつぎ込んでしまう傾向があります。以前この連載で紹介した「セット商品」の事例に登場した方も同じ傾向がありましたね。逆に、年収400~500万円代の方の方がお金のリテラシーが高く、一生懸命勉強されていて、いかに上手にお金を育てるかを研究されていることがまま、見受けられます。

タブレット端末を使用している仕事中の女性
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

福井さんには早速、つみたてNISAとiDeCoの紹介をし、保険についても見直しをおすすめしました。彼女も知らなかっただけで、一度仕組みがわかれば、そこは頭のいい方なので早速見直しをし、節税も意識するようなりました。

人によっては、貯蓄型の保険を利用することが最適となる場合もあるかもしれません。とはいえ、「楽」な方に流されるのではなく、一度立ち止まって自分に必要な保障やお金を貯める目的、資産バランスなどを考えた上で、自分にとって最適な運用方法を探っていきたいですね。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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