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「結婚したいのにできない」が4割以上…なぜ東日本住みの男性は「正社員でも結婚できない」のか

プレジデントオンライン / 2023年8月25日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

■未婚率が高いのは非正規男性と正規女性

2020年国勢調査における生涯未婚率(50歳時未婚率)は、配偶関係不詳補完値ベースで、男性28.3%、女性17.8%で、1920年からの国勢調査史上、最高記録でした。当然これは地域によっても差があります。

都道府県別にみれば、男性のトップは東京都の32.1%ですが、最下位は滋賀県で23.0%。その差は約9ポイントもあります。同様に、女性のトップも東京都で23.8%ですが、最下位は福井県の12.1%でこちらは倍近い差があります。

都道府県別だけではなく、雇用状態によっても差があります。

2022年の就業構造基本調査より、正規雇用と非正規雇用とで男女別の生涯未婚率を計算してみると、男性の正規雇用が20.9%であるのに対して、女性の正規雇用は26.1%と、正規雇用に限れば男性より女性の生涯未婚率のほうが高いわけです。それも、生涯未婚率対象年齢の45~54歳だけではなく、30歳以上はすべて女性が上回ります。つまり、正規雇用だけでみれば、男性より女性の未婚率が高いことになります。

非正規雇用では、女性が11.6%と低いのに対して、男性は61.4%と非常に高くなっています。図表1で一目瞭然ですが、未婚率は、高い順に「非正規男性>正規女性>正規男性>非正規女性」という順番になります。

【図表1】男女年齢別雇用形態別未婚率と未婚人口

■正規雇用であっても結婚できない問題

これだけを切り取ると、昨今の男性の未婚化は非正規雇用によるものだと勘違いしがちですが、決してそうではありません。生涯未婚率対象年齢の45~54歳を抽出して、正規・非正規別の未婚人口を見ると、むしろ男女とも圧倒的に多いのは男女とも正規雇用者のほうであり、未婚化はむしろ「正規雇用であっても結婚できない問題」でもあるのです。

以降、正規雇用の男女に絞って進めていきます。

まず、正規男女の年収別の生涯未婚率をグラフ化すると、男性は高年収ほど未婚率が低くなり、反対に女性は高年収ほど未婚率が高いという「Xの字」型になります。丁度、年収400万円を境に男女が逆転します。女性の場合、年収が高くなればなるほど未婚率があがるとまでは言えませんが、明らかに年収400万円以上では男女の差が開いています。

しかし、だからといって、これだけで「稼げない男と稼ぐ女は結婚できない」と単純化して結論づけることはできません。これも率だけで判断せずに、同時に人口実数で見ると、また違った様相が浮かび上がります。

■結婚できない「年収300万円台男女」の正体

生涯未婚人口のボリュームゾーンは、男女とも300万円台です。つまり、もっとも生涯未婚として残っているのは、そのあたりの年収帯ということになります。繰り返しますが、これは正規雇用だけの統計です。正規雇用であっても生涯未婚の年収ボリューム層はそこにあるのです。低年収の男性と高年収の女性の未婚率が高いといっても実数からいえば微々たるものです。

【図表2】正規雇用男女年収別生涯未婚率と未婚人口

年収300万円台以下の未婚男女の層は、かつては所得中間層として20~30代のうちに十分結婚していた(できていた)わけですが、それが未婚のまま残って中年に至っていることが現在の未婚化の正体です。

生涯未婚対象年齢は45~54歳ですので、彼らが30歳の時とは1990年代末から2000年代前半の時期に当たります。山一證券などが破綻してバブル崩壊の本格化した時期から就職氷河期の時代です。その当時、20~30代だった若者は、その煽りを受けて、希望の会社に就職が叶わなかったり、たとえ正規雇用として職にありつけたとしても、満足な待遇ではなかったりしたのかもしれません。

■結婚している男女は西日本に集中している

それが、一時期的なものであればまだマシだったでしょう。しかし、結果的には、それが「失われた30年」という長期にわたりました。昭和の経済成長期のように、「先輩社員や上司を見れば40歳になればこれだけ稼げる」という年功序列モデルも瓦解(がかい)し、いつまでたっても結婚や子育てどころか自分ひとり生活するのに精一杯だという人も多かったでしょう。それは、つまり、将来の希望や安心が失われた時代でもあるわけです。

また、「正規雇用であっても結婚できない」という状況は決して全国一律ではなく、エリアによって濃淡があります。

都道府県別に正規雇用の生涯未婚率を全国平均比でマップ化したのが図表3になります。青色は平均より低く、赤色が平均より高い(未婚率が高い)ということになります。

【図表3】都道府県別正規雇用男女生涯未婚率平均比マップ

興味深いことに男女で大きな違いがあります。正規雇用であれば、男女とも未婚率が低いのは西日本に集中しています。これは婚姻率や出生率とも相関するもので、西日本は男女とも正規雇用であれば結婚していることになります。

■男余りなのに、なぜ正規女性の未婚率は高いのか

一方で、女性だけ正規雇用の未婚率が低く、男性は正規雇用であっても未婚率が高いのが北海道、東北から北関東にかけての東日本全体です。秋田などは婚姻率が全国最下位をずっとキープしていますので、これらはまさに正規雇用であっても男性が結婚できないエリアということができます。

非正規を正規に変えれば婚姻率はあがるはずというのは東日本の男性には通用しない理屈であって、ここには正規雇用であっても低年収という問題や、若い女性が就職とともに地元から流出してしまい「相手がいない」という男余り現象とも連動するものです。

結婚したくても、そもそもの未婚男女の絶対人数が不一致ならばマッチングするはずがありません。ちなみに、未婚男女で比較して男余りが激しいのも東日本であり、トップ3は茨城、栃木の北関東と東北の福島です。

反対に、男性は未婚率が低いのに、女性だけ正規雇用の未婚率が高いのは、愛知、兵庫、大分の3県のみとなります。こうして見ると、正規雇用の女性が男性より結婚しにくいということはなく、むしろ全国的に見れば男性のほうが未婚率が高いように思えるのですが、冒頭に書いたように、正規雇用では女性のほうが生涯未婚率が高いのはなぜでしょう?

シャッター通り
写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yue_

■結婚できない東日本の男性、大都市に住む女性

それは、一部のエリアが全体を押し上げているからです。男女ともに正規雇用でも未婚が多いのは、北海道、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、福岡の7都道府県。これらはすべて大都市です。

ちなみに、東京の女性の正規雇用の生涯未婚率は、33.5%にも達します。東京の正規男性が24.4%ですから、それを10ポイント近くも上回ります。大阪や神奈川、京都も30%超えです。女性の全体の正規未婚率が高いのは人口の多い大都市の女性の未婚率の高さによって形成されています。

同じ正規雇用でも、「東日本を中心とした男性が結婚できないエリア」と「大都市を中心とした女性が結婚できないエリア」とに明確に分かれます。もちろん、その中には「結婚したいと思わない」という選択的非婚の人もいるでしょう。一方で「結婚したいのにできない」という不本意未婚が男女とも4割以上いることも事実です。

そして、その不本意未婚のボリューム層は、正規雇用であるにもかかわらず、満足に手取りが増えない層の経済的要因であることもまた否定できません。

こういう話の際によく平均年収の数値で語る人がいますが、平均に意味はありません。実態を把握するには中央値を見るべきです。国民生活基礎調査に基づき、2022年の20代の可処分所得の中央値を計算すると約235万円しかありません。手取りが月あたり20万円もない20代が全体の半分を占めるわけです。当然、2000年と比べても減っています。

■日本は「結婚氷河期」を迎えている

なぜなら、給料があがらないことに加えて、少なくともこの20年は、税金や社会保険料が毎年のようにジワジワと値上げされているからです。額面給料から天引きされる金額は22年間で倍以上も増えています。

これは20代に限らず、現役世代の全年代同様です。まさに「働けど働けど生活は楽にならない。ささやかな給料アップがあっても、手取りはむしろ減っている」という状態なのです。

未婚化は非正規雇用の増加だけの問題ではありません。むしろ絶対数が多いのは正規雇用の未婚者であり、かつては皆婚できた層の「不本意未婚化」です。

確かに、就職氷河期は終わりました。人手不足でむしろ求人環境はよくなっています。しかし、今起きているのは、たとえ正規雇用で就職できても、手取りが増えずに結婚どころではないという「結婚氷河期」を迎えているといえるでしょう。

そして、岸田政権は、国民負担のさらなる増額をしようとしています。いくら子育て支援を充実させるからといっても、子育て以前に結婚や恋愛すらする余裕のない若者の負担をこれ以上増やすことは、結果婚姻数のさらなる減少と、実質的には「大少子化促進」になることでしょう。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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