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「重いタスクと軽いタスク、どちらから着手するべきか」デキる人とそうでない人を分ける"仕事の順番"

プレジデントオンライン / 2023年9月12日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Olga PS

仕事はどういう順番で取り組むべきか。戦略コンサルタントの田中耕比古さんは「やるべきことが多いとき、まずは着手する前に今のタスクリストを減らすことから取り掛かるといい。そのうえで重要度・緊急度ともに低いが『やる必要がある』となった場合でも、今度は『別の人にやってもらえないか』を考えるといい」という――。

※本稿は、田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■大事な仕事のために、脳内メモリーを空ける

目の前に、深く考えたり、しっかり集中したりしないとやり切ることが難しそうな「重いタスク」と、サクッと片づけられそうな「軽いタスク」があったときに、あなたは、どちらから手をつけますか。

私の考える正解は「軽いタスクを、さっさと終わらせる」です。

人間の脳内メモリーは有限ですから、一度に多くのことを考えたり、それらを同時に処理したりするのは困難です。何かひとつの物事にあたる際には、どうしても、そのことだけに処理能力を集中させることになります。

重いタスクは、長い時間がかかりますし、高い集中力も求められます。長時間集中して仕事をするときには、あらかじめ、気が散る要素を減らしておくことが望ましいです。

軽いタスク、たとえば、メールを返信する、会食のお店を予約する、打ち合わせの時間を調整する、会議室を押さえる、年末調整の書類を提出する、オフィスのコーヒー豆を注文する……といった「その気になれば一瞬で終わること」は、日々の仕事のなかでたくさんあります。

そういう軽いタスクをやらないままにしておくと、重いタスクに集中できません。

たとえば、大事なお得意様向けの営業資料を作る、来年度の売上目標をエリア・支店に割り当てる、四半期ごとの生産計画の振り返りと翌四半期の計画変更をする、コストと品質のバランスを確認して仕入先を見直す……

などの「じっくり考えなければいけないこと」をやっているときに、「あ、年末調整の書類を出さなきゃ」「明日のお店を予約していない。どこにしようか……」「そういえば、コーヒー豆がなくなっちゃうなぁ」

なんてことが脳裏に浮かんでしまうと大変です。集中力も実行力も鈍ってしまい、仕事のパフォーマンスが低くなってしまいます。

■「シングルタスクでサクサク終わらせる」のが一番速い

大事なのは、できる限りシングルタスクでサクサク終わらせることです。

軽いタスクがあれこれ残っている状態で仕事をしていると、実際にはひとつの作業しかしていなくても、脳内で軽いタスクが気にかかりマルチタスク状態になってしまいます。これでは、重いタスクに集中できません。

せっかくやる気を出して取り組んでいる重要な仕事から、意識が引き離されてしまいます。一度途切れた集中力は、再度高めるのに時間がかかります。これを繰り返していては、仕事の効率は上がりません。

軽いタスクは、数こそ多いのですが、一つひとつはそんなに深く考える必要のない単純作業です。3分とか、5分とか、そういう短い時間で終わらせることができるものばかりです。

そこで、朝一とか、昼一とかのタイミングで、一息にまとめて終わらせてしまいましょう。そして、残りの時間は、重い仕事だけに集中していくのです。

■軽いタスクは溜めずに「その場で終わらせる」

そうしたところで、突然電話がかかってきたり、メールが飛んで来たり、上司や先輩に声をかけられたりして、突然、軽いタスクが降ってくることもあります。

そういう軽いタスクが降ってきた場合に、お勧めなのは「その場で終わらせる」ことです。「今、これに集中しているからあとでやろう」と考えて先送りしていると、どんどんと軽いタスクが溜まってしまいます。

できる限り、その場、その瞬間に軽いタスクを終わらせるように心掛けましょう。

そもそも、電話やメール、あるいは話しかけられたというタイミングで、すでに集中力は途切れています。

どうせ集中できていないのですから、その場で、さっとメールを返す。さっと打ち合わせの時間調整をする。さっとコピーを取って上司に渡す。そんなふうに終わらせてしまいましょう。

アジアの若い女性のためのコーヒーブレイク
写真=iStock.com/somethingway
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/somethingway

そして、コーヒーを飲んだり、軽くストレッチをしたりして気持ちを一新したうえで、また元の重いタスクに戻り、深く集中して仕事を進めていくことをお勧めします。

■休む間もなく木を切るより、斧を研ぐ時間の確保を

「やるべきことが多すぎて、にっちもさっちもいかない」
「そんな状況なのに、また上司が『これもお願いできるかな』と言ってきた。もう勘弁してほしい……」

こういうとき、あなたは、どうやって対処しているでしょうか。

目の前に積まれた仕事を、ただひたすら手当たり次第に片づけようとしてはいませんか。ときにはそういうやり方しかできない状況もありますが、もし、常にそんな感じなのだとしたら、仕事のやり方を変える必要があると言えます。

とても忙しい樵(きこり)の寓話(ぐうわ)をご存じでしょうか。

毎日毎日、休む間もなく木を切るのに忙しくて、斧を研ぐ暇がない。切れ味の鈍った斧で木を切っているので、作業スピードも上がらない。だから、ますます木を切る時間が長くなる。そんなお話です。

仕事で大変なときも同じです。木を切る手を止めるのは、怖いかもしれませんが、少しだけ立ち止まって考えて、斧を研ぐ時間を取りましょう。

ポイントは、「重要度」と「緊急度」の2つの軸で仕事を捉えて整理することです。

次のような手順で進めましょう。

1.すべての仕事をリストに書き出す
2.重要度と緊急度で整理する
3.やらないこと、他人にお願いすることを決める
4.急ぎの仕事(緊急度:高)を片づける
5.納期に余裕のある重要な仕事に手をつける

■「4象限のマトリックス」で優先順位を確認する

1.すべての仕事をリストに書き出す

最初に、「今やりかけている仕事」「手をつけられていないが本当はやったほうがいい仕事」をリストアップします。細かいものも含めて、すべて書き出しましょう。

同期との食事会のセッティング、年末調整の書類提出といった細々とした「軽いタスク」も、すべて書き出してください。

この時点で、何かしらの判断や取捨選択をする必要はありません。むしろ、しないほうがよいです。まずは、リストを作ることに注力しましょう。

2.重要度と緊急度で整理する

もし、これが10行くらいであれば、安心してください。悩むほどのことはありません。息を止めて走り切れるボリュームです。気合を入れてやれば終わります。

しかし、これが30行くらいになったらどうでしょう。100行近くある人もいるかもしれません。そうなったときに、やるべきことは「優先順位づけ」です。

「多すぎる仕事」をこなす順番出典=『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』

優先順位づけには、「4象限のマトリックス」を使います。シンプルですが、効果的なツールです。先ほどのタスクリストの一行一行に、「どれくらい重要か」と「どれくらい緊急か」という評価をつけて、各象限に配置してください。

緊急度については、具体的な納期・締め切りを書いてしまうのもよいでしょう。納期が近いほど、緊急性が高いわけです。

こうして、あなたの抱えている仕事が、重要度・緊急度で見たときに、どういう割合になっているのかを俯瞰(ふかん)してみてください。二次元平面上にタスクを並べることで、それぞれの仕事の位置づけを、直感的に把握することができます。

■考えるべきは「このタスクをやる必要があるか」

3.やらないこと、他人にお願いすることを決める

整理した結果は、大きく次の4つに分類されます。

「ⅰ 重要度・緊急度ともに高い」
「ⅱ 重要度は高いが、緊急度は低い」
「ⅲ 重要度は低いが、緊急度は高い」
「ⅳ 重要度・緊急度ともに低い」
「ⅰ」は、重要かつ緊急なので、最優先で今すぐ片づけたい仕事です。
「ⅱ」は、重要ですが急いではいないので、少し時間的な余裕があります。
「ⅲ」は、重要ではないので本来ならば後回しでよいのですが、納期が迫っているので早々に終えてしまう必要があります。
「ⅳ」は重要でもないし、急ぎでもない仕事です。

このように仕事を分類した上で、最初にやるべきことは、「ⅰ重要度・緊急度ともに高い」を実行する……ではありません。

優先順位の高いものがわかったのだから、それをやろうと考えてしまいがちですが、それは良策とは言えません。

最初にやるべきは、「やらずに済ませるわけにはいかないか」を考えることです。

もちろん仕事なのですから、すべてのタスクは「やったほうがいい」に決まっています。

しかし、今のあなたは、仕事があふれている状況、いわば緊急事態なのですから「盲目的に全部やる」ではなく、「やらずに済ませられるものは、やらない」という選択肢も考えるべきです。

つまり、

「タスクリストを減らす」

わけです。

まず考えるべきは、「本当に、このタスクをやる必要があるのか?」です。

■時には「別の人の力を借りる」ことも有用である

特に「ⅳ重要度・緊急度ともに低い」に分類されるタスクは、必要性を疑いたくなります。とはいえ、多くの場合は「やる必要がある」という結論になるでしょう。

しかし、「よくよく考えると、やらなくてもよさそうなこと」も意外とあるものです。それらについては、「本当にやる必要があることなのか/やらないことで起こる問題は何か」を、上長や先輩など、適切な人に確認してみましょう。

文書の誤りを指摘するアジアの実業家
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

「やる必要がある」となった場合であっても、今度は「誰か別の人にやってもらえないか?」と考えます。もちろん、ほかの人も忙しく働いているでしょうから、なんでもかんでも誰かに投げるわけにはいきません。

とはいえ、そういう仕事が得意な人や、同じような仕事を担当していてまとめて作業してしまうことが可能そうな人などがいるのならば、そこにお願いしてしまうことで、あなたのやるべきタスク量を減らせます。

当然、「やらないわけにはいかない」「誰にもお願いできない」というケースも多いでしょうが、タスクリストを減らせないか、と考えることは有用です。

■独断で決めずにまずは相談をすること

ただし、このときに絶対に怠ってはいけないことがあります。

それは「上司や先輩に、確認すること」です。自分の独断で勝手にやらないと決めたり、部下や同僚に丸投げしたりしてはいけません。

「こういう事情で、こういう優先順位をつけていくと、これをやる余裕がありません」
「こういう理由で、このタスクは必要性が低いと思います」

などと、しっかり理由を伝えて、「やらないこと」または「誰かにお願いすること」についての承認を得るようにしましょう。

場合によっては、「スキルアップのために、あなたにやってほしいと思っているから、ほかの人に頼むのはダメ」などの理由を教えてくれるかもしれません。

その上で、「だから、ほかの○○の仕事は別の人に渡して、こちらをやってください」とか「納期を3日延ばすから、必ず自分でやってください」などの方針を上司が出してくれれば、目の前の仕事を減らすことにつながります。必ず、相談しましょう。

■重要度・緊急度高い仕事は頑張りどころ

4.急ぎの仕事(緊急度:高)を片づける

さて、タスクリストが少し減り、気持ちに余裕ができたところで、緊急度の高い仕事(ⅰとⅲ)に着手します。ただし、ここでも、可能な限り「重要度が高いもの」つまり、「ⅰ」から終わらせましょう。

彼女のデスクトップコンピュータに座っている若い女性の写真, 彼女のトラフ深夜シフトを助けるためにいくつかのホットコーヒーを持っています
写真=iStock.com/AleksandarNakic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AleksandarNakic

もし可能ならば、重要度が低いにもかかわらず緊急度だけが高い「ⅲ」は、先ほどの手順3のタイミングで「いっそやらずに済ませられないか」「誰かにお願いできないか」と考えておくとよいでしょう。

ただ、「ⅲ」は「ⅳ」とは違い、納期が迫っています。そのため、突然やめることはできないとか、急すぎてお願いする相手を見つけられないということも十分にあり得ます。

そのため、あきらめて自分でやってしまうことになりがちです(そうならないために、まだ納期に余裕がある「ⅳ」のうちに、リストから消すことが大切なのです)。

ここは頑張りどころです。全力で「ⅰ」「ⅲ」を終わらせてしまいましょう。もたもたしていると、「ⅱ重要度は高いが、緊急度は低い」の納期が迫ってきて、「ⅰ重要度・緊急度ともに高い」に進化してしまいます。

そうすると、また、時間に追われることになり、一向に仕事が楽になりません。

■仕事をコントロールできれば急な依頼にも対応できる

5.納期に余裕のある重要な仕事に手をつける

さて、無事に緊急度の高い仕事(ⅰ、ⅲ)を終えたら、重要度が高い「ⅱ」に手をつけます。もちろん、取捨選択を行った「ⅳ」のうち、手元に残っているものもさっさと終わらせたほうがよいでしょう。

田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)
田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)

「ⅱ」と「ⅳ」のなかでも「重要なもの(つまり「ⅱ」)をどんどん終わらせる」ということに注力していくほうがよいです。

この状態になれば、仕事はかなりコントロールできています。新しい仕事が飛び込んできたら、まずは重要度で整理し、重要度の低いものは、「やらない・ほかの人にお願いする」を検討します。重要度が高ければ、納期を確認しながら、先手先手で手をつけます。

大切なのは「緊急度が低いうちに仕事を片づける」プランニングにすることです。

当然ながら、いきなり緊急度が高い仕事を受けることもあるでしょう。しかし、そういう場合にも、締め切り間近の仕事が手元になければ、急な依頼にも落ち着いて対応できます。

「緊急の仕事に追われる日々」から脱却し、「重要度で仕事を振り分ける落ち着いた生活」に切り替えるために、仕事のやり方を見直しましょう。

「緊急度が低いうちに仕事を片づける」のが大事
出典=『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』

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田中 耕比古(たなか・たがひこ)
ギックス取締役、共同創業者
1977年生まれ。2000年、関西学院大学総合政策学部卒業。商社系SI企業に入社。2004年、アクセンチュア株式会社戦略グループ入社。幅広い領域での戦略コンサルティングプロジェクトに参画。2011年、日本IBM株式会社入社。ビッグデータのビジネス活用を推進。2012年、株式会社ギックス設立。取締役に就任。2022年3月、東証マザーズ(現グロース)に新規上場。著書に『一番伝わる説明の順番』、『仕事の「質」と「スピード」が上がる仕事の順番』など。

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(ギックス取締役、共同創業者 田中 耕比古)

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