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頭に来てもアホとは戦うな…イヤな上司を一発で撃退する「戦わずに戦う」という戦略の極意

プレジデントオンライン / 2023年9月27日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

イヤな上司との会話を乗り切るにはどうすればいいか。エンジェル投資家の田村耕太郎さんは「彼らはこちらが苦しむ姿を見るほど喜ぶため、『まったく効いていない』という姿勢を示すことが重要だ。そのためには『余計なことを言わない技術』を身に付けてほしい」という――。

※本稿は、田村耕太郎『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■アホと戦うことは何も生み出さない

既存の体制の中で賢く立ち振る舞うか? あるいは体制をよりよく変えていくべく立ち上がるか? あえて二項対立の設定とするならば、私はやや前者の立場に立って前作のアホ本を書き、それが思わず広く受け入れられた。なぜなら、アホと戦うことは何も生み出さず、ただ精神を消耗するだけだからだ。

ただ一方で、特に正義感あふれる若い方々から「そんな風に皆がアホから逃げていては社会にアホがはびこりよくならない」という批判の声も届く。まさにその通り。既存の体制の中で、賢く振る舞っていると、その行為自体が既存の体制を強化してしまう。

賢く振る舞いながらもいつか力をつけて体制を改革しようと思っても、自ら強化してしまったその体制が自分の手足をもいでしまう。賢く振る舞う過程で作った貸し借りで、まともな恩義・仁義の心を持っていれば持っているほど何もできなくなる。

本音では皆がアホに対してアベンジャーズのように立ち上がって戦ってほしい。声を上げることの大切さは今の「世界の分断」や「地球温暖化」の問題を見る限りとてもよくわかる。アホと戦うのは若者の特権でもある。エネルギーも時間も豊富。そこで戦いに敗れ傷ついても、回復は早いし、致命的なダメージにならない点も若者の利点である。戦うことの意義や、戦いが思い通りにならないことも早いうちに学んでほしい。

■「戦わずに戦う」という戦略

勝つためにはどういう戦略・戦術が必要かも知ってほしい。なぜなら、守るものができ、人生の目標がはっきりし、立場もできあがってきてから、アホと戦うことは容易ではないからだ。

まず、失うものが大きすぎる。そして社会に出てから立場や守るものを背負って出会うアホに勝つ難易度は半端ではない。アホは、ポジション、資金力、権力を使って邪魔してくる。昔からアホが駆逐されないことには根拠があるのだ。そこからアホと戦うことがどんなに割に合わないかを思い知らされるだろう。

ただちに戦ってもいいと私が思うのは、あなたがなにもかもを持ち合わせている場合だ。それこそスーパーヒーローのように。生まれながらに資金力や権力に恵まれ発信力もある人も世界にはいるだろう。そういう人は戦ってもいいというより、戦う義務があると思う。しかし、多くの人がそうではない。ならば自分の人生の目標を達成することを最優先にした方がいい。

敵をつくらず味方を増やし、アホまでも巻き込み、その力を使って、人生の目標を達成してほしい。したたかに清濁併せ呑み、体制下で爪を研ぎ、時代を味方につけて、時を見て、味方をつくって立ち上がれたら立ち上がるという。じつはアホ本もそういう思いで書いた。英語でいう「Don't fight every battle」である。戦わずに戦うという道を戦略的に選んでいこう。

■「やるときはやる」という姿勢を示すべき

スイスが永世中立国であることは広く知られている。そんなスイスは「日本国憲法第9条」がある日本のように平和を唱えているだけの国家なのであろうか? 答えは否だ。

スイスは国民皆兵の国だ。成人男性は軍事教練を受ける義務があり、20世紀初頭までは全戸にマシンガンを含めて武器が配備され、ほぼ全戸に核シェルターが設置されている。「平和を貫くために武装している国家」なのだ。しかし、隣国を挑発したり、追い詰めたり、そんな姿勢は見せない。いざとなれば戦う姿勢をチラ見せしているのだ。

挑発したり、追い詰めたりすることは厳禁だが、スイスにならってわれわれも「やるときはやるぜ」という姿勢をチラ見せすることはとても有効である。アホと戦わないことを目指すあまりに、過剰にいい人に見せたり、アホから逃げる姿勢が弱みに見えたりすることは避けないといけない。

アホは本来暇でガッツがない人物なので、「いい人」や「弱い人」をいじめたくなったりいじりたくなったりする傾向があるのだ。アホが絡んできて、相手を挑発しない程度に毅然(きぜん)たる姿勢を見せながら「スルー」を決め込むのだ。

握りこぶしで主張するビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

アホを利用するために仲間に引き入れる時も、あくまで凛(りん)とした立ち居振る舞いを保つことだ。それでも、アホの有力ないじりターゲットである「いい人」や「弱い人」に見られてしまったら、これはどこかでファイティングポーズをチラ見せしないといけない。

■こちらの苦悩が伝わるほどアホは喜ぶ

目的は挑発や戦って勝つことではない。勝ってもさらに陰湿に憎まれたりしたら、何のために戦ったのか意味がわからなくなる。目的は「こいつを怒らせたらやっかいだ」と思わせることだ。

「私はあなたと戦ったりするような無駄は絶対しませんが、あんまりいやらしいとやるときはやりますよ」と心の中で常に唱えておくのだ。そうすれば、それを相手が感じてくれるようになる。アホと戦ってはいけないが、なめられるのもよくない。なめられることが戦いの原因を作ってしまっているともいえる。「アホとは戦わない」気持ちをもちながら「やるときはやるよ」という姿勢も保持しよう。

アホの悦びはいたぶっている相手の苦悩である。相手の「怒り」「くやしさ」「悲しさ」などで垣間見られる苦悩が何よりの“蜜の味”なのだ。では最高の反撃とは何か? アホにはいたぶった相手が「全くこたえていない」様子がいちばんこたえる。これがやせ我慢とか怒りの転換などでもアホは喜ぶ。なぜならそれらは基本的にアホの攻撃が効いていることの裏返しだからだ。

アホが心から悔しがるとしたら、それは全くこたえていない、これから攻撃性を高めても効きそうもない様子である。いたぶっていることさえ理解されていない様子こそが最高の反撃なのだ。

■「余計なことを言わない技術」が身を助ける

そのためには「無の境地」でスルーすることである。こいつは図太くいたぶりがいがないドアホだと思われることだ。鈍いと思われてもいい。悔しさを他で紛らわせるそぶりもよくない。八つ当たりもダメだ。そもそもなんとも思わないように心を整えよう。そのためには、どうすればいいか。目的に集中することだ。

アホを含め、誰に対してもリスペクトを持って、楽しく、親切にし続けるのだ。これを普段から普通に徹底していこう。楽しく、リスペクトを持って、親切に、淡々と堂々としている。こういう人こそ、アホがいたぶりの快感を覚えにくい。その根拠として、モビリティを持っておくことが大事である。いざとなれば、現在の職は辞しても何も困らない。そう思えれば、アホのいびりは気にならなくなる。辞められたら困るとまで思わせたら最高だろう。

アホを自分から遠ざけるためには、つけいる隙を与えないことも大事だ。そのために必要なのが「余計なことを言わない技術」である。

両手で口をおさえる男性
写真=iStock.com/simarik
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simarik

私にとっては世界の超一流の方々とビジネスを共にして身についた技術であり、お付き合いさせていただいた「日本の一流の政治家」も同様の技術をもっていた。別の言い方をすれば、「感じよく“沈黙に耐える”技術」である。

■沈黙に耐えられないときはどうするべきか

世界の超一流の人物たちと潜在的なビジネスパートナーとして会うと、大体の場合、彼らは感じよくニコニコして迎えてくれる。そして私にしゃべらせる。彼らは、こちらに話させるのがうまい。「余計なことを言わない技術」とはこういう一流の人間が身につけているものであると同時に、そういう人間に会いに行く人間が身につけておかないといけない技術なのだ。

沈黙に耐えられず、話さなくてもいいことを、べらべらしゃべることは、相手に与える印象もよくないし、交渉の現場だとしたら自分の立場も悪くなる。肝心なのは、嘘は絶対言わないこと。

しかし、本当のことは何でも言うのでもない。あえて「余計なこと」は話さないのだ。そうすると、沈黙は流れる。そんな時のこちらの様子も彼らはよく見ている。「余計なことを言わない」を心がけると、ニコニコしあいながら見合う時間が過ぎることになる。そこで、ジタバタせず、自然体でいることが相手に伝わるように振る舞うことが大事だ。

■「目的意識」を明確にすれば余計な発言はなくなる

もちろん、私自身も過去には大物との一対一のプレッシャーを感じながら過剰に雄弁になり、言わなくてもいいことをたくさん話してきた。そこでたくさんの失敗もしたが、あることを意識することで、沈黙にも耐えられるようになった。そのあることとは、「目的意識」を明確に持つことだ。

田村耕太郎『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)
田村耕太郎『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)

この会合の目的は何か、どんなことが目的かをしっかりと意識することで、言うべきことが明らかになっていく。また、相手がこちらのことを調査しているように、こちらも徹底的に相手のことを調べ尽くす。そうすることで、質問すべき事柄も明らかになる。そして、心を強くして、沈黙を怖がらないように自分に言い聞かせる。

「何食わぬ顔」で「余計なことは言わない人」ほど恐ろしいものはない。逆に、常にギャンギャン吠えてるのは小物だと心得よう。いざとなったら徹底抗戦できるだけの武器を持ち、アホにいびられても平気な顔をしてつけいる隙を与えない。アホとの消耗戦を避けるために、覚えていてほしい原則だ。

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田村 耕太郎(たむら・こうたろう)
エンジェル投資家、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授
1963年生まれ。鳥取県出身。一橋大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学商学部を卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院(LLM)、イェール大学大学院(MA)各修了。山一証券会社にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年参議院議員に当選し、2010年まで参議院議員。著書に『頭に来てもアホとは戦うな!』、『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(ともに朝日新聞出版)、『地政学が最強の教養である』(SBクリエイティブ)などがある。

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(エンジェル投資家、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授 田村 耕太郎)

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