2024年度中学入試で難度が上がりそうな中堅8校の名前…過熱受験で偏差値45~55の中堅層が"全落ち"防ぐ方法
プレジデントオンライン / 2023年10月8日 11時15分
■2023年度中学入試で起きた「中堅校の難化」は24年度も
都内・神奈川県の中学受験がスタートした2023年2月1日。その午前入試の受験者総数は4万3027人で前年より670人増加した。
首都圏の中学受験生は1月に始まる埼玉県や千葉県などの入試を受けたあと、2月1日午前、同日午後、2日午前、同日午後、3日午前、4日午前……と志望校の入試に挑んでいく。
この2023年度の首都圏中学入試では、模試の数値からは考えられない「波乱」が中堅校中心に見られた。
一例を紹介しよう。
まず、偏差値52の獨協中学校(東京都文京区/男子校)だ。2月1日午後入試はちょっと信じられない結果が見られた。同校より偏差値の高い学校を合格した子が軒並み不合格になったのだ。
例えば、1日午前の芝中学校(東京都港区/男子校/偏60)に合格した子。同午前の本郷中学校(東京都豊島区/男子校/偏60)に合格した子。同午前の桐朋中学校(東京都国立市/男子校/偏56)に合格した子。
偏差値で最大8も高いのに、落ちる……。まさかこれはわたしの塾だけのことではあるまいと、他塾の経営者にヒアリングしてみた。すると、獨協より偏差値が13も高い早稲田大学高等学院中学部(東京都練馬区/男子校/偏65)に合格した子が獨協の午後入試で土が付いたとのことだった。
この現象は獨協だけに起こったのではない。
三輪田学園(東京都千代田区/女子校)の1日午後入試(偏47)も一気に難度が上昇した。1日午前の田園調布学園(東京都世田谷区/女子校/偏52)に合格した子が不合格になった。
また、2日2日午前の青山学院中等部(東京都渋谷区/共学校/偏65)に合格した女の子が、同日午後の開智日本橋学園(東京都中央区/共学校/偏58)で不合格になってしまったのだ。
■中学受験の過熱は中堅層が最も影響を受ける
2015年以降、首都圏の私立中高一貫校を目指す子どもの数は増え続けている。まさに「過熱化」と呼ぶにふさわしい激戦が首都圏の中学入試で繰り広げられているが、この「過熱化」の影響を最も受けるのは、偏差値45~55のいわゆる「中堅層」である。
なぜだろうか。
いわゆる偏差値(※)の区分ごとの受験者の割合は下記の通りだ。
※データを一律に標準偏差10、平均50に変換したときの値。
偏差値~35未満 約6.7%
偏差値35~45未満 約24.2%
偏差値45~55未満 約38.3%
偏差値55~65未満 約24.2%
偏差値65~ 約6.7%
受験者数(母集団)が増加すると、もっとも人数が膨れ上がるのが約4割を占める偏差値45~55の中間層になる。そのため、「中堅校」はその年の人気不人気で難易度が大きく変わる。
中学受験生たちが受ける「秋の模擬試験」は前年のデータを基に各校の合格率を判定する場合が多く、来春の人数動向予測など反映していない、いや、反映できないのだ。さらに、近年の中学入試はネット出願が主流ゆえ、入試当日になってはじめて受験者数が正確に把握できるという状況だ。その証拠に、昨秋の模擬試験の「学校別偏差値」と、今春の入試後に(その結果を踏まえて算出する)「結果偏差値」の値に乖離(かいり)が生じる学校がいくつもあったのである。
こう考えていくと、先に述べた中堅校の難易度の変化は事前予測することが困難であることが分かるだろう。とりわけ午後入試や2月3日以降の2次・3次(同じ学校で実際される2回目、3回目の試験)入試は高倍率になる学校が多く、現在の「偏差値」を基準にして「安全校」と見なすと、思わぬ結果が待ち受けることもあるのだ。
■中学受験するなら必ず「合格」しよう
中学受験生は本番まで膨大な時間をかけて勉強する。それに取り組む意義がもちろんある。ただ、趣味やスポーツに興ずる時間、友人たちと外で遊ぶ時間……犠牲にしているものが数多くあるのも否めない。
だからこそ、わたしは中学受験塾講師として、「中学受験をするなら必ず合格をして、その学校に進学してほしい」と心から願っている。たとえそれが第1志望校でなかったとしても、だ。全落ちをしないような学校選びや受験対策をしなければならない。
一番もったいないのは、「中学受験で思い通りの結果にならなったので、次は高校受験でリベンジをしよう」と考えてしまうことだ。多くは保護者の判断だが、本当にそれでいいのだろうか。子供は中学受験に続き高校受験のため中学でも「塾漬け」になる可能性がある。さらに中高一貫校の猛者たちと大学受験で競うために高校でも塾通いするとなると、子どもを子どもたらしめる時間が「受験勉強」によって奪われてしまう。
では、保護者はどのような方略でわが子の中学受験に挑むといいのだろうか。
簡単に言うと、「親子ともに気に入る『安全校』を複数校見つける」ということだ。この点について、大手塾・早稲田アカデミー教務本部長兼中学受験部長の竹中孝二さんはこう説明をしてくれた。
「まずはお子さんが6年間快適に過ごせる学校はどこなのか。これについては偏差値の高低にあまり関係がありません。多少の偏差値の違いなどその学校の良し悪しを示す基準にはならないと考えます。個人レベルに落とし込むと、どんなレベルの学校に通おうが、その子の個性、そして価値は何も変わりません。偏差値レベルにとらわれずに、親子で気に入る学校を見つけるために行動してほしいと願っています」
この意見にわたしも全面同意である。
■来春人気が急上昇しそうな8つの中堅校
それでは、来春2024年度に人気を博すと予測される中堅校はどこだろう。前出の竹中さんはこう話す。
「これから志望校動向がまだ大きく変わるのではっきりしたことは言えないのですが、注目されるところは、来春開校する開智所沢中等教育学校(埼玉県所沢市/共学校)ですね。その周辺の学校も開智所沢の登場で、その地域の中学受験熱を高めてくれるのではないかと期待しているようです」
開智所沢は「学校法人開智学園」が新たに設立する学校。同法人は、開智(埼玉県さいたま市/共学校/偏・男子62女子64〔先端特待〕)や開智日本橋(東京都中央区/共学校/偏58)などの人気校を抱える一大グループである。
竹中さんは来春の注目校についてこう続ける。
「あとは入試回数を1回から2回に増設する横浜雙葉。神奈川県の他の女子校の勢力地図を大きく変える可能性があります」
これに付け足してわたしより来春の注目校をいくつか挙げたい。
まずは、東京都市大学付属(東京都世田谷区/男子校)だ。今春入試で1日午前入試を設けた影響か、若干敬遠された向きもあったが、この入試変更の受験者数が公表されたことで、再び同校を狙う中堅層が多くなると見られている。
また、法政大学との高大連携と推薦枠増を発表した三輪田学園(東京都千代田区/女子校)も引き続き受験者を増やすことが考えられる。男女の定員を同数に変更することを発表したばかりの法政大学第二(神奈川県川崎市)の受験者動向も目が離せない。
さらに、それまでの翌日発表から1日入試を即日発表に変更した頌栄女子学院(東京都港区/女子校)は近年受験者が減少していたが、これを機に人気が復活する可能性もある。同校は早慶上理進学率(実数)ランキングで全国第1位を誇る名門校である。
その他、芝浦工業大学附属(東京都江東区/共学校)、目黒日本大学(東京都目黒区/共学校)なども現時点の模擬試験の志望者をチェックすると、昨年比でかなり増えている。
話を戻すが、大切なわが子の一度きりの中学受験。「たかが中学受験」と冷めた目で見ることも必要な反面、わが子にとっては人生の大きな岐路になることは間違いない。
この中学受験を後悔の残るものにしないために、わが子にとって「安全校」になり、かつ6年間預けたいと心から思える学校を最後の最後まで探し続けてほしいと思う。
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中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。
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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)
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