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りんご「直径8cm1個で150円」「直径6cm2個で150円」どっちが得か…大人も簡単に引っかかる数字トリックの謎

プレジデントオンライン / 2023年11月14日 11時15分

出所=『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』 - 撮影(物)=市来朋久

直感を信じて正解なこともあるが、直感だけで判断して損することもある。買い物、着回し、収納……身近なテーマを題材にした数字の問題を、サイエンス作家・竹内薫さんに紹介してもらった――。(前編/全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。

■Q1 お父さんは、スーツを3着、ワイシャツを5枚、ネクタイ3本、くつ下5足、くつ2足を持っています。何日着回しできるでしょう?

A 女性誌の記事などでも、着回しのコーディネートについては、よく取り上げていますから、こうした問題は女の人にとっては身近なことかもしれませんね。

この問題では、ワイシャツ5枚、くつ下5足ということなので、とりあえず月曜日から金曜日までの1週間は毎日変化がつけられると思うでしょう。

でも、実はこれだけの点数を持っていれば、1年以上も毎日違った格好ができるのです。

計算式は3×5×3×5×2で、答えは450通り。順列・組み合わせの問題ですから、すべてのアイテムを掛け合わせるのです。思った以上に着回せることに驚いた人も少なくないのではないでしょうか。

ただし、実際には洋服の場合は好みもありますし、お気に入りのものと、あまり袖を通さないものがあったりして、気づいたらいつも似たような格好ばかりしていることもありますよね。ですから、感覚的にこれだけの数でこんなにたくさんのバリエーションが生じるとは思えないのでしょう。

何でも計算してみなければわからないという良い例です。

早速、クローゼットの中をのぞいて手持ちの服を数えてみてください。問題は、洋服の組み合わせ方です。買い物に行くときは、その品物だけを見て買うのではなく、手持ちのものとの組み合わせを考えることが大事と、私も妻によく言われます。そうでないと、せっかくの450通りの組み合わせも全部は活かされなくなってしまい、新たに相性の良い服を買わなくてはならなくなりますよ。(答え 450日)

■Q2 逆さにした3つのカップa、b、cのうち1つには菓子が入っています。エミさんはcのカップに菓子が入っていると予想しました。すると、正解を知っているお父さんは、「aには菓子が入っていないよ」と教えてくれました。エミさんは予想をbに変えたほうがいいか、cのままでいたほうがいいか、当たる確率が高いのはどちら?

A 三つあるカップのうち、当たりは一つだけ。エミさんがcを選んだ後で、答えを知っているお父さんが「aは違う」と教えてしまう。とすれば正解はbかcになり、確率はどちらも2分の1。選び直してもそのままでも当たる確率は変わらない。そう考えた人はいませんか。

【図表2】考え方のヒント
撮影(物)=市来朋久
出所=『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』 - 撮影(物)=市来朋久

これは数学関係者の間では非常に有名なモンティ・ホール問題といわれる問題です。名前の由来は、1970年代にアメリカで人気を誇ったゲームショー番組の司会者名です。講演会などで私はよくこの話をしますが、95%の人は選択を変えません。最初の直感を信じたいからや、2択で確率は50%だから、どちらを選んでも同じ、というのがその理由です。

ところが、変えたほうが当たる確率は2倍になるのです。答えを言うと、当たる確率は変えた場合が3分の2、変えない場合が3分の1。これについてはアメリカの学者間でも論争になり、実験の結果、証明されました。

なぜ変えると当たる確率が上がるのか。エミさんが初めにcのカップを選んだときの確率は3分の1です。そのとき選ばなかったほうが当たる確率は3分の2。これらをグループで考えると、3分の2のグループのカップ(a、b)が一つは空とわかったところで、そのグループの確率は変わらないのです。

それでもいまひとつ釈然としないようであれば、カップを10個に増やして考えてみるといいでしょう。最初に選んだときに当たる確率は10分の1、選ばなかったほうは10分の9。選ばなかった9個のカップのうち、外れのカップを順番に一つずつ開けていきます。カップ一つだけを残して。そうすると、その一つに自分が選ばなかった10分の9が集約されていることが自然とわかるはずです。(答え bに変える)

■Q3 スーパーに行ったところ、直径8cmのりんご1個と、直径6cmのりんご2個がともに150円で売られていました。量の多さで選ぶなら、どちらを買うべき?(りんごは球体と考えてください)

A 直径8cmと6cmの球体を思い浮かべたとき、見た目の大きさはさほど違いませんから、直感で6cmのりんご2個のほうが断然お得だと感じる人は少なくないのではないでしょうか。

でも、計算してみると8cmのりんご1個のほうが量、つまり体積は大きいのです。球体の体積を求める公式は、「3分の4πr3乗」。πは円周率(3.14)。rは半径で、この場合それぞれ4と3です。計算すると直径8cmのりんごは約268cm3。一方、直径6cmのりんごは約113cm3で2個分だと226cm3になります。

もっと簡単に考えるとするなら、「3分の4πr」までは同じなわけですから、「r」、つまり半径の3乗を比較すればいいのです。4の3乗は4×4×4=64。3の3乗は3×3×3=27で、2個分は54です。

りんご
(左)写真=iStock.com/kyoshino(右)写真=iStock.com/Jonas_ 加工=プレジデントオンライン編集部
※写真はイメージです - (左)写真=iStock.com/kyoshino(右)写真=iStock.com/Jonas_ 加工=プレジデントオンライン編集部

そう言われても、まだ感覚的に納得できない人もいるでしょう。これは人間が物を見るときには2次元の情報としてとらえているために起こる問題です。

面積を計算すれば、円の面積は「πr2乗」ですから、直径8cmのりんごは約50cm2。直径6cmのりんご2個は約56.5cm2と、6cmのりんご2個のほうが大きくなります。薄く輪切りにしたりんごを想像すればわかりやすいでしょう。

『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』(プレジデントムック)
『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』(プレジデントムック)

でも、りんごそのものの場合は3次元。奥行きがあるので感覚が変わってくるのです。たとえば物体を奥行きまで計算してきれいに描くには、画家でも訓練しなければなりません。3次元になると人の直感があてにならないのです。

大盛りの料理も同じ。皿の上から見ると2倍ぐらいの量に思えたとしても、実際は2×2×2で8倍もの量が盛られているのです。ですから飲食店で「制限時間以内に全部食べたらタダ。食べきれなかったら支払い」などといううたい文句があったとしても、勝負しないほうが無難です。(答え 8cmのりんご1個)

(以下、後編Q4~6へ続く)

教える人 竹内薫さん
YES International School校長。サイエンス作家。1960年、東京都生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了。NHK Eテレ「サイエンスZERO」ナビゲーターなどメディアでも活躍。2016年にYES International Schoolを開校。

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竹内 薫(たけうち・かおる)
サイエンスライター
1960年、東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学専攻)、東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学理論専攻)。理学博士。大学院を修了後、サイエンスライターとして活動。物理学の解説書や科学評論を中心に100冊あまりの著作物を発刊。物理、数学、脳、宇宙など、幅広いジャンルで発信を続け、執筆だけでなく、テレビやラジオ、講演など精力的に活動している。

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(サイエンスライター 竹内 薫 構成=勝亦理美)

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