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真面目な管理職は絶対に経営者にはなれない…一流コンサルが見た名経営者に共通する「独特の思考パターン」

プレジデントオンライン / 2024年1月26日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

仕事のデキる人はどんな思考パターンをしているか。元ドリームインキュベータ代表で経営コンサルタントの古谷昇さんは「経営者は腹をくくるのと同時並行して、常に抜け道を探しているようなところがある。あらゆる会社が例外なく山のように問題を抱えているから、経営者のズルさなしでは成り立たない。下で真面目に仕えていくタイプはこれができなくて、なかなか経営者になれない理由となっていることが多い」という――。

※本稿は、古谷昇『コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■経営サイドと経営者の明らかに異なる視点の正体

私たち経営コンサルタントには、経営サイドと現場サイドの両方の視点から企業を見ることができる強みがあって、そこからいろんな課題や仮説や戦略づくりのヒントを得ていることが多い。

実際、これまで、ほんとうにたくさんの企業を観察してきた。

それが仕事だからだが、ただ観察してきただけではない。いつも真剣に、しかもあらゆる角度から幅広く眺めてきている。そして痛感したことの1つが、同じ経営サイドといっても経営者は特別な存在である、ということだった。

経営者は、目のつけどころ、ものの見方が、他の経営陣とは明らかに違っている。

よくいわれるような、社長は全社的にものを見るというのともまた別で、経営者独特の視点があるのだ。読者のみなさんも、この視点を身につけることによって、人より早く経営者になれるかもしれないし、難しい課題設定もうまくできるようになるかもしれない。

経営者の役割は何かというと、一般には「決断」であるとされている。

これは最終的には正しい。しかし、経営者の役割は他にもいろいろある。たとえば、起きてしまった矛盾を解決するというのも、決断に負けないくらい重要な役割だ。

■腹を括りながら、常に抜け道を探せるか

これとこれはそもそも両立しないがともに大切だとか、トレードオフが必要だと二者択一を迫られたりしたときなどに、これをどううまくさばくかで経営者の手腕が問われることになる。そんなとき、どうやら経営者というのは、

①腹をくくる(決断する)
②抜け道を探す

このどちらか、もしくは両方を考えるものらしい。

①のほうはわかりやすい。これは要するに、下の者に「どちらかに決めてくれ」といわれて、エイヤッと決めることである。

最終的に経営者のところまで上がってくることは、わからないこと、下では処理できなかったことばかりだ。ロジックで決まることなら何も経営者に決断をゆだねる必要はなく、承認をもらえばそれですむ。

わからないから決めてくれといわれて、経営者もわからないけれど、とにかく右か左か決めないといけない。決めなきゃ会社が動かないので、結果として決断を誤ったときの最悪のシナリオも覚悟したうえで、腹をくくって「右だ」「左だ」と決断を下す。

こちらは、わりとよく経営書に出てくる話だ。

しかし②のほうは、経営者に独特の思考パターンなのだが、なぜかあまり指摘されることがない。

私が見たところ、経営者は腹をくくるのと同時並行して、常に抜け道を探しているようなところがある。

■名経営者とダメ経営者を分ける意外な視点

たとえば本書で紹介している製薬会社の例で、こちらが「中国進出には可能性がありそうですが、そうなったらA薬の開発はできませんから諦めるしかないですね」と説明しても、社長は決してそれを真に受けない。

A薬もどこか他社と共同開発したらコストが半分になって、中国進出と同時にできるんじゃないか、などと考えるのが経営者なのである。

私は、ここで下の者やコンサルタントのいうことを真に受けてしまって、すぐにA薬と中国進出の二者択一に行き着いてしまうのは、実はほんとうの経営者ではないという気がしている。

経営者は転んでもタダでは起きない。なんとか一石二鳥を狙えないかと、いつもあれこれ手立てを考えている。彼には一筋縄ではいかないしたたかさがあって、いってしまえばズルイ考え方ができるのである。

経営の視点にはこういう要素が非常に大事なのだ。

ーブルに座って手を組むビジネスマン
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

■当たり前のことを真面目に詰めていたら成立しない

考えてみれば、経営者にズルさのようなものが必要なのは、当然のことなのだ。

リーダーにだけ許された特権というのがある。たとえばリーダー以外の人は、勝手に前提や建前を変えたり、ルールを変更しようとしたら罰せられてしまうけれど、企業トップだけはこれができるのだ。

ということは、経営者は下の者に向かっては「当たり前のことをきちんとやりなさい」といったりするものの、経営者自身は、当たり前のことを真面目に詰めていたら成り立たない商売だということにもなる。

リーダーの特権として許された手段の選択肢が社内の誰よりも多いわけだから、ときにはこれをフルに行使してでも、経営者でなければできない発想で会社を経営していく。それをいまズルイ経営といったわけだが、実際こういうのは、ある意味でどうも経営者の義務でさえあるのではないか?

下で真面目に仕えていくタイプはこれができなくて、彼がなかなか経営者になれない理由となっていることが多い。

このあたりのことを図表1、2にまとめてみた。図1のほうに「経営者になれる条件」、図2には「管理職になれる条件」を書き込んである。

それぞれの使命または義務が、中央の楕円(だえん)の中にある「業績の向上」と「責任を持って業務を遂行する」である。両者の決定的な違いは、主にここからきているといっていい。

「経営者になれる条件」と「管理職になれる条件」
出典=『コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法』

■仕事に必要なのは「マニュアル」ではなく「ズルさ」

どちらかというと私自身も、当たり前のことを真面目に詰めるというのに陥りやすいところがあるからわかるのだが、ふつうの会社のサラリーマンを長くやっていると、どうしても経営者に必要なズルさみたいなものが身につかないままできてしまうものだ。

彼がそこで鍛えられるのは、もっぱら真面目に詰めていく仕事ぶりのほうである。

逆に、経営者の中でもオーナー社長や長期政権の名物社長には、したたかな雰囲気を強くかもし出す人が多いのだが、もちろんこれは偶然ではない。

あらゆる会社が例外なく山のように問題を抱えている。会社とはそういうものだ。

したがって経営というのは、どんなに大きな会社でも、いくらカネがあってヒトに恵まれていたとしても、経営者のズルさなしでは成り立たない。

古谷昇『コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法』(PHP研究所)
古谷昇『コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法』(PHP研究所)

経営者たちのこの目のつけどころ、したたかさ、ズルさを早いうちから身につけられたら、経営者にもなれるし経営コンサルタントもできる。たぶん何のビジネスをやっても成功できるはずである。

何かの手法に従ってやっていれば答えが出るといった仕事ぶりでは、最後は必ずにっちもさっちもいかなくなるのが明らかだ。

経営者に独特な目のつけどころというのは一朝一夕に身につくものではないにせよ、仕事に必要なのはマニュアルではなくズルさだと心得て、ここはせめて、少しでも彼らの視点を学び取りたいという気持ちが大切である。

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古谷 昇(こたに・のぼる)
経営コンサルタント
1956年、東京都生まれ。1981年、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(計数工学修士)。1987年、スタンフォード大院経営工学修士(MS)。1981年、ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。1991年、同社ヴァイス・プレジデント就任。同社シニア・ヴァイス・プレジデントを経て、2000年、株式会社ドリームインキュベータ(DI)設立、代表取締役に就任。現在、参天製薬(株)、(株)ジンズホールディングス、サンバイオ(株)、(株)メドレーの社外取締役を務める。また、PEファンドのアドバイザーやベンチャー企業へ投資、経営アドバイスなども行っている。

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(経営コンサルタント 古谷 昇)

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