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マイナス金利解除で住宅ローンはどうなるか…7300万マンションを買った夫婦が「変動→固定」に変えた深い事情

プレジデントオンライン / 2024年2月28日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RomanBabakin

日銀がマイナス金利を解除したら住宅ローンはどうなるのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「心理的不安を取り除くことを重視して、変動金利から固定金利に借り換えをした人がいた。金利の変動によるリスク回避の方法は、家計の対応力にかかっている」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

※初出時、住居費の計算が間違っていました。訂正します。(2024年3月8日10時40分更新)

高遠さん(仮名/47歳)のケース

本人 会社員(年収700万円)
妻 会社員(年収600万円)
子供 保育園
住まい マンション(住宅ローン月18万円 ※修繕積立金などを含む

■共働き夫婦にとっては無理のない返済計画だった

固定金利の上昇がじわりじわりと続く中、すでに住宅ローンを組んでいる人、また、今後、家の購入を考えている方の間から、悩みを抱える声がたくさん届いています。

高遠裕太さん(仮名/47歳)は、大手PR会社に勤務する会社員。昨年、久しぶりに顔を見せてくれたのですが、激務と職場の人間関係で追い詰められ、大きなストレスを感じていました。休職や転職も考えたものの、躊躇の一因となっていたのが、住宅ローンです。

高遠さんはお子さんの誕生と同時に5年前、7300万円で都内のマンションを購入。1300万円を頭金で入れ、残りの6000万円を35年で借り入れしました。返済額は、月15万5000円。これに修繕積立金を加えると、住居費は毎月18万円になります。共働きの妻の収入と合わせると世帯年収は1300万円あったので、高遠家にとっては、金額的には無理のない返済計画でした。

とはいえ、住宅ローンの返済や子どものことを考えると、休職や年収が下がるかもしれない転職にも踏み切れずにいました。そんな時ちょうど、「金利引き上げ」のニュースを目にしたことで、高遠さんの不安に拍車がかかっていたのです。

■住宅ローンの固定金利は上昇傾向

日銀は昨年、長期金利の事実上の上限を「1%をめど」に引き上げました。これにより、住宅ローンの固定金利が上昇傾向にあります。ここ数年、1.3%前後で推移していた固定金利サービスの「フラット35」も、2%近い水準まで金利を上げています。

一方、変動金利に影響を及ぼす「マイナス金利政策の解除」がまもなく行われるのでは? というニュースも日々飛び交っており、変動金利が今後どうなるかは、注視が必要な状況です。

このマイナス金利政策によって、現在は9割の人が変動金利を選択しているとも言われています。まさに高遠さんも変動金利での借り入れだったことから、「急激に金利が上がったらローンの返済ができなくなるかも」と、不安を抱えていたのです。

■「5年ルール」と「125%ルール」が存在する

住宅ローンの場合、固定金利が引き上げられた後に、変動金利も上昇していきます。そのため、変動金利が上がった後に固定金利へ借り換えようとしても、すでに固定金利が高くなってしまっていることが考えられます。

また、マイナス金利解除が行われたとしても、すぐに変動金利が上がるわけではない、というのもポイントです。金利が上がったことで突然、毎月の返済額が増えてしまったら、多くの人の暮らしに影響が出てしまいますよね。そのため、5年間は返済額が据え置きされるのです。これを、住宅ローン変動金利の「5年ルール」と言います。

良心的なルールに思えますが、注意が必要です。たしかに、返済「額」そのものに変更はないのですが、実際には、金利の変動は反映されています。月々の返済額の内訳となる元金と利息の配分を調整して、月々の返済額を変えないようにしているのです。

たとえば、元本9万円と利息分1万円で合わせて毎月10万円の返済額だとすると、金利引き上げ後は、元本8万円、利息分2万円といったかたちで、「返済額」の中できっちりと引き上げが行われているのです。

加えて、変動金利にはもうひとつ、「125%ルール」というものも存在します。5年目以降も、急激な返済額の上昇を抑えるため、元々の返済額の125%が上限となる、というものです。月の返済額が10万円であれば、12万5000円が上限となるので、どんなに金利が上がったとしても、これ以上、月の返済額が上がることはありません。ただし、125%を超えた部分は切り捨てられるわけではなく、支払いが先延ばしになります。

積み上げられたコインの上に、パーセンテージマーク。背景にはチャート
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

■返済期間の最後に「未払金」が残ってしまうリスクも

この「5年ルール」と「125%ルール」の怖いところは、金利上昇時には、元金の返済に充てられる割合が減り、利息を支払う割合が増えるので、元金の減りが遅くなったり、金利が急騰した場合には、月々の返済額の全てが利息となり、元金が減らない事態や未払いの利息が発生する可能性があることです。最終返済日に返済しきれない元利金が残った場合、一括返済を迫られることにもなりかねません。変動金利にはこのようなリスクがあることも、抑えておいたほうがいいでしょう。

さて。では高遠さんのようなお悩みを抱える方は今後、どのように対処すればいいのでしょうか。高遠さんは現在、0.5%の変動金利ですが、たとえばマイナス金利解除によって1.5%まで金利が上がった場合、返済額は月々約18万円になります。ここに修繕積立金も加えると、約20万5000円が住居費になる計算です。

■月2万~3万円の価格上昇に耐えられるか

結論から言えば、変動金利を続けるのであれば、この月2万~3万円の価格上昇に耐えられるかどうかが、判断のポイントになるでしょう。高遠さんと同じく、現在5000万~6000万円の借り入れをしている方の場合、金利が1.5%~2%上昇すると、返済額が月々3万~4万円ほど上がるイメージです。この金利上昇のリスクをとれるのであれば、ローンの借り換えはせず、変動のままいくのもひとつの手、ということです。

一方で、リスク回避をしたい方は、現在1.9%ほどの固定金利に切り替えるのも、ありでしょう。過去35年間で見た場合の平均の固定金利は2.7%前後ですから、現在、上昇傾向にあるとはいえ、まだ2%ほどなので、低水準であることはたしかです。業界でも、安全をとるファイナンシャルプランナーたちは今、固定金利をおすすめしていますね。

家の模型と積み上げられたコイン、住宅ローンのイメージ
写真=iStock.com/marchmeena29
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

■結局は「家計の対応力」にかかっている

高遠さんは結局、固定金利へ借り換えをしました。変動金利0.5%から1.9%の固定金利への借り換えだったのですが、繰り上げ返済を進めていたことで、ローンの残高が当初の借入金額よりも減っていたため、月々の返済額はほぼ同じになりました。今後金利はどうなるかわかりませんが、高遠さんは、心理的不安を取り除くことに重きをおきたい、ということでした。今後は彼の回復を待ちながら、年収アップを見据えた転職活動をする方向で動くそうです。ローンの借り換えには、20万~100万円の費用もかかりますし、ケースによっては、返済額が増えることもあります。

つまるところ、金利の変動によるリスク回避は、家計の対応力にかかっている、とも言えます。蓄えがまったくない状況ではベストなタイミングで借り換えや繰り上げ返済もできず、金利上昇による返済額アップにも対応できません。金利がどう動いても柔軟な対応ができるよう、今後は特に、情報収集と家計管理に気をつけたいところです。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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