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成績が振るわなかった中3の生徒たちが急に伸び始めた…彼らに課した"トレーニング"の中身

プレジデントオンライン / 2024年3月1日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zolga_F

自分の能力を最大限に引き出すにはどうすればいいか。心理学者の内藤誼人さんは「『精神力には限界がある』と思っているから、精神力が出なくなる。シンガポールにある南洋理工大学のクリシュナ・サバニは、アメリカ人は精神力の限界を信じているけれども、インド人は限界など信じていないので、精神力を使う複数の作業を連続してやらせても決して作業能率が落ちることはないという報告をしている。マインド・セットを変えれば、能力や才能はいくらでも伸ばせる」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、内藤誼人『「なまけもの」のやる気スイッチ』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■本人の思い込み「マインド・セット」を変える

頭の良さですとか、才能のようなものは運命的に決まっているものではありません。あらかじめ決まっているものではなく、努力次第で伸ばすことができるのです。

「努力したって、頭は良くならないよ。私の両親は中卒なんだから」

こういう思い込みはよくありません。そういう思い込みをしていたら、勉強しようという意欲が生まれるわけがないからです。

本人の思い込みのことを「マインド・セット」と呼ぶのですが、行動的な人間になりたいのなら、まずは間違えたマインド・セットを修正する必要があります。

アメリカにあるテキサス大学のデビッド・イーガーは、GPA(アメリカの成績評価のことです)の点数が低い中学3年生を集めて、マインド・セットを修正するためのトレーニングを受けてもらいました。

「努力は決してムダにはならない、だれでも学べば絶対に伸びる」
「伸びないのはやらないからであって、才能のせいではない」

こういうことをしっかりと教え込むことで、まずは勉強のできない子どものマインド・セットを変えるように仕向けたわけです。

するとどうでしょう、それまで成績が振るわなかった子どもたちも、数カ月後には本当に主要科目の成績が伸び始めたではありませんか。マインド・セットを変えるやり方は大成功だったのです。

■才能を伸ばすなら、最初から「できない」はNG

「どうせ自分にはできっこない」と思い込んでいるから「できなくなる」のであって、最初から「できない」わけではありません。

成績が悪いのだとしたら、それは明らかに自分のせいです。

自分がおかしな思い込みを持っているから、成績が悪いのであって、その思い込みを変えれば、成績はいくらでも伸ばせます。

「もともとの頭が悪いんだから、どんなに努力したって成績が上がるわけがないんだよ」と思っている人は、おそらくいつまでも成績は上がらないでしょう。本人がそう思い込んでいたら、成績が伸びるわけがないのです。

スポーツでも、芸術でも、同じです。

「私は背が小さいから、バスケットボールがうまくならない」と思っていたら、バスケットボールの技能を伸ばすことはできません。

たしかに背が低いことはバスケットボール選手としては致命的に不利でしょう。そのこと自体は否定できません。世界最高峰のバスケットリーグであるNBAの選手の平均身長は約2メートルだそうですから。

けれどもマグジー・ボーグスのように身長が160センチでも大活躍できた選手がいないわけではありません。つまり、身長ですべてが決まるわけではないのです。

「私には音楽の才能なんてない」と思っていたら、ピアノもバイオリンも、その他の楽器も学ぶことはできないでしょう。

おかしな思い込みは叩き潰しておきましょう。マインド・セットを変えれば、才能はいくらでも伸ばせます。

■自分で限界を設けない

アメリカ人は、意志力のような精神力には、限界があると信じています。

つまり、精神を疲れさせるような作業にしばらく取り組んだら、精神力が回復するまで、しばらく休まなければならない、と信じているのです。

日本人も同じように考えています。頭を使う仕事をしたら、その後に休まないと回復しないと思っている人のほうが多いのではないでしょうか。読者のみなさんもたぶんそうだと思います。

仕事の合間に腕を伸ばす人のイメージ
写真=iStock.com/maruco
勉強する - 写真=iStock.com/maruco

ですが、「精神力には限界がある」と思っているから、精神力が出なくなるのであって、「精神力に限界なんてない」と思っていれば、精神力が枯れてしまうようなことはないのです。

シンガポールにある南洋理工大学のクリシュナ・サバニは、アメリカ人は精神力の限界を信じているけれども、インド人は限界など信じていないので、精神力を使う複数の作業を連続してやらせても、決して作業能率が落ちることはないという報告をしています。

精神力には限界なんてないと思っていたほうがいいです。

そうすれば、疲れなんて感じなくなります。

■限界とは自分が勝手に作り上げたものである

オランダにあるマーストリヒト大学のキャロリン・マーティンは、53人の大学一年生にハンドグリップを我慢の限界まで握り続けてもらう実験をしました。

それから2つのグループに分かれてもらい、ひとつのグループにだけ、「精神力は無限」ということを教えました。「精神的な疲れは、身体的な疲れとは違って、休憩なんていらないという科学的な研究があるのです」ということを教えたのです。

それからもう一度ハンドグリップを握ってもらうと、「精神的な疲れなんてない」と教えられたグループでは、そういうことを教えてもらわなかったグループより長くハンドグリップを握っていられることがわかりました。

もし人間に限界があるとしたら、それは自分が勝手に作り上げた限界であるにすぎません。そんなものはないのだと思っていれば、私たちはやすやすと限界突破できるものです。

自分ではここまでしかできないと思っていることでも、たまたまそれ以上のことをやってみると、意外にすんなり壁を越えてしまうこともあります。

「絶対にムリ」と思っているからムリなのであって、そんなことを考えなければ、私たちに限界などありません。

■直感で動いてもOK

いくら考えても正解がわからないことはよくあります。

もし考えに考えぬくことで正解にたどり着けるのならよいのですが、人生においては考えてもわからないことはいくらでもあります。

「?」に囲まれる人のイメージ
写真=iStock.com/ismagilov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ismagilov

もし「どんなに考えても答えなんてわからない」と思ったら、考える時間がもったいないので、さっさと直感で行動してしまいましょう。「直感で動く」というと、何やら危なっかしいように思われるかもしれませんが、そんなこともありません。私たちの直感は、かなりの優れものなのです。

イギリスにあるオープン大学のマーク・フェントン=オクリーヴィは、6つの投資銀行の一流トレーダーについて調査したことがあるのですが、一流のトレーダーほど自分の直感を信じて行動していることがわかりました。「なんとなくこちらが正しいように感じる」という自分の直感を信じるからこそ、素早く決断、実行ができるのです。

どの株を買ったらよいのかは、熟慮してもどうせわかりません。完全に計算でうまくいくのならよいのですが、そういうケースはあまりありません。

これは金融業界だけに限った話ではありません。

■考えるほど動けないなら自分の直感を信じよう

私は出版業界で働いていますが、どんな本が売れるかなど、計算や予測ができませんから、もう直感で動くしかないと割り切っています。直感的にこのテーマの本を書こう、と決めて、手あたり次第に仕事をしている感じです。

じっくりとテーマを熟慮して、売れる本を作ろうなどと考えていたら、いつまでも動けません。売れる本など、わかるわけがないからです。考えるだけムダなことは、しないほうがいいに決まっています。とりあえず自分の直感を信じることにしましょう。

そのほうがスピーディーに行動することができます。

アメリカにあるプリンストン大学のダニエル・カーネマンは、お医者さんが診断をするときや、消防士が火災現場に突入すべきかどうかの判断をするときにも、直感は大いに役立つと指摘しています。熟慮ばかりしていても、埒が明きません。

どんなに考えても正解がわからない状況では、とにかく自分の直感を信じて行動するという自分なりのルールを作っておきましょう。そのほうが悩んだり、迷ったりしなくてすみます。

■見栄を張るのも立派なモチベーションだと考えてみる

見栄を張ることは良いことです。なぜなら、見栄を張って、「カッコ悪いところは見せられない」「情けない姿を見せられない」という気持ちは、本人にとってものすごく大きな意欲を引き出すことに役立つからです。

見栄を張らない人は、自分がどう他人に評価されてもかまわないと思っているので、やる気も出ません。そう考えると、見栄っ張りな人間であることは決して悪いことではないといえるでしょう。

アメリカにあるカリフォルニア大学サンタバーバラ校のチャールズ・ウォーリンガムは、ジョギングコースで走っている男性が90ヤード(約82メートル)を走り抜ける速さをこっそりと測定してみました。

ジョギングする人のイメージ
写真=iStock.com/martin-dm
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/martin-dm

ただし真ん中の45ヤード地点にある芝生のところにはアシスタントの女性がいます。その女性は条件によって、ジョギングしている人をじっと見つめていることもあれば、あるいは背中を向けて読書中、ということもありました。

すると面白いことがわかりました。女性が見つめていると、ジョギングしている人たちはみなペースアップすることがわかったのです。

それまではフラフラしながら走っていた人でも、「女性がこちらを見ている」ということに気づくと、背筋をちゃんと伸ばして、腕も力強く振り始め、ペースアップしたのです。

その心理はおそらく見栄です。「女性の前で情けない姿を見せるのは恥だ」という気持ちが、ペースアップさせたのでしょう。

■見栄っ張りな人は、喜んでやせ我慢ができる

見栄を張ることは決して悪いことではありません。むしろ自分の潜在能力を最大限に引き出す上で、大変に役立つ力を私たちに与えてくれるのです。

女性が多い職場で働いている男性は、おそらく重い段ボール箱でもホイホイと運び、力仕事なども率先して行うでしょう。たくさんの女性の目が自分を見ていると思えば、普段なら出せない力も出せるようになるのです。

見栄っ張りな人は、見栄を張るためなら、喜んでやせ我慢ができるものなのです。

やせ我慢であろうが、我慢のひとつであることは変わりがありませんし、普段以上の努力を引き出す上での立派なモチベーションになります。

「私は見栄っ張りだ」という自覚があるのなら、それは良いことだと自分に言い聞かせてください。もっと、もっと見栄っ張りになっていいのだ、と考えるようにしたほうがいいと思います。

私は高校生のときに、数学の勉強を頑張っていましたが、その理由は数学ができる男性は他の生徒から一目置かれていたからです。見栄っ張りな私は、周囲の人たちが私のことを頭がいい人だと評価してくれるのが嬉しくて、数学の勉強を頑張ったのでした。

見栄を張る力はとても強力な意欲を引き出しますので、うまく使いましょう。

■異性にモテたいという下心を持つ

見栄を張ることと似ているのですが、異性からモテたいという下心も悪くありません。異性にモテたいと思うからこそ、私たちは力を出せるのです。下心は大歓迎すべきなのです。

女性を抱き寄せる男性のイメージ
写真=iStock.com/Comeback Images
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Comeback Images

オーストラリアにあるクイーンズランド大学のリチャード・ロネイは、ブリスベンにあるスケートボード場に出向き、そこにいる96人の男性に声をかけました。

声をかけるアシスタントは2人です。1人は男性で、もう1人は魅力的な女性でした(事前の顔だちの評価で7点中5.58点と高く評価された女性です)。

アシスタントの2人は、滑っている男性に声をかけ、10回の技を見せてくれるようにお願いしました。技はやさしくてもかまいませんし、練習で50パーセントしか成功していない難しい技でもかまいません、と伝えました。

その結果、女性アシスタントがお願いしたときには、男性ははりきって難しい技に果敢に挑戦することがわかりました。男性は、女性の前だと張り切るのです。

また、挑戦が終わったところでだ液を調べさせてもらったのですが、男性アシスタントがお願いしたときには、テストステロン値が212.88pmol/Lだったのに対して、女性がお願いしたときには295.95pmol/Lでした。

テストステロンは男性ホルモンの一種で、やる気を高めるホルモンなのですが、女性の前では、やる気が高まったということを示しています。

■異性の前でモテたいと思えば限界突破も難しくない

下心というか、スケベ心のようなものを持つことは、恥ずかしいことでも何でもありません。それによって自分の意欲を高めることができるのですから、大いに下心を持ちましょう。そのほうが絶対にやる気が出ます。

「異性にモテたい」
「異性にチヤホヤしてもらいたい」

そういう気持ちがあればこそ、人は思ってもみない力を発揮できるのです。

内藤誼人『「なまけもの」のやる気スイッチ』(総合法令出版)
内藤誼人『「なまけもの」のやる気スイッチ』(総合法令出版)

たいていの人は、自分の限界をかなり低めに評価しているものですが、異性にモテたいと思えば、やすやすと限界突破できるものです。普段の自分なら絶対にできないようなことでも、異性の前でなら難しくありません。

それまではずっと仕事の手を抜いていたような人でも、たとえば新入社員として若い女の子が入ってきたりすると、とたんに張り切って仕事をする人もいるでしょう。「カワイイ後輩にちょっとでもカッコいいところを見せたい」と思うと、自然にパワーがみなぎってくるものです。

下心を持ちましょう。下心はいくらあっても困るものではありません。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。

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(心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長 内藤 誼人)

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