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低負荷なのにダンベルやマシンと同じ効果…医師「高齢者でも安全でラクラク続けられる筋トレの種類」

プレジデントオンライン / 2024年2月29日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

年を重ねても、健康で居続けるにはどうすればいいか。医師の大坂貴史さんは「WHOは『筋力強化は全ての人の健康に役立つ』と述べているが、なかでも最も効果的と言えるのが高齢者だ。年をとり特別身体を動かさずに筋トレをしていないと、筋肉量が落ち、それが体力低下につながり、糖尿病や他の病気を招き認知症や寝たきりに繋がっていく。ダンベルやマシンを使った高負荷トレーニングと同等の効果が得られる、自重のスロトレをやらない手はないだろう」という――。

※本稿は、大坂貴史『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■1日5分程度、週約30〜60分が最も効果的

消費カロリーを増やすには強度を増やすか時間を伸ばすかです。そして、健康効果を目標とする場合でもWHOの身体活動・座位行動ガイドライン(※1)では「少なくとも週150〜300分」と記載されており、「そんな長い時間は難しいよ〜」と思ってもしかたないと思います。

それに対して、筋トレは先ほどのガイドラインでも時間が規定されていません。実際、筋トレをどれぐらいやるのが、健康にとってよいのかということについてある研究結果(※2)を解説しましょう。

2022年に大きな病気をしていない18歳以上の成人を対象に、筋トレと健康との関連を調査した16件の研究をまとめた報告が行われました。

それによると健康による効果は週約30〜60分の筋トレが最も効果的で週120分以上行うと逆に健康の効果がなくなるというものでした。1日約5分もすれば達成できてしまうため、大変効率的であると言えます。

また、筋トレで筋力を増やすのも時間をかければよいということではありません。次の項で詳しくお話ししますが、十分な強度であることが重要です。

実は大変重要な研究が日本で行われておりまして(※3)、それによると1日3秒間の上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋トレを4週間行ったところ、なんと10%の筋力上昇が得られたということが報告されています。

筋トレの時間と健康への影響
出所=『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』

たった、3秒間の筋トレをする時間がないという人はいないと思いますし、全くやらないよりは短時間で遥かに効果が得られるのがよい点です。

このように筋トレは時間をかけずに効果が得られる特性を持っていますので、時間がない人、長い時間かけるのが面倒くさいなと思っている人にとっては本当に有効な運動であるということがわかるかと思います。

これをご覧になっている人、今日筋トレしましたか? 3秒間だけでもやってみませんか?

■何回もできないくらいの負荷で行う

筋トレには大事な3原理があります。「過負荷の原理」「特異性の原理」「可逆性の原理」です(※4)。順番に解説します。

「過負荷の原理」とはある程度の負荷を身体に与えないとトレーニングの効果が得られないということです。日常生活と変わらないくらいでは筋肉は大きくならないし、力はつかないのですね。力を維持するという目的であれば日常生活と同程度でよい可能性はありますが、効果は落ちるでしょう。

「特異性の原理」とはトレーニングを行った部位やその能力のみがよくなるということです。つまり、立ち上がりに不安が感じるのであればスクワットなどのような立ち上がるトレーニングがよく、腕立て伏せで足の力が強くなることはないということです。

「可逆性の原理」とはトレーニングをやめればトレーニングによって得られた効果を失うということです。まぁ、当たり前ですよね。

この中で「過負荷の原理」についてここで解説します。つまり、筋トレを行ってうまく筋肉の量を増やしたり、筋力をつけたりするためには、そこそこしんどいことをしないといけないということです。こういったことが筋トレに苦手意識を持つ人が多い理由かもしれません。

さて、筋トレの強度にはRMという概念があります。RMとはRepetition Maximumの略で、決まった重さに対して何回反復して関節運動を行うことができるかによって強度を決める方法です。

例えば、1回が限界の負荷は1RM、最高5回繰り返せる負荷は5RMです。数字が大きいほど強度は低くなります。

別の言い方として1RMの何%という言い方もあります。そして、筋力をつけたり筋量を増やしたりしたいのであれば、何回もできないくらいの負荷で行う必要があります。つまり、何度もできるような筋トレをしても筋力や筋量を増やすのには効率が悪いということです。これが、ウォーキングをしても筋肉を増やすのが難しい理由です。

■ダンベル・自重「筋トレ」の決定的な違い

さて、図表2はそれぞれの強度における筋トレの効果を示したものですが、負荷が強いと筋力が主に増強され、中程度だと筋肉が大きくなり、負荷が少ないと筋持久力が中心によくなります。

負荷についてですが、あくまでもその本人にとってですので、人によってもちろん大きく変わります。

例えばスクワットを3回しかできない人にとってはその1回はすごく高い負荷になり筋力を増強できますが、スクワットを20回できる人にとってはその1回は負荷が低くなりますので、筋力や筋量を増やしたりするのには効率が悪いということになります。

前者の人は自宅でスクワットをするだけで効果が期待できますが、後者の人は負荷を上げるためにダンベルやバーベルなどが必要になってきます。つまり、筋力が低い人にとって、筋トレは非常に効率がよい運動と言えます。

筋トレの強度と得られる効果
出所=『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』

当たり前のようですが、同じ筋トレをしていると自分の筋力が上がりますので、今までしていた筋トレの自分にとっての負荷が低くなっていきます。

そのため、筋力が上がる効率がだんだん悪くなって、どこかでほぼ変わらなくなります。ですので、自分の筋力を評価しながら実施していくことが大切です。ジムなどではそのあたり考慮しながら指導してくれますが、自分で行う場合は自分で調整が必要です。

ダンベルなど重りを使った筋トレであるならば調整ができますが、スクワットや腕立て伏せなどでは難しいです。

私が作成しているYouTubeチャンネルである「くろまめチャンネル」では全ての動画で重りを使わない筋トレで強度を調整できるようにしています。

自宅で実施する上でも強度調整をしやすいと思いますので、ぜひご利用ください。

■低負荷×高回数か高負荷×低回数か

筋トレをする上で負荷が大切だということを前項でお話ししました。自分の強度を測るのは大変ですが、とくに筋力が低い人にとって筋トレはとても効率的にできる運動であることがご理解いただけたかと思います。

ただ、いくら効果的で時間をかけなくてもよいとはいえ、やはり高負荷はしんどいです。

例えばスクワットのように複数の関節を動かすものであれば、負荷が強くなるたびに関節への負担も大きくなります。

自宅でスクワットをする女性
写真=iStock.com/twinsterphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/twinsterphoto

息をこらえて動作をすれば、血圧も上がりますし、また筋力が強くなれば、ダンベルやバーベルなどの重りを使わないと筋力アップは難しいです。

ダンベルやバーベルは自宅で使うことは可能ですが、スクワットなどに使う場合はその重りも重く、高価ですし、自宅で置いておく場所の確保も大変です。

また、ダンベルやバーベルなどについては、筋トレ中に身体の上に落とすなどの事故のリスクもつきまといます。そういった点も考えて、高負荷の筋トレはなかなか難しい点が存在します。

さて、負荷が低いと全く意味がないのかというと、そうではありません。筋トレにも「2.専門家が筋トレを強くすすめる理由」でお話しした有酸素運動と同じように積の概念があるのです。

つまり、筋トレの効果として得られるのは「どれだけの負荷をかけたか」×「どれだけの回数行ったか」ということなのです。

■負荷が少なかったら、その分回数を増やす

以前から筋トレの効果は「どれだけの負荷をかけたか」×「どれだけの回数行ったか」だということについての研究が行われていましたが、2023年にそれらをまとめた報告(※6)がなされました。

その報告では、健康な成人を対象とした筋トレの負荷、セット数、週の頻度で筋力や筋肥大の効果を比較したランダム化試験をまとめて、どの負荷・セット数・週の頻度で行うのが筋力と筋量によい影響を与えていたかということについて評価されています。

その結果として、筋力については、高負荷・複数セット・週に1〜3回が最も効果的であり、筋量については最もよかったのが、高負荷・複数セット・週に2回でありましたが、低負荷・複数セット・週1〜2回も十分な効果を示しており、筋量には複数セットが重要であるということが結論づけられています。

先述は成人を対象とした研究(※7)ですが、高齢者のみを対象とした研究も紹介します。こちらの研究も、高齢者を対象として筋トレの負荷とその回数の効果を比較した研究をまとめて、低負荷×高回数と高負荷×低回数のどちらが有効か検証しています。

その結果、筋量に関しては高負荷×低回数が低負荷×高回数と比べてやや有意でありましたが、筋力についてはどちらも変わらなかったのです。

以上のことをまとめますと、筋トレの負荷が少なかったら、その分回数を増やすことで同様の効果が期待できる可能性が高いです。

それを踏まえてどちらがおすすめかというと、筋トレを始めた最初は高負荷を行うのがそこまで大変ではないでしょうし、運動の習慣もついていないと思いますので、まず高負荷×低回数で短時間で行い、筋力がついてきて高負荷が難しくなった頃には習慣もついてくると思いますので、その時点で負荷を落とし(現実的には同じ筋トレを継続し)、回数を増やしていくのがよいと思います。

あまりにも負荷が低すぎると回数を増やさないといけないので負荷が低すぎないようには注意しましょう。

■フリーウェイトで絶対にやってはいけないこと

今までいろいろな種類の筋トレについて小出しにしてきましたが、ここでは筋トレの種類について解説します。まずは図表3を御覧ください。

筋トレの種類とメリット・デメリット
出所=『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』

それぞれについてメリット・デメリットがあります。

フリーウェイトトレーニングはダンベルやバーベルなどの器具を使ったトレーニングです。前項でもお話ししましたが、重りの重さを増やせば増やすほど負荷を上げられるのがメリットです。また、1つの筋トレで複数の筋肉に刺激が入りますので、1回で複数の筋肉が鍛えられます。

ただ、デメリットも複数存在します。まず、ちゃんとしたフォームでしないと目的とする筋肉が鍛えられません。やり方をしっかり学ぶ必要があります。また、ダンベルなどを顔や足に落とすというケガのリスクがあります。

そして、ダンベルやバーベルは比較的高価ですので、買い揃えるのが大変ですし、置く場所も困ります。ですから、ジムに行かないとなかなかトレーニングするのが難しいです。代用として、筋力が低かったり小さい筋肉を鍛えたりする場合には、ペットボトルなどを利用することもできます。

自重トレーニングはおそらくいちばん有名な筋トレで自分の体重を利用した筋トレです。スクワットや腕立て伏せ(プッシュアップ)などがこれに当たります。自宅でできますし、お金もかかりません。負担も少ないので安全にできます。

ただ、自重を利用するため筋力が上がってきたら負荷を増やしていくのが難しい点と背中の筋肉などに刺激をかけるのが難しい点がデメリットです。

マシントレーニングはフリーウェイトトレーニングに近く、機械で重りを持ち上げる筋トレです。ウェイトトレーニングのよいところを持ちながら、さらに機械を使うので一定方向にしか動かない、重りを身体に落とす心配がないなどのメリットがあり、安全に高重量を扱えます。

ただ、機械が大掛かりになりますので、自宅では困難であるのと遠心性収縮(筋肉に力がかかりながら伸びていく状態)で負荷がかかりにくいとされている点がデメリットです。また、一定の方向しかかからないため、鍛えられる筋肉も絞られます。

ケーブルトレーニングはフリーウェイトトレーニングとマシントレーニングの間のようなトレーニングで、ケーブルを使って重りを持ち上げる筋トレです。マシンと違ってケーブルの自由度が高い分、やり方を習得すれば非常に有効で安全に高負荷で複数の筋肉に刺激が入り、最初から最後まで均一に負荷がかかります。

ただ、やはり最初は慣れないと目的とする筋肉に刺激が入らないのと、こちらもジムがどうしても必要になってきます。

■低負荷をスローで、高負荷と同等の効果

さて、いろいろな筋トレを紹介してきましたが、筋力が低い間は自重トレーニングで十分でも、だんだん筋力がついてくると負荷が足りなくなってきます。そういった時におすすめしたいのがスロトレです。

大坂貴史『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』(クロスメディア・パブリッシング)
大坂貴史『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』(クロスメディア・パブリッシング)

スロトレとは(主に)自重トレーニングを行う際にゆっくりとした動作で行うという単純なものです。その結果、低負荷をスローでやることで、高負荷での筋トレとほとんど効果が変わらなかったとされています(※8)

しかもその上、筋トレ中の血圧の上昇が高負荷よりも少なく、膝の負担も少ないです。まさに、ご高齢の人がする上で夢のようなトレーニング方法です。

いろいろなやり方があるのですが、筋トレにかける時間と筋肥大の効果を示した研究を複数まとめて解析した報告(※9)では、0.5秒〜8.0秒でのトレーニングがよかったと指摘されていて、あまりにもゆっくりしすぎてしまうと効果が落ちてしまうと考えられており、8秒までをひとつの目安にしましょう。

私の動画でもスロトレの動画をつくっていますので、ご覧いただければと思います。

※1 WHO 身体活動・座位行動ガイドライン

※2 Momma H, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Jul;56(13):755-763.

※3 Sato S, et al. Effect of daily 3-s maximum voluntary isometric, concentric, or eccentric contraction on elbow flexor strength. Scand J Med Sci Sports. 2022 May;32(5):833-843.

※4 厚生労働省 e- ヘルスネット 運動プログラム作成のために原理原則

※5 NESTA JAPAN 事務局 PERSONAL FITNESS TRAINER 日本語版

※6 Currier BS, et al. Resistance training prescription for muscle strength and hypertrophy in healthy adults: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. Br J Sports Med. 2023 Jul 6:bjsports-2023-106807.

※7 Csapo R, et al. Effects of resistance training with moderate vs heavy loads on muscle mass and strength in the elderly: A meta-analysis. Scand J Med Sci Sports. 2016 Sep;26(9):995-1006.

※8 Tanimoto M, et al. Effects of low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation on muscular function in young men. J Appl Physiol (1985). 2006 Apr;100(4):1150-7.

※9 Schoenfeld BJ, et al. Effect of repetition duration during resistance training on muscle hypertrophy: a systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2015 Apr;45(4):577-85.

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大坂 貴史(おおさか・たかふみ)
医師
京都府立医科大学卒業後、京都南病院で初期臨床研修を経て京都第二赤十字病院に就職。その後、京都府立医科大学大学院博士課程で医学博士を取得し、現在は綾部市立病院_内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌糖尿病代謝内科学講座客員講師。糖尿病専門医・指導医、総合内科専門医、日本医師会認定健康スポーツ医。市中病院で糖尿病をもつ患者さんを診察しながら、大学で糖尿病に対する研究を行っている。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。幸せになる運動の開発が現在の研究テーマ。趣味は料理とワイン。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA。居合道・弓道・合気道有段者。YouTube、Xで医療情報を発信している。YouTubeの掛け声は「健康はぁ〜筋肉ぅ〜」

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(医師 大坂 貴史)

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