知らずに顰蹙を買い社会的に抹殺される…会社内にはびこる「不適切にもほどがある」9つの悪気ないフレーズ
プレジデントオンライン / 2024年3月1日 11時15分
■会社にはびこる「不適切にもほどがある」9つの悪気ないフレーズ
世の中には「不適切」があふれています。うっかり不適切なフレーズを発してしまうと、まわりから白い目で見られるどころか、社会的に抹殺されかねません。
話題のテレビドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)では、タイムスリップで令和に現われた昭和オヤジが、現代のコンプライアンス(法令や社会規範の遵守)に反する不適切な言動を連発。時代による“常識”の変化を感じるとともに、コンプラや相互監視や謎クレームにがんじがらめになっている現代の不自然さをあぶり出しています。
コンプラに気を付けていれば大丈夫とは言えないのが、「不適切」のしぶといところであり怖いところ。知らないあいだに顰蹙を買ったり後ろ指を指されていたりする悲劇を避けるために、ビジネスシーンで何の悪気もなく、むしろよかれと思って口にしがちな「不適切すぎるフレーズ」を挙げてみましょう。
■【昭和が香る不適切編】
「昭和な感覚」と不適切は、極めて親和性が高いと言えます。口にした覚えがある人も多いのではないでしょうか。どこが問題なのか、あらためて考えてみましょう。
フレーズ1「たまには飲みニケーションといこうじゃないか」
〈不適切ポイント〉若い部下たちと距離を縮めたいと思って、こう提案しました。もちろん、おごりのつもりです。しかし、部下はまず間違いなく「うわ、面倒臭いこと言い出したぞ」としか思わないでしょう。「一緒にお酒を飲めば親睦が深まる」というのは、昭和世代だけが持っている幻想です。若い部下にとっては苦行の強制でしかありません。しかも「飲みニケーション」というカビの生えた言葉を平気で使う上司と飲んでも、話が弾む可能性はゼロです。
フレーズ2「気が利くね。○○ちゃんと結婚する人は幸せだな」
〈不適切ポイント〉女性部下(独身)が、会議の資料を完璧に揃えてくれました。ホメるつもりでこう言っても、喜んではもらえないどころか、「この上司、ダメだ」と見切りを付けられるでしょう。発言の根底には「結婚して旦那に尽くすことが女性の目標であり喜び」という昭和の価値観が強固に横たわっています。令和を生きる若い女性にとって、それを押しつけられるのは苦痛以外の何ものでもありません。「いいお嫁さんになれるよ」は、さらに危険です。
フレーズ3「下請け業者に甘い顔したら、ナメられるだけだぞ」
〈不適切ポイント〉昭和と言わず平成になってからも、発注する側としては、この心得は上司が部下に伝えておくべき「大事な教え」でした。しかし、令和になった今、ここまで露骨に下請け業者との“上下関係”を強調したり、優越的地位にある特権を振り回す気満々な姿勢を示したりしたら、間違いなく若手にドン引きされるでしょう。まあ、うわべの接し方は気を付けてくれていても、元受けと下請けは、ぜんぜん「対等なパートナー」ではありませんけど。
■【永久不変な不適切編】
世の中がどんなに変わっても、揺るぎなく「不適切」という言動はあります。人間の業というか弱さというか、さまざまな甘い誘惑から逃れるのは簡単ではありません。
フレーズ4「新しいやり方にするなんて俺は聞いてないぞ」
〈不適切ポイント〉いつまでも地位にしがみついて、昔ながらの非効率で不合理なやり方や、もはやずれまくっている自分の感覚を変えようしない人は、いつの時代もたくさんいました。いわゆる「老害」です。本人は「会社のため」「みんなのため」に、経験豊富な自分がビシッと言ってやったと思い込んでいるし、なまじ権力を持っていたりもするので、始末に負えません。「俺は聞いてない」と自分のメンツに強くこだわっているのも、念入りに不適切です。
フレーズ5「俺はいいと思うけど、上がなんて言うかなあ」
〈不適切ポイント〉よく聞くセリフですが、さまざまな「不適切」が凝縮されていると言えるでしょう。目の前の相手には「自分は賛成(味方)だ」といい顔をして自分を守りつつ、望ましくない判断をする役を「上」に押しつけています。もともと「上」にタテつくつもりも、自分で判断するつもりもありません。結果的に「私は無責任で卑怯な人間です」と伝えてしまっているフレーズです。「前例がない」という言い訳も、同様の意味で不適切です。
フレーズ6「今の若いモンは~」「今の政治家は~」「今の母親は~」
〈不適切ポイント〉「今の日本社会は~」「今のお笑いは~」など、「今の」の後ろにはさまざまな言葉を入れて、嘆いたり批判したりすることができます。そして、いつの時代でも使えます。この言い回しを使っている本人は、「俺様の鋭い意見」や「俺様の高い問題意識」を披露しているつもりかもしれません。しかし、何の引っかかりもなく「今の~」を使っている時点で、凡庸で何の中身もない自己満足な意見の押し付けに過ぎないことが証明されています。
■【令和の新型不適切編】
誰もが「不適切よばわり」を恐れ、多種多様で大量の「不適切」を前に立ちすくんでいる令和の今。そんな状況だからこそ、つい口にしてしまう不適切フレーズがあります。
フレーズ7「こんなこと言ったらセクハラになっちゃうかなあ」
〈不適切ポイント〉たとえば、女性の同僚に「そのスカート、すごく素敵だね」みたいなことを言ったあとで、あわててこう加えました。言う側としてはセクハラという非難を予防しつつ、いちおう配慮ができる人間であることを示したつもりです。しかし相手は、スカートをホメられたことは何とも思わなかったとしても、保身に走りまくっているこのフレーズには、さぞ腹が立つでしょう。相手を確実に不快にして、自分の評価を大きく下げてしまいます。
フレーズ8「いちいち気にしてたら何も言えなくなっちゃうよ」
〈不適切ポイント〉こう言っている本人は、やたらと「不適切」があふれる世の中に鋭く警鐘を鳴らしたつもりかもしれません。しかし、街で体格のいい人を見て、いきなり「デブ」と言ったりしないはず。誰しも「言っていいこと」と「言ってはいけないこと」は、常に意識して生きています。このフレーズを口にするのは、自分の無知や無神経さを指摘されてムッとしたから。幼稚さや相手の気持ちに配慮するつもりがない傲慢(ごうまん)さを露呈してしまいます。
フレーズ9「このプランはコンプラ的にマズイんじゃないかな」
〈不適切ポイント〉「コンプライアンス」への配慮は、たしかに大切です。細かく気にすれば気にするほど、ちゃんと仕事している気にもなれるでしょう。しかし、批判やクレームを警戒し過ぎて何でもかんでも自主規制してしまうのは、それはそれで極めて不適切。コンプラ様の顔色を窺っているだけで、自分で考えて判断することを最初から放棄しています。そんな姿勢が当たり前になった世の中は、面白くない上に、お先真っ暗ではないでしょうか。
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大人系&検定系コラムニスト
1963年三重県生まれ。1993年に『大人養成講座』でデビューして以来、大人の素晴らしさと奥深さを世に訴え続けている。『大人力検定』『父親力検定』『大人の言葉の選び方』など著書多数。最新刊は、会社の理不尽と戦うための知恵と勇気を授ける『9割の会社はバカ』(飛鳥新社、共著)。郷土の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」を務める。
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(大人系&検定系コラムニスト 石原 壮一郎)
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