子供を「たくさん褒めて甘えさせる」は危険すぎる…頭のいい親が絶対にやらない"子供への態度"
プレジデントオンライン / 2024年3月6日 15時15分
※本稿は、米澤好史『発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■叱られても学べないから混乱する
もし、お子さんの言動に愛着の問題の特徴を少しでも発見した場合、気をつけていただきたいことがあります。
それは、困った行動に遭遇したときの“接し方”です。
こどもの困った行動の原因が愛着の問題である場合、その接し方しだいで、状況をより悪化させてしまうことがあるからです。
とくに一般的な子育てにおいて「いい」とされている対応が、逆効果になることがあります。
ここで思い出していただきたいのは、愛着の問題を抱えるこどもたちが困った行動をする背景に、〈感情〉の問題があるという点です。
困ったを増やす接し方① とりいそぎ厳しく叱る
こどもが困った行動をしたとき、大人はつい反射的に「そんなことしたらダメでしょ、やめなさい!」と叱ってしまうことがあります。
叱ることは、その行動をやめ、今後もしてはいけないと理解してほしくてすることですが、愛着の問題を抱えるこどもは、それを学ぶことができません。
なぜなら、自分の行動を反省して修正するには、自分の気持ちを振り返る必要があるからです。
愛着の問題を抱えるこどもは、感情の発達が未熟なため、この振り返りができません。自分で自分の気持ちがわからないのですから、当然です。もちろん相手の気持ちもわかりません。
そこで叱られてしまうと、こどもたちはさらに混乱します。
「なんだかわからないけれど、責められて嫌な気持ちが増えた」ので、相手を責めて自己防衛的になります。
叱るという対応は、こどもの嫌悪感や悲しみ、不安や怒りといったネガティブな感情を膨らませ、混乱した感情をさらに混乱させてしまうだけなのです。
叱れば叱るほど困った行動が増えてしまうタイプのこどももいれば、叱るといっさい口を聞いてくれなくなるこどももいます。
また、追いつめられるとパニックになり、攻撃行動を引き起こしてしまうこどももいます。
いずれにしても、「叱る」という対応は、愛着の絆がうまく結べていないこどもにとっての解決策にはなりません。
逆に、叱って行動がなおるような子であれば、愛着の問題を心配する必要はないと言っていいでしょう。
■「なぜ叱ってしまうのか」を知っておく
あなたが最近こどもを叱ったのは、どんなときだったでしょうか?
叱りたくないのに、つい叱ってしまう――そんなときのあなた自身の感情にも、意識的になっておくことが大切です。
思い出してみると、たいていは余裕がないときではないでしょうか。
急いでいて時間がなかったり、周囲の目が気になって恥ずかしかったり、親としてちゃんとしなきゃと焦っていたりと、あなた自身に余裕がないときに、こどもを叱っている可能性があります。
けれども、この“とりあえず叱る”はこどもを混乱させるだけで、事態の収拾にはつながりません。
目の前のこどもの行動を叱りそうになったときには、まず「なぜ、その行動が問題だと感じるんだろう」と自分の感情にフォーカスしてみてください。
そこで自分の気持ちに気づければ、こどもへの伝え方も変わってくるからです。
■現場の文脈と、こどもの気持ちを把握する
愛着の絆がきちんと結べているこどもは、叱られてもダメージを受けません。
安心基地や安全基地があって守られていますから、指摘されたよくない部分を認めても、ネガティブな気持ちにならないからです。
叱られた行為を修正して報告すれば、また認めてもらえるとわかっているので、行動を正す意欲もわいてきます。
でも愛着の問題を抱えているこどもたちは、自分の感情がわかりませんから、叱られても混乱するだけです。
そして、ほとんどの場合、何を叱られているのか理解できていません。
もし、あなたに余裕があって、「この子はきっとこんな気持ちで○○してしまったのだな」とこどもの感情を察知できたなら、それを言葉にして伝えてあげてください。
叱ってしまう前に、気持ちの確認作業を差し込んでほしいのです。
そうすることで、こどもは自分の感情に気づき、学ぶことができます。
そして、それが安心・安全の絆が育まれていくことにもつながっていくのです。
■困った行動がエスカレートする
困ったを増やす接し方② 何をしても叱らない
では、まったく叱らなければいいのかというと、それも違います。
愛着の問題を抱えるこどもは、「こんなことをしても叱られないんだ」と受けとめると、「これも叱られないぞ」「こんなことも平気だぞ」とどんどん自己高揚して、やりたい放題やってしまう特徴があるからです。
「お母さんは人前だと叱らないんだ」「先生は○○のときはそんなに怒らないな」と許される状況を探して、行動をエスカレートさせてしまいます。
暴れても好き勝手しても叱られずにいると、今度は「自分のほうが相手より上なんだ」と思うようになり、自分を叱れない相手を舐めてしまうのです。
そして、いつのまにか親や周囲の大人を支配するようになります。
「大人を支配する」とは、その子の命令に逆らうと暴れたりするので、しだいにそのこどもに対し腫れ物にさわるような対応をしてしまったり、こどもの言いなりになってしまいます。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
愛着の問題を抱えるこどもには、安心基地がありませんから、「自分のほうが優位なんだ」という感覚を得ることで安心感を得ようとするためです。
周囲が命令や支配に従えば従うほど、こどもの命令も支配もエスカレートしていくことになります。
■怒ってしまったら、あとで必ずフォローする
私たち大人が罪悪感を抱くのは、こうしてエスカレートしたこどもの言動に思わずカッとなって怒ってしまったとき。どうしても腹が立って、つい……、ということはあるわけです。
ただ、こどもにしてみれば、大人が勝手に燃え上がって火の粉を振りまいているとしか感じられませんから、嫌な感情が燃え広がって増幅するだけです。
「怒る」という行為は、お互いにとっていいことがひとつもありません。
もちろん一度嫌な気持ちに見舞われたからといって、未来永劫(えいごう)その気持ちのままということはありませんが、ネガティブな気持ちは長引くのが特徴です。どこかで気持ちを切り替えないと、お互いに嫌な気持ちを引きずってしまいます。
ですから怒ってしまった場合は、「さっきは怒っちゃったけれど、あなたを嫌な気持ちにさせたくて言ったわけじゃないんだよ」と、あとで必ずフォローしてあげることが大切です。
■気持ちの切り替えは大人から
ところが、大人側に余裕がないと、叱ったあと何となくバツがわるくなって、フォローを省略してしまうことがあります。これがよくありません。
こどもは嫌な気持ちで混乱したまま放置されるわけですから、安心とはかけ離れた状態になります。それでは絆は結べないままになるばかりです。
強く怒ってしまったのはなぜなのか、何がよくなかったのかを、ちゃんとこどもに伝えてあげてください。
怒ってしまったタイミングからフォローまでの時間差は、あまりないほうがいいでしょう。
年齢が上がれば翌日でも受けとめてくれるかもしれませんが、小さいこどもであるほど、すぐのフォローが重要です。
あなたが自分の気持ちに素直に向き合えば、フォローは難しくありません。しっかりこどもをフォローできれば、それが同時にあなた自身の精神安定にもなります。
そして実は、こうした場面で“こどもの気持ちの切り替えを主導する”ことが、愛着の絆を結ぶ大切なポイントでもあるのです。
■ただ褒めても、成長につながらない
困ったを増やす接し方③ たくさん褒めて甘えさせる
最近は育児や教育の現場でもよく耳にする「褒めて伸ばす」という考え方。専門家も「こどもは叱ってはいけない、褒めるのがいい」とよく言います。
しかし、愛着の問題を抱えるこどもの場合、そう単純ではありません。ただ褒めてもその子の成長にはつながらないですし、褒め方を間違えるとちょっと大変なことになるからです。
愛着の問題を抱えるこどもは、自分から「褒めて」と要求することがあります。安心・安全の基地がないせいでつねに安心感を求めているため、「見て見て! すごいでしょ!」と相手にアピールして要求に答えてもらうことで、一時的にポジティブな感情を得ようとするのです。
ただ、このポジティブな気持ちは持続しませんから、要求はすぐにエスカレートします。こどもからの「褒めて」に応えてしまうと、「これも褒めて」「もっと褒めて」と、欲求がどんどん強くなってしまうのです。
もちろん「褒められたい」というのは人の自然な欲求ですから、それ自体を否定するつもりはありません。ただ、こどもが大人に「褒めさせる」という状況をつくってしまうとよくないのです。
前項でお話しした命令がエスカレートしていく現象と同じで、褒めることがいつのまにか「おだてること」にすり替わり、支配関係に発展してしまうリスクがあります。
■こころに届く「褒め方」のコツ
では、いったいどんなふうに褒めたらいいのでしょうか。
とりあえずでも、「がんばったね」「すごいね」「えらいね」と褒めれば、こどもはいい気分になりますが、この褒め方は欲求のエスカレート現象をまねきます。
なぜなら、こどもは何を褒められているかが、わからないからです。
具体的にどの部分が褒めどころだったのかを、しっかり大人が伝えてあげる必要があります。
その伝え方のポイントは、そのときの〈感情〉と結びつけながら褒めること。
「片づけが上手ね。すっきりして気持ちがいいね」「○○ちゃん、自分の意見が最近言えるようになってきてうれしいね、えらいね」という具合です。
実は、愛着の問題を抱えるこどもの多くは、褒められたらどんな気持ちになればいいかがわかりません。
解釈をこどもに任せてしまうと、「親が喜ぶことをしたから褒められたんだ」「親に気に入られればいいんだ」などと勘違いしてしまうのです。
大人がいくら絆を意識しながら褒めても、これでは本末転倒。愛着の問題が進行してしまいます。
■褒めるときの意識が大切
褒めるときには必ず、「何を」褒めていて、それに伴う「どんな気持ち」が素敵だったのかを伝えてあげます。こうしたやりとりのなかで、こどもは自分の感情を学んでいくことができます。
「褒めた結果、その子にどんな気持ちになってもらいたいのか」
「どんな気持ちを感じる子になってほしいのか」
いちばん重要なのは、褒めるときのこうした意識です。
意識的な意味づけがあるのなら、周囲からは甘やかしているように見えたってかまいません。
反対に、ただ機嫌がよくなるからと甘やかしていれば、こどもの成長にも、愛着の修復にもつながらないのです。
本書にはこのほか「困ったを増やす4つの接し方」を紹介しています。ぜひ一読ください。
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心理学者
和歌山大学教育学部教授、臨床発達心理士スーパーバイザー、学校心理士スーパーバイザー、上級教育カウンセラー、ガイダンスカウンセラー・スーパーバイザー。1961年生まれ、奈良県出身。臨床発達心理学・実践教育心理学が専門。保育園や幼稚園、小中高や支援学校、医療福祉施設など、子育ての現場に自ら足を運ぶ。何千、何万というこどもに触れ、現場の視点を大切にし、支援者が元気になり納得できるを信条に、親や教育者、支援者へ“愛着の問題”解消のためのアドバイスを行っている。また、保育・教育・福祉関係者から保護者まで、幅広い層を対象とした数々の講演会で講師としての実績も豊富に持つ。
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(心理学者 米澤 好史)
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