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トヨタ、三菱商事、東京エレクトロン…日経平均株価を牽引する「セブン・サムライ」の本当の実力

プレジデントオンライン / 2024年3月4日 9時15分

上げ幅が前日比600円を超えた日経平均株価を示すモニター=2024年3月1日午前、東京都中央区 - 写真=時事通信フォト

■日本の株価上昇は「7企業」にかかっている

ついに日経平均株価は、34年ぶりに史上最高値を更新した。ここまで急速に株価が上昇すると、いずれは利益確定の売りが出ることは避けられない。株価はどこかで調整することになるだろう。

問題は、その後、中・長期的に日本幹部が上昇過程を維持できるか否かだ。最近、米国の有力投資銀行である、米ゴールドマン・サックスがわが国の株価を牽引する候補の7つの銘柄、いわゆる“セブン・サムライ(七人の侍)”を暫定的に選定したのが参考になりそうだ。

ゴールドマンが上げた7銘柄とは、SCREENホールディングス、アドバンテスト、ディスコ、東京エレクトロン、トヨタ、SUBARU、三菱商事だ。セブン・サムライの呼称は、米国の有力先端企業7社“マグニフィセント・セブン(GAFAM+テスラ、エヌビディア)”をなぞらえたのだろう。あるいは、黒澤明監督の名作である『七人の侍』(1954年)からとったのかもしれない。

ただ、足許の日本の産業界を見渡すと、“セブン・サムライ”以外にも中長期的な業績の拡大が見込めるわが国の産業分野はありそうだ。今後、わが国経済が本格的な起伏基調を辿ることができるかどうか、それがわが国の株価の先行きを決めることになるだろう。中長期的に、半導体など成長期待の高い分野で収益力が高まる企業が増え、わが国の株価を牽引する展開を期待したい。

■なぜ半導体、自動車、商社が選ばれたのか

ゴールドマン・サックスが挙げた、わが国の株価を牽引する候補銘柄“セブン・サムライ”は3つの業種に分類できる。一つ目は、半導体製造装置メーカーだ。オランダのASMLや米エヌビディアの決算が市場予想を上回り、生成AIの需要が急拡大することは明確になった。今後も生成AIの重要性は高まり、製造装置の需要は増える。

それは、“セブン・サムライ”に選ばれた4社など国内半導体製造装置メーカーに追い風だ。SCREENは主に半導体を洗浄する装置の製造で高い技術力を持つ。アドバンテストは半導体を検査する装置の製造に強みを持つ。ディスコはシリコン・ウエハーの切断などを行う、精密加工ツールおよびそれを搭載した装置分野でシェアが高い。東京エレクトロンは、フォトレジスト(感光剤)の塗布装置などで世界的にシェアが高い。

いずれの装置もAIチップの性能向上に必要だ。それが生成AIの能力向上を支える。“マグニフィセント・セブン”の向こうを張る形で“セブン・サムライ”を選択し、うち4社が半導体製造装置関連分野であることに相応の説得力はある。

■日本独自のビジネスモデルが注目されている

2つ目は、自動車だ。ゴールドマンはわが国最大企業であり、1990年代以降の日本経済を支えたトヨタグループ(トヨタとスバル)を選んだ。現在の日本経済の牽引役という点で、自動車は重要とみたのだろう。

ただ、わが国の自動車メーカーに関しては不透明な部分もある。近年、トヨタは中国BYDや米テスラによるEVシフトに遅れた。中長期的に主要先進国でEVシフトは加速する可能性が高い。“全方位型(エンジン車、HV、PHV、EV、FCV)”の事業戦略をとるトヨタがグループ全体でEVシフトにどう対応するか、今後の課題の面もありそうだ。

3つ目の総合商社は、わが国独自のビジネスモデルである。三菱商事は脱炭素やデジタル化など、成長期待の高い分野で収益源を拡充している。それは、これから収益力の向上につながることが期待できる。

■成長期待が高い産業は「セブン・サムライ」以外にも

3つの分野以外にも、わが国には中長期的な成長が期待できる分野がある。これから、先端分野での米中の対立、台湾問題の緊迫化など複合的な要因が顕在化する可能性が高い。それは、ある意味で、わが国半導体産業の重要性が高まることを意味する。日本半導体産業復活の可能性は高まった。

また、わが国の企業が持つ強みを発揮できる分野がある。その代表は、超高純度(限りなく不純物が少ない)の半導体関連部材だ。主な製品にシリコン・ウエハー(半導体の基板)、回路形成の材料であるフォトレジスト(感光性材料)、基盤を磨くための研磨剤などがある。

製造したチップをケースに封入するプロセス(半導体の後工程)でも、封止剤や回路形成のための材料分野で高シェアの企業は多い。半導体の製造には、大量の水も必要だ。超純水(極端に純度の高い水)の精製を行う装置やプラント分野でも、わが国企業の競争力は高い。

■経済復活のカギは「ニッチだが、模倣が困難」

いずれも、生成AIの拡大によって、中長期的に需要増加が見込める。足許、スマホ需要の不安定さに直面しているが、コンデンサなど電子部品分野でも世界的に高い製造技術を持つ企業が多い。

半導体の関連部材や水などの精製、電子部品などの分野に共通するのは、分子レベルからより純度の高い素材の生産方法を確立したことだ。分解したくてもできないモノを製造する技術について、わが国の比較優位性は高いといえる。

製造装置、チップなどは分解し、その構造を把握することによってコピーできる。中国のファーウェイが設計開発した、回路線幅7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの5G対応チップを、中国のファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)は自力で生産した。製造装置やチップの構造をコピーできたからだ。

しかし、極限まで純度を高めた半導体の部材を分解し、構造をコピーすることは難しい。ニッチだが、模倣困難な製造技術を持つわが国の企業も、中長期的な成長が期待できる。

半導体の製造ライン
写真=iStock.com/SweetBunFactory
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SweetBunFactory

■投資の神様・バフェット氏も動いていない

わが国の株価は急速すぎるぐらいの上昇を辿ってきた。いつ利益確定の売りが出て、波乱含みの展開になってもおかしくない。米国の株式市場についても同様のことが言える。特に米国株は割高にあるとの指摘は多い。米国株が調整局面を迎えると、日本をはじめ主要国の株価は、一時的に高値波乱になるはずだ。

著名投資家であるウォーレン・バフェット氏も、相場の過熱感が高まり魅力的な投資機会は乏しいと考えているようだ。どこかの時点で、米国株の調整は避けられないかもしれない。その場合には、日本株も例外ではあり得ない。

国内では、昨年7月~9月期、10月~12月期に続き、1月~3月期のGDP(国内総生産)の成長率がマイナスになる恐れが高い。3期連続マイナス成長の中、3月か4月に、日銀がマイナス金利政策を解除するとの見方もある。

■日本株が上昇する余地はまだある

また、中東の地政学リスク次第で原油価格が上昇し、世界的に景気の減速とインフレ懸念が高まる恐れもある。11月の米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が再選される可能性も、株価調整のきっかけになるかもしれない。

一方、中長期的に、わが国の株価は一段と上昇する可能性はある。熊本県でのTSMCの工場建設に引き寄せられ、内外の半導体メーカー、製造装置メーカーなどが対日直接投資を積み増した。2027年に北海道でラピダスは回路線幅2ナノメートルの半導体量産を開始する予定だ。1ナノメートルのチップ生産も目指す。

わが国で、TSMCとラピダスが世界トップの生産能力を発揮する期待は高まった。わが国の半導体産業の成長により、これまで以上に純度の高い半導体関連部材、より精密な製造装置の需要は増える。

関連分野で業績拡大期待が高まる企業は増えるだろう。わが国経済の本格的な回復の可能性も上昇する。そうした変化が明確になり、中長期的に半導体関連分野を中心に株価が一段と上昇することを期待したい。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。

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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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