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だから法隆寺は1400年も保っている…職人社長が教える「結露もシロアリも発生しない木造住宅」の特徴

プレジデントオンライン / 2024年3月7日 10時15分

出典=『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』

家づくりでは何を重視すればいいのか。職人社長を名乗る平松明展さんは「木造は燃えやすく敬遠されがちだが、耐久性を高めれば実は最もコスパのいい家になる」という――。

※本稿は、平松明展『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■断熱材をたくさん入れればいいわけではない

まったく断熱をしていない住宅はないでしょう。ただし、断熱の性能には雲泥の差があります。

断熱は外壁の断熱のほかに「床断熱」と「基礎断熱」に大別できます。前者は床の下に水平に断熱材を敷く施工で基礎と床の間は外気と同じくらいの気温のままです。後者は基礎の上側と立ち上がり部分に断熱材を敷く施工で、基礎から床までの空間が暖まります。

それぞれメリットもデメリットもありますが、両者のメリットを合わせた工法で「通気断熱WB工法」(第1回記事〈「間違った断熱」を選ぶと結露で家が腐っていく…職人社長が「外断熱を安易に選んではいけない」と断言する理由〉参照)というものがあります。WB工法と略すことが多いです。Wはdoubleで二重構造の通気層、Bはbreathで呼吸という意味。これは床断熱をしたうえで基礎の立ち上がりの外周部も断熱する工法です。

どの断熱の工法でも重要なのは、冬は暖かくて夏は涼しいこと。断熱材をたくさん入れれば冬は暖かくなっても夏は涼しくないという事態になることもあります。バランスもさることながら断熱構造と細かな施工が快適な室温を一年中確保することにつながります。

■断熱がしっかりしているかは「お風呂場」でわかる

ポイントになるのが通気性です。建物の中で空気の流れをつくりだす構造が求められます。その空気は最終的に屋外に出ていきますが、それが通気口からになります。

「形状記憶合金」というものを活用し、温度によって通気口の開け閉めが自動で行われます。寒い時期は通気口が閉まって冷たい外気を家の中に入れず、暑い時期は空気を外に逃す仕様になっているのです。もちろん雨が入ってこない構造になっています。

空気は壁の中でも流れ、これを通気層といいます。この構造による家は、施工過程でも確認できます。現場に行って建物の中に入ると、冬はほわっとした暖かさを感じ、夏はひやっとした涼しさを感じるはずです。夏場は本来外気の影響で熱が発生しているものですが、その状況で涼しさを感じたら高い断熱性だと思ってよいと思います。

あと、通気性がよいと臭いもとどまりません。断熱では気密性も重要です。これも現場を訪れて確認するとよいでしょう。気密性が確保された施工かを確かめてください。特にお風呂場は断熱がお湯の使用量に大きく影響します。お風呂場がしっかり断熱されていれば省エネ効果も高くなるわけです。

■断熱性が高くても、結露が発生したら台無し

結露対策も気になるところです。断熱性が高くなれば室内と外気の温度差が大きくなり結露が発生しやすい状況になります。それが建物の耐久性に悪影響を及ぼします。ピン(※)など鉄製の部材がウレタンフォームで被覆されているかなど、施工内容を細かく説明してくれる住宅会社は信頼できますね。

※部材を接合するために端にある穴に挿入する細い棒状の材料。

この断熱性も等級があります。少し前までは4が最高等級でしたが、現在は7まであります。等級を確認しておくだけでも性能の見極めに役立つでしょう。なお、建築物省エネ法の改正により、2025年には断熱等級4は最低基準となり、これに満たない住宅は建てることができなくなります。

断熱性が高ければ冷暖房の使用が減るので、省エネになります。さらに光熱費の助けになってくれるのが太陽光発電。業界最長の40年保証という太陽光発電パネルもあり、その期間メンテナンスもほとんど必要なく、コスパがとてもよい製品です。

【図表】太陽光発電パネル
出典=『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』

製品の品質を確保するには、当然、設置の施工技術が伴います。パネルが長持ちしても設置する屋根に損傷が出たら元も子もありませんからね。

■省エネと耐久性はセットで考える

パネルはビスで留めることがありますが、ビスは漏水のリスクを高めます。ステンレス金具で屋根の出っ張ったところをつかむようにして設置する技法を採用すると漏水リスクがかなり抑えられます。

家が完成したとき、太陽光発電もあって省エネ性が高かったとしても、設備の耐久性が低かったり、メンテナンスコストが増えたりしては、高性能の恩恵を受けられませんよね。

長期的に活用できるエネルギーシステムであるかどうかも、高性能の判断をするチェックポイントになるのです。高性能住宅は長期的にその性能を担保できるものです。その代表が長期優良住宅です。

断熱性、省エネ性を解説しましたが、耐久性への言及が不十分かもしれません。耐久性は鉄筋、木造といった構造の根幹にも関わることなので、次で詳しく解説していきます。

■「鉄骨、RC、木造」最もコスパのいい家は?

ライフプランを考えるうえで老後にどれだけお金を残しておくかは重要ですよね。それが初期費用やランニングコストなどマネープランに関わってきますが、鉄骨造、RC構造、木造建築のうち、高性能住宅という条件をつけて比較した場合は、木造建築が最もコスパのよい家といえます。

第4回記事〈「都心の安い家」より「地方の高い家」のほうが絶対に良い…家づくりのプロがそう訴える7つの理由〉で坪単価について解説しましたが、鉄骨造は70~80万円、RC構造は80万円以上、木造は60~70万円を目安と考えてください。

平松明展『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)
平松明展『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』(KADOKAWA)

これは初期費用での坪単価の比較になりますが、ランニングコストやメンテナンスコストを考慮しても木造が最も低い単価になります。

例えば断熱性でいうと鉄骨造は熱伝導性が高いため、冬は寒く、夏は暑いということを避けられません。よってエアコンの稼働率が高くなり、光熱費がとても高くなります。RC構造には鉄骨のほかにコンクリートも使われるので、より蓄熱量が多く、室温を快適にするまでに大きなエネルギーを要します。それを解消するには鉄骨造もRC構造も外断熱という工法が必須(ひっす)になります。

では木造建築のなにが不都合なのか? わかりやすくいうと木材は鉄骨やコンクリートよりも弱い建材です。よって木造は鉄骨造やRC構造に比べて地震、台風に弱い側面があります。

■「燃えやすい」木造のデメリットは解消できる

火災についてはどれが最も安全かは一概にはいえません。木材が一番燃えやすいのは確かですが、鉄骨造の場合は熱で湾曲して倒壊するまでが木造より早いという見解もあります。一方でRC構造は火災にも強いといわれています。

建物自体が重い鉄骨造とRC構造は災害に強く、耐久性の高い住宅です。特にRC構造は優れています。さらに大きな建物をつくることができ、木造ではできないデザインを選択することもできます。例えば2階にせり出した部分をつくるなど、よりこだわった外装デザインにできる住宅ともいえます。資金に余裕があり、デザインにこだわりたい人には最適かもしれません。

ただし、木造建築でもデメリットとされる部分を解消できます。つまり耐久性を高めることができるのです。これが人間の平均寿命を延ばすための要素と似ているのです【図表3】。

【図表】鉄骨造、RC構造、木造それぞれのメリットとデメリット
出典=『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』

実は木造の耐久性を高める方法についてはすでに解説しました。耐震性、断熱性の追求が耐久性を高めることにつながるのです。それぞれ等級が高い家づくりにすれば長持ちします。あとは湿気対策が重要になります。断熱性のところでも出てきたWB工法が湿気を解決してくれます。

■だから法隆寺も1400年間現存している

床断熱をしたうえで基礎の立ち上がりの外周部も断熱する工法のため、基礎から床までの空間も一定温度に保たれます。

湿度の高い夏場は、床下の通気量が多くなるため湿気がこもりません。その環境ではシロアリの発生もなし。1万戸以上が建てられてきましたが、1戸たりともシロアリは見つかっていません。メンテナンスをしやすいという特性もあります。ただし、高い施工レベルが必要であることも忘れないでください。

【図表】通気断熱WB工法
出典=『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』

実は耐震性、断熱性、耐久性はセットで考えなければなりません。それぞれが必要とする建材の組み合わせと施工方法がとても重要になるからです。

また木造の耐久性が低いとはいいきれません。法隆寺は1400年保っていますからね。重要なのは構造と施工方法。一方でローコストでつくった木造住宅はデメリットが如実に現れます。繰り返しになりますが、高性能住宅に限ってデメリットが解消され、さまざまなメリットの恩恵を受けられるのです。

法隆寺
法隆寺(写真=z tanuki/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)

補足になりますが、RC構造も漏水対策をしていないと鉄筋が錆(さ)びて耐久性が落ちる側面もあります。どの構造においても適切な手を打っておかなければ長持ちする保証はないわけです。

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平松 明展(ひらまつ・あきのぶ)
職人社長
平松建築株式会社代表取締役。建築歴23年。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能の特徴を理解する。2009年創業。会社経営を行いながらもドイツを訪れて省エネ住宅を学ぶほか、地震後の現地取材を行い、気候風土に合った家づくりの研究を行う。YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」(登録者数は9万人以上)も配信中。

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(職人社長 平松 明展)

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