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遠くの老親が寝たきりになった。どう面倒をみるか

プレジデントオンライン / 2012年12月4日 9時30分

参議院議員 舛添要一氏

■呼び寄せるべきか、遠距離介護か

介護問題はある日突然やってくる。右も左もわからず途方に暮れたくなるが、そんな暇すらない。まず相談窓口が必要。やはり最初は病院である。病院で親の病状を精査し、どのレベルの介護が必要なのか、自分の頭で納得し、それを踏まえて介護保険を利用するために市区町村に要介護認定を申請する。

私が母親の介護をしていた頃には費用の点で大変苦労した。しかし今は介護保険のおかげで介護費用の自己負担は1割と、財政的には随分楽になっている。介護認定が下りればケアマネジャーと相談して「日中は面倒が見られるからナイトケア中心に」など個々の事情に合わせ介護メニューを決めていく。介護保険を上手に使うのが第一だ。

同時に介護施設への入所手続きも早めに手を打つ。ほとんどのサラリーマンは施設を利用せざるをえないからだ。金銭に余裕があれば有料老人ホームもあるが、まず公的な施設である特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設(老健)への入所を考える。私の母の場合、平日は老健に預け、週末の土日、私が福岡に帰ったときは自宅に連れてくるパターンで介護をしてきた。

問題は特養も老健も待機児童ならぬ待機老人が多く、なかなか入れないことだ。私も母親を東京に連れてきて特養に入れようとしたが3年待ちと言われた。地方のほうがまだ見つかりやすい。いずれにせよ、半年、1年と待たされるから1日も早く申し込みをするべき。入所できるまでは民間のグループホームなどを活用してつないでおく。

遠方の親が寝たきりになった場合、呼び寄せて面倒を見るか、遠距離介護をするかが大きな選択だ。家族の状況次第だが、私が母親を東京に呼び寄せるのを断念した理由の1つは介護の先輩からこう言われたからだ。

「呼ぶのはアンタの都合。その年になって見知らぬ土地に行きたいと思うか」

実際、私の母親のような認知症の老人には環境の変化が一番よくない。呼び寄せて介護するとなれば一部屋確保しなければならないし、家人の精神的肉体的負担は計り知れない。ということで私は年間約500万円の足代がかかる遠距離介護を選んだ。仕事を西日本にシフトして交通費を節約し、新幹線での移動中もパソコンとネットをフル活用して不眠不休で仕事をこなした。

介護生活、特に遠距離介護は、いかに生活を合理化させて時間をつくるかの勝負だ。洗濯は夜に風呂の残り湯を使って洗濯機を回し、その間に新聞を読み、干してから寝る――というように、生活をガッと凝縮して1時間でも2時間でも浮かす。そうしなければ週末に介護に行く時間はつくれない。

そして、遠距離介護の手助けになってくれるのは「遠くの親戚より近くのご近所」。緊急のときには、ご近所の方に土足で上がってもらってでも助けてもらわなければならない。プライバシー云々は割り切って、介護に来た際には菓子折りを持ってご近所にあいさつ回りするぐらいのほうがいい。自分の携帯電話の番号も知らせておきたい。

また精神的な負担になる可能性があるのが親族との関係。誰が面倒を見るのか、と兄弟やその配偶者と争いになることも少なくない。特に金銭が絡むと話がややこしくなる。これを解決する1つの方法は介護を親のお金ですること。親に関わることはすべて親のお金で解決すれば、介護中に兄弟が金銭でもめることもなくなり、万一親が亡くなった場合でも遺産が残らず、醜い相続争いが起こることもない。

遠距離介護を続けていると心身がくたくたになる。そのうえ、出世もしたい、妻や子供にもいい顔をしたいでは、虻蜂取らずで自分が倒れてしまう。一番簡単なのは完璧人間をやめることだ。人間万事塞翁が馬、介護している間は出世しなくていいし、生活レベルも8割に落としていい、ぐらいのゆとりを持たなければ決して続かない。

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参議院議員 舛添要一
1948年、福岡県生まれ。東京大学卒業後、東京大学助手などを経て、東京大学助教授。2001年、参議院議員に当選、07年に再選。07年から09年まで厚生労働大臣。10年4月より新党改革代表。著書に『痴呆の母を看取って』など。

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(元東京都知事 舛添 要一 構成=小川 剛 撮影=小原孝博)

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