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「この部屋は明るすぎるので暗くしよう」ではNG…説明上手な人がやっている"数字"と"根拠"のうまい使い方

プレジデントオンライン / 2024年4月12日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kschulze

話に説得力を持たせるにはどうすればいいか。研修講師の深谷百合子さんは「相手が本当に知りたいことは何か、汲み取った上で判断材料となる事実を提示するのが重要だ」という――。

※本稿は、深谷百合子『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■説明相手のさらにその先にいる相手を意識する

ビジネスでは、説得しなければならない相手が、目の前にいないこともあります。

例えば、商談の相手が決裁権限を持たない担当者といった場合です。目の前の相手が納得してくれても、その先にいる決裁者が納得してくれなければ、商談は成立しません。

「決裁者を納得させるのは、相手(担当者)の仕事」と割り切ってしまうのではなく、「自分の代わりに決裁者に説明してくれる仲間」と考えて、説明の仕方を工夫しましょう。

具体的には、決裁者は判断を下す際に、普段からどのような質問をしてくるのか、どのような資料が好まれるのかなどといった情報を、担当者から入手しておきます。その情報をもとに、資料を準備し、「この内容を決裁者に説明してください」と伝えておくのです。

■決裁者が気にしそうなポイントを予測して準備する

私は、商談ではありませんが、コスト削減のための対策を生産部門によく提案していました。

あるとき担当者に、「この対策を行うことで、年間○○円のコスト削減ができる」といったメリットや、具体的な進め方を話して好感触を得ました。ところが、生産部門の担当者が上司に報告すると、上司から「他の工場では同様なことを行った実績はあるのか」「コスト削減ができることはわかるが、どのようなリスクがあるのか」といった質問が出てきたのです。それで、私は質問に対する回答を作り、再度生産部門の担当者に送り、先方の上司へ説明してもらいました。

このように、何度か質問のやりとりが発生すると、お互いに手間が増えて仕事が先に進みません。そればかりでなく、「十分に考えないまま仕事を進めている」という印象を決裁者に与えてしまいます。

決裁者が気にしそうな内容を事前に考えたり、以前に聞かれたことをメモに残しておき、想定問答集を作っておいたりすることで、段々と一発で提案が通るようになりました。

決裁者は担当者より視座が高いので、どんな質問をしてくるのか担当者では想像できないこともあるでしょう。そんなときは、「この提案を決裁する立場だとしたら、どんなことが気になりますか」と自分の上司に相談してみるのも、1つの手です。

■「プランAとBではどう違う?」と聞かれたらどう答えるか

「Aという商品とBという商品は、どう違うのですか?」とお客様から質問をされたとき、あなただったらどう答えますか。以前の私は、こんな風に説明していました。

「Aは○○という特徴があって、Bは□□という特徴があります」

つまり、私はAとBの違いを説明していました。

これは、聞かれたことに答えているように見えますが、実は違います。

相手が本当に知りたいことは、「自分の今持っている課題を解決する方法」です。

「AとB、どちらも解決できそうだけど、何が違うのかな」と思っているところに、AとBの違いだけを説明されても、「で、どうすれば?」と戸惑ってしまうだけです。

【図表1】お客様から「プランAとプランBはどう違うの?」と聞かれたらどう答えますか?
『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)より

■相手が抱えている課題を解決した先の未来を提示する

そういう場合は、「AとBにご関心があるのですね。どんなお困りごとを解決したいのですか?」と、相手の質問の目的を先に聞きましょう。すると上記のような「英語学習プラン」で悩んでいるお客様なら、「自分が経営する飲食店に外国人観光客が来るようになったが、何を言っているか聞き取れないし、メニューの説明もできない」などと答えてくれるでしょう。

このとき、あなたが「その悩みを解決するなら、Bのほうが合っているな」と思っても、すぐに答えてはいけません。AとBそれぞれのビフォーアフターについて事例を紹介するのです。「Aであれば英語学習を継続する習慣ができます。Bであれば英語で伝えようとする度胸がつきます」のように紹介したら、その後に「お客様の課題なら、どっちのほうがいいと思いますか?」と聞きましょう。「解決した先の未来」が見えていると、相手も選びやすくなります。

「Bかな?」と相手が返してきたら、なぜそう感じたかを聞いてみます。そのうえで、「私もBのほうが合っていると思います」と伝えると相手の納得感が高まります。

もしも、こちらはBのほうが合っていると思うのに、相手が「A」を選択したら?

やはり、その「選択の理由」を聞いて、自分と相手の解釈の「どこに違いがあるのか」を探ります。その違いを紐解いていくと、お互いに納得のいく答えが得られます。

正しいと間違っている
写真=iStock.com/triloks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/triloks

■優秀な人は判断材料となる事実を多く集めてくる

上司から見て、「優秀な部下」とはどんな部下だと思いますか。「バリバリ成果を上げる部下」「素晴らしい提案をしてくれる部下」「言われたこと以上に仕事を仕上げてくる部下」など、いろいろなイメージがあると思います。

私が会社員時代、「優秀だな」と感じた部下には、ある共通点がありました。それは、「判断材料」となる事実を数多く集めているということです。特に、トラブルが発生したときなど、その場ですぐに判断しなければならない場面では、判断に必要な材料を集めて報告してくれるので、本当に助かりました。

■「見積額はA社のほうが安いです」だけでは決められない

このやり方が活きるのは、緊急時だけではありません。新しい企画を通すとき、設備投資をするとき、仕事を受注するときなど、ビジネスのさまざまな場面で必要とされます。

「A社の見積は30万円、B社の見積は33万円でした。A社のほうが安いので、A社に発注してもいいでしょうか?」

こんな風に判断を求められても、「見積額」だけでは決められないことがありますよね。納期に違いはないのか? 支払い条件は? アフターサービスは? など、判断に必要な情報は1つとは限りません。よりよい判断をするためには、より「精度の高い事実」を集め、それらを整理することが大切です。

「A社とB社を比較しました。金額、納期、支払い条件、アフターサービスなどの項目について表にまとめました。総合的に評価するとB社がいいと考えられますが、いかがでしょうか?」

このように判断を求められたら、上司は判断しやすくなります。上司と言えども、何でもできて、何でも知っているスーパーマンではありません。上司がよりよい判断を下せるように、よりよい材料を集めましょう。

■照明の明るさを数字で示して節電活動を進めた

ビジネスに「数字」はつきものです。具体的な数字と根拠を示すと、説得力は格段に上がります。 逆に、数字も根拠もないと、説得力が乏しいので、人はなかなか動いてくれません。

私は職場の節電活動を進める仕事をしていましたが、こんな伝え方をしていたときには、活動はあまりうまく進みませんでした。

「この部屋は明るすぎます。節電のために、もう少し暗くしましょう」

話を聞く側にとっては、「明るすぎる」と言われても、今までそれが普通だったのですから、ピンとこないでしょう。また、「もう少し暗く」と言われても、具体的に何をしたらいいのかわかりませんよね。

そのことに気がついて、私は次のように、数字と根拠を示して説明してみました。

「この部屋の明るさを示す照度は600ルクスでした。法律によると、事務所で必要な照度は300ルクス以上と定められています。つまり、今の半分の明るさまで省エネすることができます」

こうすると、「明るすぎる」という根拠が明確になりますし、「職場の電灯の半分は、消しておいても大丈夫だ」ということがわかります。すると、「じゃあ、この列の電灯は1つおきに消すことにします」というように、職場の人たちが自分から動いてくれるようになりました。

さらには、「節電によって、月○○円の電気代を減らすことができます」と、金額も数字で具体的に示すと、節電に対するモチベーションはさらに高まりました。

このように、数字と根拠を示すと、説得力のある説明ができるだけでなく、相手も納得して動くことができるようになります。

■なぜ数字を示すと相手に納得感を与えられるのか

「明るい・暗い」「暑い・寒い」「うるさい・静か」など、感覚的なものは「見えないもの」です。これらは、人によって感じ方がさまざまです。自分が「明るい」と思っていても、相手は「それほど明るくない」と思っていることもあるでしょう。自分と相手との間に、このような「解釈のズレ」があると、相手に納得してもらうのは容易ではありません。

深谷百合子『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)
深谷百合子『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)

こうした「感覚的なもの」は「数字」として見える形にすると、納得感が高まります。なぜならば、「数字」は誰が見ても同じ事実だからです。

数字は計測器を使って測定することができます。

例えば、明るさを測定するなら「照度計」、温度なら「温度計」、騒々しさなら「騒音計」を使えば、「今ここで起きている現象」を「数字」で目に見える形にすることができます。「体温計」や「血圧計」といった医療用の測定器も、目には見えない体の状態を数値化してくれています。そのおかげで、私たちは今の状態が正常かどうか判断することができます。

■二酸化炭素濃度測定器を導入する店舗が増えた理由

コロナ禍では、室内の二酸化炭素濃度を測定して表示する「二酸化炭素濃度測定器」を設置しているお店が増えました。これも、室内の環境を見える形にした例です。

「感染症対策のために、換気をしています」と言葉でいくら説明しても、室内の空気の状態が見えなければ安心できない人もいたでしょう。「換気している」という言葉より、「二酸化炭素濃度」という数字で示されたほうが、説得力があります。

ビジネスの場では「事実」は「判断の材料」です。どれだけ正しい事実を集めるか、どれだけ精度の高い事実を集めるかが大事です。その「事実」を集めるのに役立つのが計測器などの、「数値化するための道具」です。

感覚ではなく数値化すると、相手に納得してもらえる説明ができるようになります。

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深谷 百合子(ふかや・ゆりこ)
合同会社グーウェン代表
大阪大学卒業後、ソニーグループ、シャープで技術者・管理職として工場の環境保全業務を行う。専門用語を噛み砕いて説明できることが評価され、工場の見学者に環境対策の説明や、テレビや新聞からの取材に対応する業務を任されるようになる。その後、中国国有企業に転職。100名を超える中国人部下の育成を任される。2020年独立。コミュニケーションをテーマに、各種メディアで活動中。

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(合同会社グーウェン代表 深谷 百合子)

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