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「ツッコミどころのない完璧な企画書」を作ってはいけない…頭のいい人がやっている「たたかれ台」の作り方

プレジデントオンライン / 2024年4月6日 11時15分

様々なシチュエーションで活用できる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/metamorworks

うまく企画を通すにはどうすればいいのか。ソフトバンクCSR本部長の池田昌人さんは「最初から『ツッコミどころのない完璧な企画書』を目指す必要はない。上司の知恵を借りて完成させるくらいのイメージでいい」という――。

※本稿は、池田昌人『仕事は1枚の表にまとめなさい。』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■いろいろな職種で使える「表で考える」方法

「表で考える」方法は、ビジネスやプライベートに限定せず、「情報を整理すること」「考えること」「議論すること」が必要なあらゆる場面で有用なものです。

仕事に関していえば、いわゆる「クリエイティブ職」「企画職」の方でなくても、例えば、

「来月の販促のプランを考えてよ」
「わが社でもDX推進室を作るぞ」
「人材不足に対して我が社はどうすべきか、案を出して」

などと言われた場合、あるいは、

「新規取引先として、ふさわしい企業を選ぶ」
「A案とB案で、どっちがより優れているかを比較検討する」
「プレゼンで、自身の考えを的確に伝える」
「外部企業との契約条件を詰めていき、よりよい落としどころを見つける」

など、様々なシチュエーションで活用できるでしょう。

ただ、具体的なシチュエーションがあったほうが、表の効力や、どのように表を使って考えていくかという方法論が、体感としてわかりやすいと思います。

そこで、ここでは仮に、「自社の新商品の体験会を上司に命じられた」として、表の作り方、表を用いた考え方を見ていくことにします。

■どんな「商品体験会」を企画するか?

例題:I部長からの業務指示

先日、ライバル会社の取締役のBさんと話をしたときに大変興味深いことを聞いたので、さっそくわが社においても実施をしてほしいと思って、君に内容を伝えるので考えてほしい。

いつも新商品が出ると、広告宣伝や店頭での展示展開、販売スタッフや関係者展開用の説明資料や動画は制作しているが、年々商品の機能が複雑化し、理解を得にくい状況が色濃くなっていると感じている。

そこでBさんから聞いたのは、商品理解とインフルエンサーを同時に構築していくために、先行商品体験会を設けて展開するというものだ。

体験会で商品を経験してもらうことはもちろん、それ以外にも特別なコンテンツを実施するなど工夫してほしい。東京だけでなく、主要都市では同様に展開して、全国で体験者を100名以上作って、各地で「限定インフルエンサー」のような呼称で活動してもらい、商品の差別化や理解促進を進めたいと思う。代理店や広告会社などの協力を得ながら効率的にかつ、効果的にできるだけ早く適切な時期にタイミングを逃さず行ってほしい。

まずは、君を中心に企画を具現化して、組織として意思決定した上で、改めて営業マーケティング戦略会議にて披露してほしい。このチャンスをしっかりと形にしてほしい。期待しているぞ。

さて、こんなシチュエーションで、あなたはどんな体験会を企画すればいいでしょうか。

■企画を考えるために1枚の表をつくる

I部長の指示を受けた企画者の「私」は、今回の目的「『限定インフルエンサー』の育成による新商品の理解促進と、広報活動による差別化への理解獲得・周知を通した商品の拡販」のためのよりよいイベントはどのようなものか、「How:詳細」についてを考えることにしました。

以下が、「私」が考えた内容です。マーカー部分が、「私」のアイデアです。

【図表1】「私」が考えた体験会・広報活動の案
出所=『仕事は1枚の表にまとめなさい。』

■表を埋めていくと考えがまとまる

マーカー部分を埋める際の思考のプロセスをたどっておきます。

「イベント」と「広報活動」のうち、まずあなたはイベント、つまり体験会から考えることにしました。

まずは対象商品です。あれこれ持っていって体験してもらうよりも、「主力商品A」だけに絞ったほうが、より体験会で印象に残るだろうと考えました。

主力商品Aは、これまでの自社顧客から評判のよかったいくつかの機能を盛り込んでおり、また細部までデザインにこだわっていると聞いています。

それらの機能や特徴を、体験会に来た人たちに知ってもらうためには、やはり触ってもらうのが一番でしょう。

ノートパソコン
写真=iStock.com/Chonlatee Sangsawang
表を埋めていくと考えがまとまる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Chonlatee Sangsawang

■具体的な要件が見えてくる

そこで、商品を展示するだけでなく、自由に触ってもらえるようなブースを作ることにしました。

また、見たり触ったりしただけではわかりにくいいくつかの機能については、パネルを作って解説をすれば、広く知ってもらうことができそうです。

なるべく多くの方に体験してもらうために、会場自体は出入り自由にして、朝9時から夜6時までの時間で、自由に来場いただく形がいいのではないかと考えました。

となれば、ショッピングモールの催事場を借りて、買い物に来た人たちから広く希望者を募るのがいいでしょう。

会場イメージは「Aショッピングモールの催事場」で、「**平米くらいあればいいか」「会場費は100万円くらいか」と見当が付いていきます。

また、運営自体は自社のメンバーで行い、イベント代理店に機材手配を、販売代理店には人員を出してもらい、運営サポートをしてもらうことで、より円滑に進むと思われます。

これで、イベントについてはだいたい見えてきました。

■今後の活動をどうすべきかも検討できる

続けて「広報活動」です。

体験会でノベルティを渡すようにして、それを周囲の人にクチコミ発信してもらうようにすれば、体験会後の広報活動にもつながるでしょう。

そのためには、発信を依頼するための資料とノベルティの準備が必要です。

また、体験会後1年以内に効果的に発信をしてくれた人には、謝礼として商品券5000円分を用意することで、活発な投稿を促せるでしょう。

■「たたかれ台」の重要性

このように書いていくと、まるで「私」が、このイベントの大部分を「勝手に決めている」印象を持つ方もいるかもしれません。

しかし、ここで書いているのは、あくまで「たたかれ台」。

指示者であるI部長に提示して実際の内容を詰めていくための「たたき台」以前の未定事項で、「ジャストアイデア」に近いものです。

実際に仕事で表を作っていく際も、このプロセスで書き込んだ「たたかれる部分」については色を変えておくなどして、決定事項とは区別しておくことをおすすめします。

グラフやチャートをレビューする2人
写真=iStock.com/:fotostorm
あくまで「たたかれ台」に過ぎない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/:fotostorm

■「部長のご意向伺い」ではダメ

「こんなふうに回りくどいことをせずに、表で情報を整理した段階でI部長に相談したほうが早いのでは?」と思われた方も、もしかしたらいるかもしれません。それは違います。

いえ、今回のI部長からの指示に、特に企画要素がなく、ただ「言われたことをやる」ことを求められているのであれば、表で情報を整理した時点で足りない情報を聞きにいくのは正解でしょう。

しかし、今回は、多分に企画要素を含んでいます。表の埋まっていない箇所や“?”の箇所について、I部長がすでに何かを決めているということはなく、言ってしまえばまだ誰も正解を持っていない状態です。

その状態で、ただ情報を整理しただけのものを持っていっても、I部長としては、「少しは頭を使え!」と思うだけです。

もう少しI部長が親切ならば、「自分で考えた上で、最良だと思う提案をしてこい!」と言ってくれるかもしれません。

実際、情報を整理しただけの表を持っていくと起こるのは、「部長のご意向のお伺い」。部長に決めてもらおう、という考えが透けて見える、責任を放棄した思考です。

■行き当たりばったりの企画になってしまう

確かにそれで決まることもあるかもしれませんが、いくらI部長が優秀なビジネスパーソンだとしても、いきなり目の前に表を出されて、「ここはどうしましょう?」と聞かれていくのでは、論理的思考はできません。

その場その場でなんの根拠もなく決めていかざるを得ないでしょう。

そうしてできた企画そのものも、行き当たりばったりなものになってしまうというのは言うまでもありません。

そうして、「部長に決めてもらった、いまいちな企画」ができてしまえば、部下としてはもう何もできません。

「部長に決めてもらった」以上、いまいちな点を見つけたとしても、今さら何か意見を言うのは難しい。

「本当にこの企画で、目的を達成できるだろうか」と疑問に思ったとしても、後の祭りです。

■「つっこみどころのない完璧な企画」を目指す必要はない

そうならないように、自分なりに「たたかれ台」を作っておく。

その際には、なるべく根拠となるデータや、なぜその提案をあなた自身がいいと思うのかを客観的に示せる資料(=効果分析表)を作っておく。

そうしてからI部長にたたいてもらうことで、よりよい提案ができるのです。

池田昌人『仕事は1枚の表にまとめなさい。』(日経BP)
池田昌人『仕事は1枚の表にまとめなさい。』(日経BP)

企画提案で目指すべきは、「つっこみどころのない完璧な企画」を自力で立てることではありません。

自分より優秀な人(ここではI部長)の知恵をうまく借りて、表の「目的」をよりよい形で達成することです。

その過程では、この「たたかれる」というプロセスは必須です。

たたかれることによって、アイデア自体が磨かれるだけでなく、あなた自身の企画力も上がっていくでしょう。

「たたかれること=悪いこと」と思わずに、ぜひやってみてください。

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池田 昌人(いけだ・まさと)
ソフトバンクCSR本部長
1974年7月12日神奈川県生まれ。法政大学経営学部卒。1997年東京デジタルホン(現・ソフトバンク)入社。営業部門、マーケティング戦略部門を経て現在CSR本部長・ESG推進室長。2011年東日本大震災発災時に、社内有志で立ち上げた震災支援プロジェクトを経て、東日本大震災復興支援財団(現・子ども未来支援財団)の立ち上げに参画し、運営に携わる。インターネットを活用した日本初の募金プラットフォーム「つながる募金(2019年累計寄付額10億円突破)」や、人型ロボット「Pepper」を使ったプログラミング教育「Pepper社会貢献プログラム(累計授業回数5万回以上/2022年3月末時点)」を全国的に展開。SB新型コロナウイルス検査センターの代表取締役社長も務める。

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(ソフトバンクCSR本部長 池田 昌人)

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