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1日7、8時間睡眠では短すぎる…脳のパフォーマンスが落ちない「理想の睡眠時間」の最終結論

プレジデントオンライン / 2024年4月13日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

毎日元気に過ごすために睡眠時間はどのくらい必要か。心理カウンセラーの下園壮太さんは「睡眠不足と脳のパフォーマンス(反応速度)の関係についてのある実験では、1日6時間睡眠の人は急激にパフォーマンスが落ち、2週間後には2日徹夜したときと同じくらいまで下がった。一方で、1日8時間の睡眠を取っている人は、日にちがたつにつれて脳のパフォーマンスが下がるが、変化は緩やかで2週間後もパフォーマンスの落ち幅は小さかった。理想の睡眠時間としては9時間だが、それだけ寝れていないと思うとエネルギーを消耗してしまうので、不眠を気に病まない“心の構え”をつくっておくことも大切だ」という――。

※本稿は、下園壮太『「がんばらない」仕組み』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■エネルギーを消費した分だけ長く寝ると疲労が回復する

エネルギーがないときというのは、いつもなら難なく、あるいはちょっと頑張っただけでクリアできる仕事で、思いどおりの結果が出せません。

自分ではそんなに疲れを感じていなくて、むしろいつも以上にものすごく頑張っているつもり。それなのに、

「頑張ろうという気持ちが空回りして、できませんでした」
「仕事を始めてすぐにイヤになって、途中で放り出してしまいました」

という状況になったとしたら、エネルギーはかなり低減しています。

この場合、一番ダメな対応は、「どうしてできないんだろう?」と、原因探しを始めてしまうことです。

そうするとつい「能力が足りないのか」「やり方がまずいのか」といったことを考え、迷路に入り込んでしまいます。

それは大きな勘違い。原因はひとえに、エネルギーの低下にあります。

唯一の改善策は一も二もなく、

「まずは寝ましょう」――。

このひとことに尽きます。

これが正しいことは、簡単な計算式でわかります。

仮に「睡眠で蓄えたエネルギー」を「10」として考えてみましょう。

日中にそれを上回る「12」のエネルギーを消費したら、キャパオーバーになり、疲労が「2」蓄積します。その日の夜は、オーバーした分だけ長く寝ないと、疲労は回復しません。

一方、日中に「8」のエネルギーしか消費しなければ、余力が「2」あることになるので、睡眠時間が前の晩より多少短くても、十分に回復することができます。

もし毎日のように、日中の消費エネルギーが睡眠によるエネルギー補給より大きい状態が続いたら、どうなるでしょうか?

当然、疲労困憊で、常にエネルギー不足の状態になります。

たとえ一日で見れば少しのマイナスであっても、それが積み重なれば、いずれ大きく体調を崩すことにもなりかねません。

「疲労回復は寝るに限る」――。

この真理をしっかりと胸に刻んでおいてください。

■「睡眠時間」と「パフォーマンス」の関係

もう一つ、睡眠不足と脳のパフォーマンス(反応速度)の関係について実験したデータを紹介しましょう。

横軸に実験日数、縦軸に脳の反応速度を取った、次の図(図表1)を見てください。

「睡眠」と「脳の反応速度」の関係
出所=『「がんばらない」仕組み』

一目瞭然で、以下のことがわかります。

・1日8時間の睡眠を取っている人は、日にちがたつにつれて脳のパフォーマンスが下がるが、変化は緩やか。2週間後もパフォーマンスの落ち幅は小さい

・1日6時間睡眠の人は、急激にパフォーマンスが落ちていく。2週間後には、2日徹夜したときと同じくらいまで下がる

ちょっと驚きませんか?

みなさんのなかには「睡眠なんて、6時間もあれば十分じゃないの?」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、こんなにもパフォーマンスが落ちるのです。

また、こうしたパフォーマンスの低下は、なかなか「自覚しにくい」というのが、非常にたちの悪いところです。

2日間の徹夜後にパフォーマンスが落ちることは、誰でも自覚できます。

けれども6時間睡眠が続くときは、落ち方が少しずつなので、さしたる不調も感じないままに疲労をためてしまうのです。

これは、ビジネスでよく使われる“ゆでガエル理論”と通ずるものがあります。

ゆでガエル理論とは、

「少しずつ起こる環境の変化に対応できないと、結果的に、後々大きな損害を被る」

という危機管理にまつわる理論のこと。

この理論は、

「カエルはいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて水温を少しずつ上げていくと逃げ出すタイミングを失い死んでしまう」

というつくり話が由来になったといわれています。

現代人の疲労もこの“ゆでガエル”と似て、気づかないうちに蓄積され、あとになって「うつ」のような大きな症状となって現れます。

そうならないためにも、可能な限り、睡眠時間を確保することが大切なのです。

■睡眠時間6時間より7時間のほうが元気が出ない理由

現代人で睡眠に関心のない人は、ごく少数派でしょう。

実際、昨今いろんなところから「眠れない」という悩みの声が寄せられているのを耳にします。

そのせいか、睡眠の「質」にこだわる人が非常に多い。

ネットやテレビなど、さまざまなメディアから情報を集めては、

「睡眠は深さがポイントらしいよ」
「眠れないときは睡眠導入剤を使ってもいいんだって」
「なかなか眠れないのは、日中の運動不足のせいかもしれない」
「寝る前は“スマホ断ち”したほうがいいみたい」

などと、“上質な睡眠”を模索するようです。

それ自体は悪いことではありませんが、多くの場合、情報に振り回されるだけで、たいした効果は得られません。

「質の良い睡眠を十分に取る」ことが強迫観念のようになって、

「いろいろ試したけど、あれもダメ、これもダメ。ちっともぐっすり眠れない」

と、“眠れない感”をいっそう強くしてしまうのです。

実際、最近の研究で、

「6時間睡眠の人と7時間睡眠の人とでは、7時間寝ている人のほうが元気がないケースがある」

ということがわかってきました。

なぜだと思いますか?

それは、7時間睡眠の人のほうが6時間睡眠の人より、たくさん眠っているにもかかわらず“睡眠不足感”が強いからです。

6時間睡眠の人は本来ちょっと睡眠不足だけれど「自分は十分寝ている」と思っている。一方、7時間睡眠の人は数字のうえでは十分寝ているのに、「自分は9時間寝ないとダメだ。2時間も足りない」と思っている。

それで7時間睡眠の人は「もっと寝なきゃ」と不安になることで、かなりのエネルギーを消耗しているわけです。

何とも皮肉な話ではありませんか。

だからこの際、睡眠に「質」を求めるのはやめましょう。

どのみち“うつの入り口”――前述の疲労レベルで「二段階」にある人は、すでに睡眠の質が低下しています。「三段階」にある人なら、なおさらです。

「一段階」にあって、ぐっすり眠れたときの質をイメージして、「眠れない」と訴えても意味がありません。

■睡眠は、もっと「ざっくり」でいい

まずは、

「いまはエネルギーが足りないから、ぐっすり眠れなくてあたりまえ」

と、不眠を気に病まない“心の構え”をつくってください。

その上で確保していただきたい理想の睡眠時間は、

9時間――。

まだ一段階に踏みとどまっている人は、8時間でもけっこうです。少なくとも「エネルギーが落ちない」よう、ケアすることができます。

とにかくエネルギーを充電するためには、ベッド(布団)で横になっている「時間」をきちんと取ることが何より重要です。

そうはいっても、時間に神経質になる必要はありません。

たとえばいままで夜中の12時、1時まで起きていた人なら、一時間ほど前倒しして「ちょっと早く寝る」よう心がければいい。

起床時間によっては9時間に足りないかもしれませんが、日中の“うたた寝時間”をカウントしてもいいし、ほかの日にたくさん寝るなどして、

「1週間でならせば、1日9時間くらい」

といった具合に、1週間で帳尻が合うようにしてもかまいません。

下園壮太『「がんばらない」仕組み』(三笠書房)
下園壮太『「がんばらない」仕組み』(三笠書房)

また「夜中に3回、トイレで目が覚めて、眠れなかった」とか「頭のなかを心配事がぐるぐる回って、ほとんど眠れなかった」といったことがあっても、その時間をマイナスしなくてOKです。

眠れなかった時間も含めての睡眠時間ととらえてください。

「眠れなかった」と思うだけで、心のエネルギーを消耗するので、このようにざっくりとした感じで睡眠をコントロールするのが一番です。

「今日も9時間寝た。睡眠時間はバッチリだ」

目覚めた瞬間に、そう自分にいい聞かせて起きる朝をかさねれば、やがて心身の疲れは軽くなっていきます。

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下園 壮太(しもぞの・そうた)
心理カウンセラー
MR(メンタル・レスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学卒業後、陸上自衛隊入隊。1996年より陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを手がける。自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士等)やレンジャー隊員等に、メンタルケア、自殺予防、コンバットストレス(惨事ストレス)コントロールについての指導、教育を行なう。2015年に退官し、現在は講演や研修、著作活動を通して独自のカウンセリング技術の普及に努めている。著書に『寛容力のコツ』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)、『「気にしすぎて疲れる」がなくなる本』(清流出版)など多数。

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(心理カウンセラー 下園 壮太)

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