子供のやる気スイッチを探してはいけない…小学校教員が勧めるズボラな子もやる気を起こす"最初の5分"儀式
プレジデントオンライン / 2024年4月18日 10時15分
※本稿は、ぞう先生『うちの子、脱・三日坊主宣言!』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■そもそも人間は継続できない生き物
まず、継続のコツを知る前にどうして人間は継続できないのかということについてお話しします。
Xでこんな質問をしました。
「あなたは継続が得意ですか? 苦手ですか?」
結果は、得意が27.5%、苦手が52%、どちらでもないが20.5%でした。
僕のアカウントは継続している人へ向けてなので、どちらかといえば熱心な方が多いのですが、どちらでもないを含めると70%以上の人が継続が苦手だと答えました。
では、なぜ人間は継続が苦手なのか? それは人間の本能に由来します。
すべての人間には、生まれたときから「生存本能」があります。文字通り生きようとする本能です。狩りの時代、食べ物が豊富にある場所にいるとき、人間は別の場所に行こうとはしませんでした。なぜなら、別の場所に行くと食べ物がないかもしれないからです。食べ物がないと飢え死にしてしまいます。さらに移動中、獣に襲われて死ぬ可能性もあります。狩りの時代に移動することは、かなりリスクが高いことだったのです。それならば、新しい場所へ行きたい欲求を抑え、食べ物がなくなるまでその場所から離れないのが得策です。
このような生存本能から人は新しいことや変化を嫌う習性がもともと兼ね備えられているのです。だから新しいこと、つまり新たに何かを始めようとするとき、脳がそれを嫌うのです。違和感として出てきます。これは誰もが当てはまります。
継続ができない理由は、新しいことや変化を嫌う習性によるものです。だから継続できないのは、あなた自身やあなたのお子さん自身が悪いわけでは決してありません。
実は人の行動のほとんどは習慣化されています。一日の流れを見てみましょう。
朝起きてから家を出るまで何をしますか? 多分ほとんどの人が毎日同じことをしているのではないでしょうか。僕の場合は、起きたらすぐトイレに行きます。その後、手と顔を洗い、白湯(さゆ)を一杯飲みます。お湯を沸かしコーヒーを入れ、朝ご飯を食べます。
このように人は習慣で行動し、新しいことや変化をできるだけしないようにインプットされているのです。だから、自分で決めた目標ややりたいことであっても、三日坊主ですぐやめてしまうのです。
このことを知っているのと知らないのとでは雲泥の差があります。継続すること自体が人間の苦手なことであるとわかっていれば、対策を立てられます。それを知らないとついつい自分には向いていないという方向に行ってしまいます。
継続することは自然にできることではありません。もしも継続が自然にできるのであれば、誰も苦労せず夢や目標を叶えているでしょう。コツコツと毎日継続できないから挫折してしまうわけです。
夢や目標が叶わないのは、途中で継続することをあきらめてしまっているからなのです。
■継続に意志力は関係ない
もう一つ、継続のコツを知る前に知ってもらいたいことがあります。それは、継続することに意志力はまったく関係ないということです。むしろ、意志力に頼っていると継続できません。
私たちは継続できなかったとき、ついこう思ってしまいます。
「なんて自分には意志力がないのだろう」
「自分がやると決めたことをできないなんてダメな奴だ」
せっかく目標を持って行動しようとしたのに、マイナスの結果として心に残ってしまいます。夢や目標を持つこと自体は、とても良いことです。ところが、こういった経験をくり返していくうちに、それらを持つことすらやめてしまうようになります。とても悲しいことです。
意志力に頼ると続かないのは、なぜでしょうか?
それは、意志力は消耗するからです。例えば、腕立て伏せをするとだんだんと腕が疲れてきて、そのうちまったく動かせなくなります。筋力と同じように、意志力も使っていると少しずつ疲れてきて弱まってくるのです。
仕事や近所付き合いなどの人間関係によるストレス、多すぎる選択疲れ、こういったものが意志力を弱らせます。だから意志力に頼っていると、どうしてもできない日が生まれてしまうのです。そこで怖いのは、できないときに自己嫌悪に陥る、もしくは継続は向いていないと思ってしまうことです。
意志力に頼らずに、継続する方法があります。それは「仕組み化」です。
仕組み化(習慣化)すると意志力やその日の気分に左右されず、継続できるようになります。歯磨きやお風呂は、毎日苦労せず自然とできますよね(ちなみに「うちの子は、歯磨きやお風呂さえさせるのに苦労する」というあなた。これらも仕組み化すれば、すぐできるようになります)。
仕組み化できれば、歯を磨くレベルでやりたいことを継続できるようになるのです。学校の宿題を一年間一度も忘れない子がクラスには必ずいます。その子たちにこんなことを聞いてみました。
「いつ、宿題やってるの?」
すると、だいたいの子はこう答えます。
「帰ったらすぐやります」
えらいっ! と言いたくなりますね。さらにどうして帰ったらすぐにやるのかを聞いてみました。するとこんな答えが返ってきました。
「すぐやれば後で自分のやりたいことがたくさんできるから」
「早く終わらせるとスッキリするから」
「気持ち的に楽になるから」
今回の、自分から進んですぐやる子の場合は、学校から帰ってからすぐ宿題をやるとなぜ良いのかを理解していました。つまり、メリットを把握していたということです。
さらに、帰ったらすぐやるということは、仕組み化の観点でも良いことなのです。
宿題をよく忘れる子にも同じことを聞いてみました。
「いつ、宿題やってるの?」
「……。」
すぐに答えることができませんでした。宿題をやる時間がバラバラなのです。やる気になったらやる、つまり意志力で宿題をやっているということです。
■やる気スイッチはない
「どうしたら子どもがやる気になりますか?」
こちらも僕が受ける多い質問の一つです。
昔、予備校のCMで、「やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう?」という歌が流れ、先生が体についているボタンをカチッと押すと、うおーー! とやる気が出てきて急に勉強を始めるというのがありました。やる気スイッチとはそんなイメージだと思います。
やる気スイッチがあれば最高ですよね。押すだけでやる気が出るのですから。しかし、残念ながらそういったスイッチはありません。いくらスイッチを押そうとしたところで、やる気のない子のやる気は出ないということです。
でも、やる気は起こすことができます。それは、「5分だけやろう」です。
脳の側坐核(そくざかく)という部分を刺激することで、やる気を起こさせます。だからやるのがしんどいときは、まず5分だけやろうと机に向かってください。側坐核に刺激が走り、気がつけば10分、20やっているなんてことがしばしばあります。
やる気とは、スイッチをカチッと押してさあスタートというわけではなく、少しやってみることで脳が刺激され、わいてくるものなのです。
小学校の授業では、はじめの5分が勝負だといわれています。いかに5分間で子どもの側坐核を刺激できるか、脳をやる気にさせるか、です。
はじめの5分間では、簡単なことをさせることが多いです。算数ならば、必ず日付、ページ数、今日のタイトル、めあてなどを書かせます。誰にでも簡単にできる作業をさせることで、側坐核を刺激します。
また、子どもが興味を引かれるような内容からスタートすることも多いです。社会科ならば、写真を見せることからスタートして、「これは何かな?」「この写真から気がついたことは何かな?」など、興味を持たせることを最初に行います。
よく冗談でわが子に、「やる気スイッチはどこにあるんや?」なんて言いますが、そういったものはそもそもなく、5分間だけやれば勝手にスイッチが入るように脳はできているのです。
また、やる気にさせるには見通しを持たせることも大事です。これをやることでどんな素敵な未来が待っているのか、それをどうやれば実現できるのか、これが見えてくるとようやくやってみようかなと思うものです。そういったものを用意することが大事ですね。
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1980年生まれ、兵庫県神戸市出身。自身も三日坊主で「いろいろなことに挑戦するが続かない」という悩みを抱えていたが、小学校教諭として20年以上、1000人を超える子どもたちを指導してきた経験と、高校・大学での水泳部の経験から、「コツを知れば、誰でも継続できるようになる」ことに気づく。2022年より、継続のコツを教えるnoteメンバーシップ「継続アカデミー」を主宰。継続して、夢や目標を叶えるかっこいい大人を増やすことを目的に、SNS投稿や配信、講演を行っている。三児の父。本書が初の書籍となる。
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(継続アカデミー塾長/現役小学校教諭 ぞう先生)
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