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「三菱UFJに成長なんてありえない」そう忠告された経営コンサルが三菱UFJの株を一気にまとめ買いした理由

プレジデントオンライン / 2024年10月10日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

物事の本質を捉えるにはどうすればいいか。経営コンサルタントの堀紘一さんは「コンサルタントに必要なクリエイティビティは、自分の頭で論理的に考えて仮説を立て、推論検証していく中で生まれていく。例えば日本を代表するような銀行である三菱UFJ銀行の株が当時400円台でPBR0.5というのが長いこと不思議で、この『何かがおかしい』という違和感から、一気にまとめて三菱UFJ銀行の株を買うと儲かった。つねに自分の頭で物事の本質を見極める姿勢が大事だ」という――。

※本稿は、堀紘一、津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■優れたコンサルはクリエイティブである

コンサルティングの本質とは何かと問われたら、それは「論理性」と「クリエイティビティ」の2つだと言える。

コンサルタントがものを考えるときは、徹底して論理的に考える。すべての結果には原因があり、その因果関係をいかに鮮やかに読み解くかが、コンサルタントの力の見せどころというわけだ。

また、コンサルタントは企業における真の課題や問題を見極める力を持っていなくてはいけない。これもまた論理的な思考力が基本になければ、見極めることが難しい。

さまざまな現象や結果を踏まえて、それに振り回されることなくその本質を見極めなければならない。それは論理的な思考による仮説設定、推論、検証といった知的作業によって、はじめて可能になる。

ところで、論理的思考力を駆使してさまざまな出来事や現象の背景に潜んでいる本質や法則性を導き出すという作業は、それ自体が非常にクリエイティブなものだ。

発見された本質や法則性によって、事業経営にしても商品開発にしても、次の段階へと進むことができる。

このクリエイティビティは、たんなる情報収集だけからは生まれてこない。どれだけたくさんの本を読み、どれだけ知識を増やしても、それだけではなかなか身につかないものだ。

やはり自分の頭で論理的に考えて仮説を立て、推論検証していく中で生まれていく。さらに言えば、そこに幾多の経験が重なり、一種の職業的な勘のようなものが生まれてくる。

■コンピュータによって考える力を失っていっている

かつてBCGのお茶室の棚には、たくさんの種類のグラフ用紙が置かれていた。そこには通常のグラフもあれば、片対数グラフや両対数グラフなどさまざまなグラフ用紙が20種類くらいあった。そのどれを選ぶかも勝負の1つだ。

間違った用紙を選ぶと、思ったようなグラフが書けず、1時間から2時間はムダにしてしまう。

だから神経がどんどん繊細になって、グラフ用紙の前に行くとどれがいいかピンと勘が働くようになってくる。早く家に帰りたい私も必死だった。

すると最初、あれだけ残業していたのが嘘のように、最短時間で思っていたようなグラフを描くことができるようになっていった。堀はいつの間にか仕事が終わっている。そんなふうに周りから不思議がられたものだ。

ちなみに、いまではこのグラフ作成もデータを打ち込む専門の人がいて、瞬時にコンピュータでいろんなグラフにして出してくれるそうだ。

私のような“カンピュータ”の出番はなくなった。いまの人たちから見れば、私のようなやり方は旧石器時代のような代物だろう。

しかし、私はいまの人たちがコンピュータによって考える力を失っていっているように思えてならない。

いずれにしても、コンサルティングには「論理的思考」と「クリエイティビティ」が不可欠だ。そして論理的思考もクリエイティビティも、日本の企業においては社内で育成することが難しい。

そう考えたとき、それを鍛えているコンサルティングを雇う意義と効用は、言うまでもなく大きいものがあるはずだ。

■「何かおかしい」という違和感が大事

コンサルタントの仕事をずっと続けていると、何かにつけて「本質は何か」というのを考える癖がついてしまう。

テレビでニュースを見ても、その報道が果たして正しいのか。もしかすると隠されている事実や真実があるのではないか、などと考えてしまうのだ。

私事で恐縮なのだが、最近は株式投資を行っている。正直、結構儲けさせてもらっている。それは簡単な理屈だ。私の目から見てどう考えても安すぎるという株があって、それを狙って投資しているだけなのだ。

長いこと不思議だと思っていたのが、三菱UFJ銀行の株だった。なぜなら日本を代表するような銀行の株価が、当時400円台だったからだ。

これはおかしい。PBRの数字も0.5ということは、乱暴な捉え方をすると三菱UFJ銀行の融資の2つに1つが不良債権ということになる。本当にそうなのか? いや、何かがおかしい……。

この「何かおかしい」という違和感が大事なのだ。

株価チャート分析
写真=iStock.com/primeimages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/primeimages

三菱UFJ銀行の融資がおかしいのか? 株価自体がおかしいのか? それともPBRがそもそもおかしいのか?

いずれにしても腑に落ちないから、ゴールドマンサックスや野村證券の人にも直接聞いてみた。

「堀さん、考えてみて下さい。三菱UFJに成長なんてあるわけないでしょう? いいですか、日本経済そのものにもはや成長はありません。

国民の数も減ってきているし、新たな産業もそれほど出てきていない。そんな国でどうして三菱UFJ銀行が成長できるのですか?」

彼らの意見は一見、正論に聞こえるが、でもやはりどこか納得できずに調べてみると、彼らの言っていることが間違っていることに気がついた。

三菱UFJ銀行はいまや国内だけでなく、タイやインドネシアといった新興国でさまざまに投資したり、貸し付けを行っている。

■つねに自分の頭で、物事の本質を見極める姿勢が大事

ちょっと考えてみてほしい。国内一般には定期預金金利で史上最安の0.1%しか利用者に還元せず、かたや新興の諸外国の最優良企業には、5%とか7%の高い金利で貸し付けしているのだ。

こんなボロい商売があるだろうか? 絶対に株価400円はおかしい。そう考えたから、一気にまとめて三菱UFJ銀行の株を買った。

当時はまだほとんど誰も見向きもしていなかったが、その後どんどん上がって、買った値段の3倍以上になった。配当利回りも10%近くあるから大変な額だ。

なんだか自慢話のようになってしまうのが嫌だけれど、言いたいのは物事を自分の頭で考えることがいかに重要かということだ。

一流の証券会社の社員が揃って言っていたことでも、先ほどのような間違いがある。専門家が言っているから、メディアが報じているから正しいと鵜呑みにしていたのではダメなのだ。

つねに自分の頭で、物事の本質を見極める姿勢が大事だということだ。

私自身はこの力をコンサルタントとして研鑽を積む中で、自ずと磨いてきたと考えている。

逆に言えば、しっかりとしたコンサルタントからコンサルティングを受ければ、本質的な視点で企業を捉え、その問題点を鋭く指摘してもらえるということだ。

企業にとって、そのメリットは計り知れないものがあると考える。

■真のコンサルティングは未来を見据えることができる

BCGの創始者であるブルース・ヘンダーソンとは、まだ自分がBCGに入る前、三菱商事に在籍していたときに、ある人を介して初めて会った。

食事をしながら話していたら、なぜかとても気に入ってもらえたようで、その縁でその後BCGに入ることになったわけだ。

この人はじつに癖がある人で、とにかく議論を吹きかけてくる。それで、うまく答えられないと、「まだまだお前は半人前だ」と一喝する。それが面倒に感じる人は離れていくのだが、私は面白がっていた。それがブルースにも通じていて、気に入ってくれたのかもしれない。

あるとき、彼が来日して軽井沢のゴルフ場を朝早くに2人で歩いていた。

突然、「ここにある若葉のどれが松の木になる若葉で、どれが雑草なのかわかるか?」と聞いてきた。「わからない」と答えると、「だから、お前はダメなんだ」と言う。「そんなものがわからなくて、どうしてコンサルタントなんてできる?」と。

また始まったなと思ったが、「そもそも植物学者じゃないのだから、そんなことはわからなくて当たり前ではないか?」と返した。

しかし、これが彼流の比喩的な教えで、「いいか、そういうことではなくて、コンサルタントは5年先のことをリアルに考えなければダメだということだ。わかるか?」と言う。

長期投資の財務データ分析
写真=iStock.com/Thapana Onphalai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thapana Onphalai

いまの時代、10年先までは技術の進歩が速くてなかなかわからない。ただ、5年先は大学や企業の研究室が何を研究し、どんな開発を行っているかを見れば、5年後に実用化されるものはかなりの確度でわかるはずだ。

いきなり若葉の話をし出すから何かと思えば、要はコンサルタントの本質を比喩的に教えてくれたのだ。

コンサルタントは、5年先まではしっかりと見据えていなければならない。しかるべき情報をキャッチして、ロジカルに推論すれば自ずと見えてくるはずなのだ。だから株の話に戻って恐縮だけれど、株式投資もまさに5年先を見据えれば、株価が上がる株が自ずと見えてくるのだ。

コンサルタンティングも本質は同じだと思う。

5年後の世界がどうなっているか? ブルースの言葉に従って未来を捉えることが、コンサルティングの真の力だと言えるだろう。

■コンサルタントにいきなり答えを聞くのは大間違い

さて、ここまでいろいろと話をしてきて、最後にそれらを一気にひっくり返してしまうようなことをお話ししようと思う。

よく、コンサルティングをしていると、企業の担当者から、「そうは言っても、堀さんはすでに答えを知っているんでしょう? もったいぶらないで教えて下さいよ」と言われることがある。

津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)
津田久資『本物のコンサルを選ぶ技術』(クロスメディア・パブリッシング)

しかし、この質問にはコンサルティングに対する大いなる誤解がある。

コンサルタントにいきなり答えを聞くのは間違っている。なぜならコンサルタントの一番の仕事とは、前にも話したように「何が問題か、問題はどこにあるか」を探すことだからだ。

その問題点がはっきりしていない段階で、いきなり答えを求められても困るのである。

ただ、正直な話をすると、私自身は依頼を受けてからクライアントに会いに行くまでに、すでに会社のどこに、どんな問題があるかについて、「仮説」を立てていることもある。

この「結論仮説」については、本書でもう少し詳しく解説しているが、コンサルティングの経験を積む中で、依頼を受けた段階で自然に結論仮説が自分の中に沸き起こってくるようになった。

ただし、いきなりそれをクライアントに開示することはない。まずはその結論仮説を検証するべく、情報収集を行う。その中で仮説が正しいと考えられるときもあれば、全く違っていることもある。

■“正解”がわかっていても教えない

大事なのは、あくまでもクライアントと一緒になって問題点を探り、見つけ出すという姿勢を貫くことだ。

最上のコンサルティングは、あたかもクライアント自身が自分の力で問題を発見し、解決策を導いたように思わせることだと考える。

だからこそ、私はどんなに自分の中で結論仮説があってそれを確信していても、それを最初からは提示しないのである。

質のよいコンサルティングは「答え」をいきなり教えてくれるのではなく、まずは「考え方」を教えてくれるものである。コンサルタントを雇おうと考える企業も人も、ぜひそのことを頭に入れておいてほしい。

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堀 紘一(ほり・こういち)
経営コンサルタント
1945年兵庫県。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストン コンサルティング グループで経営戦略策定を支援。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業のコンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。著書多数。

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津田 久資(つだ・ひさし)
戦略コンサルタント
東京大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院修了(MBA)。博報堂、ボストン コンサルティング グループ、チューリッヒ保険などで、一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。現在はコンサルティング業務を行いながら大手企業などの研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。のべ1万人以上の指導実績を持つ。著書に『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか──論理思考のシンプルな本質』『新マーケティング原論』(ともにダイヤモンド社)など、共著に『ロジカル面接術』(ワック)などがある。

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(経営コンサルタント 堀 紘一、戦略コンサルタント 津田 久資)

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