景気回復も百貨店復活に立ちはだかる3つの壁
プレジデントオンライン / 2013年3月22日 9時45分
安倍政権の誕生で、代表的な内需関連株である百貨店への復活の期待も高まっている。背景にあるのは、景気感応度の高さだ。景気が回復し、消費が拡大する局面では、高価格帯商品の取り扱いが多い百貨店業界は恩恵を受けやすいと言われてきた。他の業界と比べて百貨店業界の営業レバレッジ(売上高増減に伴ない、営業利益がどの程度連動するかを示す指標)が高いことも、期待感を後押ししている要因の1つだろう。
はたして、この波に乗り復活できるのか。私は今のところ百貨店各社への投資判断を「ニュートラル(中立)」としている。理由は3つある。
1つは、消費拡大への疑念である。安倍政権の経済政策によって日本の景気が上向いたとしても、消費拡大のためには、企業業績の回復とそれに伴う賃金の上昇を待たなければならない。
2つ目は、消費者センチメント上昇への疑念。景気が回復せずとも、回復への期待感が高まれば、消費が拡大する場合がある。だが、それを裏付けるデータが、今のところ不十分だ。
3つ目は、百貨店という業態そのものへの疑念である。今年の春には東京駅丸の内側のJPタワーの商業施設が開業、秋には八重洲口の再開発も完成する。大阪でも、梅田北ヤードの再開発地区に巨大商業施設・グランフロント大阪が4月にオープンする予定だ。需要が回復したとしても、厳しい競争が待ち受けている。
百貨店は、これらの都市型ショッピングモールへ対抗するため、各社とも旗艦店の強化を進めている。だが、その方法は異なる。三越伊勢丹ホールディングスは高級路線を継続し、百貨店らしい百貨店を追求する。一方、テナント貸しに積極的なのが大丸、松坂屋を擁するJ.フロントだ。同社の戦略は、ファッションビルを運営するパルコを買収したことにも象徴されよう。高島屋は両社の中間的なスタンスをとる。
2012年の全国百貨店売上高は既存店ベースで前年比0.3%増(日本百貨店協会調べ)。16年ぶりに前年比増となった。だが、回復を見極めるには、もう少し時間がかかりそうだ。3月6日、伊勢丹新宿本店の婦人服売り場がリニューアルされたが、その結果が本格回復を占ううえでの試金石となろう。
(UBS証券アナリスト 守屋 のぞみ 構成=プレジデント編集部)
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