年収1000万でも貯金なし! 贅沢ビンボーの心理学【2】
プレジデントオンライン / 2013年4月4日 9時45分
■薪ストーブつきの夢の家の残債は……
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【年収】1100万円【貯金】0円【家族構成】妻と子供2人
10年前に35年で組んだ住宅ローンの残債が4000万円以上ある。「定年後は起業も考えていますが、不安は残ります」。
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52歳で広告代理店勤務の水嶋秀一さん。家計を管理するのは夫である水嶋さん自身。なんと貯金通帳片手に数字を読み上げてくれた。妻に家計をまかせっきりの人が多い世代の男性では珍しいタイプだろう。
「年収は、最高時1500万円くらいあったかなあ。不況で賃金カットがあって今は1100万円ほど。月々の払いで大きいのは10年ほど前に建てたこだわりの家のローンですね。ドラマ『北の国から』の家を実際に見て、触発されて建てました。土地を含め6800万円のローンを75歳までに完済予定です」
土地を探し、インターネットで海外のドアノブや蛇口などの内装品を個人輸入し、壁を家族で塗った自慢の家。薪ストーブはこだわりの逸品だ。しかしストーブのメンテに年4万円もかかる。
「娘2人は妻の出身校に通わせて、幼稚園から私立でした。1人はもう大学生だけどね。妻は犬が好きで大型犬を2匹飼ってる。車は犬が乗るし、やっぱり手放せない」
次々繰り出されるバブル時代を象徴する「幸せのアイテム」にクラクラする。車、犬、私立に通う子供、専業主婦の妻、そして建て売りではなく、自分たちで設計した家……。プレジデント読者世代も、これが幸せのセットと信じて投資してきた人が多いのではないだろうか?
しかしこの世代はもはや「幸福の逃げ切り」は難しい。
「家を建てた頃の予定では、今ごろ年収2000万円ぐらいになってるはずだったんですよ。でも逆に、数百万も下がっちゃった。教育費が年間190万円。車の税金が3万円。月のローンは8万円。保険が夫婦で4万円。食費が全部で15万円ぐらいかな。犬のトリミング代が1回3万円。宅配の食材が3万4000円ぐらいで、娘の小遣い1万8000円……」
こんなふうに通帳から数字を拾っていくと毎月がギリギリ。専業主婦だった妻もようやく働くようになったが、年収は扶養の範囲内の130万円以内。一流大学を卒業しているのでそれなりに稼げるはずなのだが、犬や子供とすごす時間が減るので、それ以上働く気はないという。
「犬の費用とかガソリン代とか、自分で払ってほしいんだけれどね」
水嶋さんは週末、格安スーパーで買った食材で家族の食事をつくる。平日、お弁当をつくることもあり、節約の努力はしているのだ。
しかし、家計を診断した花輪さんは断言する。
「最初から生活費を全部払ってあげると、奥さんは家計の状況がわからないんですよ」
お金を貯めるコツは何よりも「家計の透明性」だと花輪さんは言う。水嶋さんもわかっているのだが……。
「妻は僕がいくら稼いでるか正確に知らないし、カードも好きに使う。最初から月いくらの範囲でとか、ルールを決めるべきだったんだよね」
結婚当初から日本の経済状況は大きく変わっている。しかし、ここまできてしまった50代男がいまさら妻に対して「養えません」とは、プライドにかけて言えないだろう。
「周りの奥さんもみんな同じような専業主婦。結婚した頃はそれが当たり前だった」
お嬢様育ちの妻に比べ、水嶋さん自身は苦労人だ。大学は奨学金で通い、返済に36歳までかかった。しかし子供には同じ苦労はさせたくない。
花輪さんは、まず家計をスリム化して住宅ローンを繰り上げ返済することを勧める。
「そのためには、やっぱり奥さんに年収300万円ぐらいは稼いでもらうのがいいと思います。外食を削って、保険も見直しましょう」
しかし、そんな「家計改革」を行うには、まず奥さんにすべての情報開示をする必要がある。それこそが、水嶋さんタイプの男性には1番の難関かもしれない。
【FPからの処方箋】住宅ローンの繰り上げ返済を
■車のレースに年間200万円
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【年収】1000万円【貯金】0円【家族構成】独身
趣味のレースに貯金が消える。「付き合いで合コンには今でもよく行くけど、何歳までに結婚とかは考えていない」。
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独身貴族の工藤瞬さん(41歳、経営者)。長身で、速水もこみちのような美形社長だ。
自分の給料は手取り60万円プラス経費。食事は大体外食でカード払いだ。カードの支払いが月20万~25万円。ローソンポイントやガソリンのカード割引もしっかりと使っている。会社関連のノンバンクへの返済が月10万円。港区に4000万円で購入したマンションは月15万円の返済だが、あと1000万円で完済する。立地がいいので賃貸に出せばローン以上の金額で貸せるという。
工藤さんは20代で起業、さぞや派手な生活を……と思いきや、コスト意識が高い。
「そこは経営者ですから。お金が貯まらないのは、年間200万円かかる自動車レースという趣味のせいなんです」
レースは30歳で始めた。子供の頃からの憧れをやっと実現できたのだ。当時はITバブルで会社の規模も今の2倍だった。
「常に危機感は感じていますよ。だから趣味を持つ代わりに、家族を持つことは封印しているのかもしれない。今でなきゃできないスポーツだから意味があるんです」
車はレース仕様のものと、私用のベンツの2台を所有、計10万円の駐車場代は経費で落とす。レース仕様車は3台目だが、相場がわかっているので、乗り換えても1台分の価格でおさまっている。すべてに対して「投資効率」を意識しているのだ。
花輪さんは「貯金がないのが気になりますが、経営者としては堅実。ノンバンクへの返済が終われば、貯金できるようになるでしょう」と分析する。アドバイスとしては、「都心に住んでいるので私用の車を手放してはどうでしょう」。
しかし、工藤さんは言う。
「車がないと、どうやってデートしたらいいのか……」
思うに、工藤さんは大きな資産を有効活用していないようだ。それは「モテ資産」である。工藤さんほどの男性なら、逆にバリバリ稼ぎ、しかも夢と生活を支えてくれるキャリア女性がいくらでも立候補してきそうなのに……。
「確かにそういう方もいました。でも僕がダメだった。毎日なんて電話できないし、女性に媚びも売れないんです」
【FPからの処方箋】車を1台に減らす
今回の取材で、「高収入貯まらん男」を生み出す元凶は「昭和の負の資産」だと実感した。「車と家を持ち、女を養う」という昭和の幸せが男性たちのクビを絞める。たとえ「働ける妻」など家庭の中に資産があっても、それを生かすには意識の転換という高い代償が必要なのだ。
(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授 白河 桃子 ファイナンシャルプランナー 花輪陽子=家計診断 澁谷高晴=撮影)
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