第19回国際エイズ会議:MSF、23ヵ国におけるHIV/エイズの取り組みの進展を発表
PR TIMES / 2012年7月27日 9時12分
2012年7月26日
プレスリリース
国境なき医師団(MSF)は7月24日に国連エイズ合同計画(UNAIDS)と合同で、調査報告書「スピードアップ・スケールアップ――より多くの患者により早く最適な治療を届ける戦略、ツール、政策を(Speed Up Scale-Up: Strategies, Tools and Policies to Get the Best HIV Treatment to More People, Sooner)」を発表した。本報告書は、HIV/エイズがまん延するサハラ砂漠以南アフリカを中心とした23ヵ国における戦略と治療方針の進展と、治療拡大のために必要な政策を提言している。今回の調査の結果、各国政府はより多くの患者に、より効果的な抗レトロウイルス薬(ARV)治療を提供する取り組みにおいて改善を果たしてきた一方、一部の国では地域に根差した革新的な戦略の実践が進んでいないことが明らかになった。
__________________________________________
UNAIDSと協力して実施した本調査では、各国のARV治療や母子感染予防の普及の度合い、医師の代わりに看護師がHIVおよび結核の治療開始を決定できる権限の有無、ARV治療を提供している保健医療施設の数など、合計で25の指標に注目している。看護師による治療の開始は、現地の保健医療システムへの負担を軽減し、治療の地域社会への定着を促すために不可欠である。
本報告書の主な調査結果は以下である:
・HIV/エイズ治療が必要な人のうち、ARV治療を受けている割合は調査を実施した23ヵ国中11ヵ国で60%以上だが、6ヵ国では依然として30%程度にとどまっている。
・母子感染予防の普及率は6ヵ国で80%を超えるが、8ヵ国では50%を下回り、そのうち5ヵ国では30%にも満たない。
・データが得られた20ヵ国のうち、国内の30%以上の医療施設でARV治療が受けられるのは8ヵ国のみ。一方、レソト、マラウイ、南アフリカなどの国々では、国内の60%強の医療施設がARV治療を提供しており、治療率も高く50%を超えている。
・調査対象となったサハラ砂漠以南アフリカの18ヵ国のうち、ケニア、南アフリカ、スワジランド、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエなど11ヵ国が過去2年に治療方針を変更し、看護師にARV治療決定の資格を認めている。しかし、調査対象国の中でもHIV有病率が最も高いモザンビークは、現在も一般的な看護師にARV治療の開始決定と監督の資格を認めていない。
・全調査対象国が、世界保健機関(WHO)が推奨する忍容性の高いARVと、CD4リンパ球数が350の段階でのARV治療開始を適用しているが、一部の国では資金難で実行が遅れている。
・調査対象国23ヵ国のうち、ウイルス量検査の環境が整っているのは4ヵ国のみである。
MSFがモザンビークで実施するHIV/エイズ治療プログラムで活動するトム・デクロー医師は以下のようにまとめている。
「7月22日の国際エイズ会議で持ち上がった最も大きな問いの1つが、HIV感染を抑止するために、治療が必要なすべての人にARVの提供が可能か否かということです。会議では、有効性について盛んに議論されましたが、患者の存在が埋もれてしまってはなりません。地域レベルでの治療の実現は、患者と保健医療体制双方の利益にかなうものです。病院の外でHIV/エイズ治療を行うことも、患者の生活を円滑にし、地域の保健医療体制への負担を軽減しつつ、健康を維持することも可能だと証明されています。先進国における慢性疾患治療と同様の治療モデルへと移行する時です」
MSFは患者を中心に据えたHIV/エイズの治療モデルを実践してきた。その一例として、モザンビークのテテ州では、近隣に住む人同士が6人ずつのグループに分かれ、各グループ内で、治療薬の詰め替え用容器を交代で回収している。また、南アフリカのカエリチャでは、容体の安定している患者たちが20人ずつのサポート・クラブを作り、服薬治療継続の指導を行うカウンセラーから治療を受ける。20人が健診を受ける時間は2時間足らずである。さらに、コンゴ民主共和国では、患者が自ら地域でのエイズ治療薬の配布を管理している。これらの新しい治療モデルは、MSFがUNAIDSと合同で新たに発表した報告書「HIV/エイズ:地元でより効果的な治療を――アフリカ4カ国のコミュニティにおけるARV治療の実践(Closer to Home: Delivering Antiretroviral Therapy in the Community: Experience From Four Countries in Southern Africa)」にて紹介されている。
新たな感染を予防するための対策向上も欠かせない。実践できるか否かは財源確保にかかっているが、調査対象となったいずれの国も、より忍容性の高いARV治療の提供へと方針転換している。ただ、治療管理の基準であり、先進国では日常的なウイルス量検査が普及している国は、調査対象国のうち4ヵ国に過ぎない。
MSFは現在、23ヵ国で22万人にHIV治療を提供している。
企業プレスリリース詳細へ
PRTIMESトップへ
この記事に関連するニュース
-
ガザ:ラファの医療体制崩壊で「避けられたはずの死」の脅威が迫る
PR TIMES / 2024年5月2日 12時45分
-
「パンデミック条約」に国境なき医師団が求める5つのポイント──将来のパンデミックの予防、備え、対応のために
国境なき医師団 / 2024年4月16日 12時0分
-
スーダン:戦闘開始から1年——緊急かつ迅速な人道援助の拡充を
国境なき医師団 / 2024年4月15日 19時1分
-
南スーダン:黄熱病とはしかが同時流行の危機 国境なき医師団が緊急の予防接種キャンペーンを要請
国境なき医師団 / 2024年4月8日 17時14分
-
「トイレは数百人に1つ」 不衛生な過密環境でコレラ流行の懸念──コンゴ、戦闘から逃れた人びとが直面する危機
国境なき医師団 / 2024年4月3日 17時15分
ランキング
-
1政府・日銀 “不意打ち”為替介入か 早朝に一時4円超円高に
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月2日 16時53分
-
2Googleの「約束破り」が示す検索市場の"危うさ" ヤフーへの技術提供制限で公取委が初の処分
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 8時20分
-
3あわしまマリンパーク、7月再開目指し体制刷新 元ボキャブラ芸人が新社長に【コメント全文】
ORICON NEWS / 2024年5月2日 18時48分
-
4「日本は貧乏な人が行く国」訪日客の素直な見方 「安くてコスパがいい」日本が陥っているワナ
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 13時30分
-
5「わらび餅」に外国人殺到! とろ~り伸びる進化形も、海外では専門店オープン【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月2日 21時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください