中等症の緊急入院、6割が診断に苦慮
PR TIMES / 2024年4月12日 15時45分
高齢化や「査定」の地域差など影響か
緊急入院した中等症患者の約6割は、国が定める緊急入院が必要な病態に当てはまらなかったり、医師が病状判断に迷ったりなどする患者であることが、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※1=本社・東京都新宿区、代表取締役社長・渡辺幸子)の調査で分かりました。患者の大半は複数の疾患を抱える高齢者で、多忙を極める医療現場での診断に苦慮している可能性を浮き彫りにしました。緊急入院の妥当性を各自治体がチェックする「査定」に地域差があることも、現場の判断を迷わせる要因の一つと考えられます。
重篤な患者への対応を加算で国が支援
重篤な状態の患者が救急搬送された場合、多くの検査や処置などを入院初期に行うことが求められ、医師や看護師などスタッフの負担も大きくなります。そのため、救急患者の円滑な受け入れ促進を目的に「救急医療管理加算」と呼ばれる診療報酬が設けられています。
救急医療管理加算は、国が定める重篤な状態に当てはまる重症症例を「救急医療管理加算1」、重篤な状態に準ずる症状や「その他の重篤な状態」の中等症症例を「救急医療管理加算2」の2つに分かれます。いずれも医療の質の担保や持続可能な経営を維持するため、多くの病院が同加算の算定を目指しています。
一方、2024年度の診療報酬改定では、有識者からいくつかの課題が指摘されていた「救急医療管理加算2」の算定最適化を目指して、算定基準が大幅に見直されました(文末に解説)。これを受けてGHCはこのほど、保有する約1000病院の医療ビッグデータを用いて、同加算の算定状況について分析しました(※2)。
複数疾患で詳細な病態把握が難しい場面も
分析は「救急医療管理加算2」に絞り、中でも基準が大きく見直された「その他の重篤な状態」の算定状況を調べました。分析結果によると、同加算を算定する症例の半数以上が「その他の重篤な状態」である病院が6割以上を占めました(図表1)。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46782/34/46782-34-f3343c41abc6ef70886c84efe50af6ae-960x598.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
【図表1】病院単位で国が定める重篤な状態(青)と「その他の重篤な状態」(橙)の症例割合を見える化(分析対象病院数は986施設) Copyright 2024 GLOBAL HEALTH CONSULTING All rights reserved.
これについてGHCコンサルタントの太田衛は、「『その他の重篤な状態』の中身を細かくデータで確認していくと、尿路感染症や肺炎、股関節骨折などが上位を占めており、症例の大半は高齢者と思われる(図表2)。高齢者の多くは複数の疾患を抱えており、衰弱して緊急入院が必要な場面も多く、多忙な救急医療の現場で即座に詳細な病態まで判定できないこともあるのではないか」とコメントしています。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46782/34/46782-34-7e3556a2960870a11d75101603d9f4bb-960x459.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
【図表2】「その他の重篤な状態」を理由に「救急医療管理加算2」を算定する症例の症状区分(DPCコード)の多いものから列挙 Copyright 2024 GLOBAL HEALTH CONSULTING All rights reserved.
有識者からは「地域差」「算定にあたらない」の声も
一方、太田は「診療報酬について審議する厚生労働省の諮問機関『中央社会保険医療協議会』では、有識者から『緊急入院の妥当性の「査定」で地域間に大きな差があることが影響しているのでは』であったり、『実は重篤ではなく、救急医療管理加算の算定にはならないのではないか』であったりする声もあり、こうした事情も少なからず影響しているものと思われる」としています。
各自治体で行われる救急医療管理加算の査定に関しては、「都道府県別で大きな差がある」(太田)と言われています。実際、GHCがコンサルティングするクライアントにおいても、同じ病態で救急医療管理加算を算定している病院とそうでない病院が確認されており、「地域によって大きく異なるケースが散見される」(同)。
また、救急医療管理加算の算定対象ではない症例が算定されている可能性も、かねてより有識者の間で問題視されてきました。こうしたさまざまな課題が指摘されてきたことを背景に、2024年度の診療報酬改定では、「救急医療管理加算2」を算定する症例の半数以上が「その他の重篤な状態」である病院は、支払われる報酬が半減されることになりました。
(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」の理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。http://www.ghc-j.com/
(※2)医療ビッグデータを用いたデータ分析
医療ビッグデータは、患者データを含む医療に関するさまざまなデータの総称。ここでは、包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院が作成を義務付けられている「DPCデータ」を指す。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1761病院(2023年4月時点)。GHCは1000病院以上のDPCデータを保有しており、カバー率は約6割。今回のプレスリリースは、病院経営に資するさまざまなテーマをデータで検証したレポートを掲載する「LEAP JOURNAL」(https://www.ghc-j.com/leapjournal/)の一部記事(『衝撃改定にどう対応?「救急医療管理加算2」 「その他の重篤な状態」5割以上で加算半減』参照※会員限定記事)から分析結果を抜粋した。
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