特攻に異議を唱えたのは「不死身の特攻兵」だけではなかった! もう一人の物語
PR TIMES / 2018年8月9日 12時1分
73年目の終戦の日を控えた8月8日、内外出版社から、特攻に異議を唱えて戦い続けた美濃部正少佐を描いたノンフィクション『五月の蛍』(石川真理子著)の電子書籍版が発売された。
特攻を拒否し、何度も攻撃を繰り返した特攻兵を描いた『不死身の特攻兵』(講談社現代新書/鴻上尚史著)が、昨年からベストセラーとなっているが、この本でも紹介された、特攻に異議を唱え、終戦まで戦い続けた日本兵がいたのをご存じだろうか。それは、若干29歳の美濃部正少佐。夜襲攻撃をおこなう飛行部隊『芙蓉部隊』を率いた若きリーダーだ。
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敗戦が濃厚となる中、軍部は特攻作戦を決定。「精神力」で敵を倒すことができるという非合理な作戦を命ずる上官たちに対して、その会議の席上、末席に座っていたひとりの若き現場リーダー・美濃部少佐が異を唱えた。
「ここに居合わせたお歴々は指揮官、幕僚でありながら、みずから突入する人がいません。必死尽忠と言葉では勇ましく仰せですが、敵の弾幕をどれだけくぐってきたというのですか? 失礼ながら私は回数だけでも、ここにいる方々の誰よりも多く突入してきました。この中に、一人でも先頭に立って特攻をしようという方はおられないのですか。今の戦局に、指揮官みずからが死を賭しておいでですか? 飛行機の不足を特攻戦法の理由の一つに挙げておられますが、さきの機動部隊来襲のおり、分散偽装を怠って飛行場の列戦に戦闘機を並べたまま、いたずらに焼かれた部隊のなんと多いことか。燃料不足で訓練が思うにまかせず搭乗員の練度低下を理由の一つにされていますが、指導上の創意工夫が足りないのではありませんか?」
美濃部少佐はぐるりと参謀を見舞わしてから断言しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/21817/56/resize/d21817-56-756188-2.jpg ]
「私のところでは飛行時数二〇〇時間の零戦操縦員もみな夜間洋上進撃が可能です。死を覚悟で教育し、教育される側も死を覚悟している。それくらい徹底して訓練すれば、敵戦闘機群のなかにあえなく落とされるようなことなく、敵に肉薄し死出の旅路を飾れるのです」。「もう一度言います。劣速の練習機が昼間に何千機進撃しようと、グラマン(米軍機)にかかってはバッタのごとく落とされるだけです。二〇〇〇機の練習機を特攻に駆り出すというのなら、その前に、それだけの成算があるということを、まずはここにいらっしゃる方々が、練習機に乗って攻撃してみるといいでしょう。私が零戦一機ですべて打ち落として見せます!」と。
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当時、上官に対して異議を唱えることは「抗命罪」として、命の危険すらあった行為。しかし、それを覚悟して、「指揮官には部下たちに死に場所にふさわしい戦果を与える義務がある」と、リーダーとして、非合理な攻撃を拒否し、合理的に考え戦果の挙げられる方法を訴えたのだ。
この訴えが認められ、美濃部少佐は終戦のその日まで夜襲攻撃を続け、米軍を震え上がらせたという。
誰もが冷静な判断力を失う窮地にあっても、しなやかな理性と、揺るぎない信念に基づき、愛するもののために戦った美濃部少佐。『五月の蛍』は、その美濃部少佐の人間性と勇気ある生き方を軸主軸に、芙蓉部隊の隊員たちと彼らの基地を支えた人々、そして、母や妻との愛や絆を描いたノンフィクション作品。美濃部少佐の生き方が、混迷の時代を生きる私たちに大きな勇気と生きる指針、強く生きる知恵を与えてくれる。
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ベストセラー『女子の武士道』の著者が、丹念な取材と貴重な史料をもとに描いたノンフィクション『五月の蛍』。終戦を迎えるこの夏に、当時、命を懸けて愛する者を守ろうとした人たちの心に耳を澄ませてみてはどうだろうか。
『五月の蛍』
著者:石川真理子
発売日:2018年8月8日
定価:1,600円+税
体裁:電子版
発行:内外出版社
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