西川美和監督が映画「すばらしき世界」(2/11公開)に挑んだ濃密な日々。『スクリーンが待っている』
PR TIMES / 2021年2月11日 13時15分
「すばらしき世界」のアナザーストーリーともいえる短編小説も収録!
《推薦文》
役所広司――「ニヤニヤ、クスクス、これ、立派な映画作りの教則本です」
仲野太賀――「ため息がでるほど、画には映らない想いがつまってる」
[画像: https://prtimes.jp/i/13640/1017/resize/d13640-1017-732162-0.jpg ]
「映画を作るのは小さな星を一回りする旅のよう」5年にわたる長編映画の制作過程を子細に綴る。
「ゆれる」「ディア・ドクター」などの作品で数々の映画賞を受賞し、今や日本映画界でもっとも新作が待ち望まれる監督のひとりとなった西川美和。一貫してオリジナル作品に拘ってきた著者が、初めて既存の小説をもとにした作品のメガホンを取った。
«読み終えるのを待てず、「こんな面白いものが世の中に埋もれているのは、災難だ」。そう思った。わくわくして、誰かに喋りたくて仕方がない。教えたくて仕方がない。けれど作者はすでに鬼籍に入り、紙の本は絶版。この時代、新聞のささやかな寄稿文一つで、ふたたび世間に火がつくとも思えない。題材は歴史に刻まれた大事件でもないから、誰かが後から掘り起こすきっかけすらないだろう。「でも、本当に忘れていくつもりですか? 知らないよ。知らないよ!!」と、布団の中で私一人があたふたしている。けれど、もし映画にしたら、もう一度ここに書かれたことが人に知られる機会になるかもしれない。だったら、私が、やりましょう!
「よく書き込まれた小説を映画にすることの勝機のなさ」にビビり続けてきた私は、その瞬間だけなぜかすっかり恐れを忘れていた。»
(本文より)
原作となった佐木隆三のノンフィクション小説「身分帳」との出合い、脚本執筆のために潜り込んだ婚活パーティ、一か八かの撮影現場、コロナによる編集作業の休止など、映画の制作過程の出来事が時にユーモラスに、時にアイロニカルに描かれる。
映画「すばらしき世界」(https://wwws.warnerbros.co.jp/subarashikisekai/)に挑んだ5年間の軌跡を描くエッセイのほかに、「すばらしき世界」のアナザーストーリーともいえる短編小説などを収録。
「私はこれまでオリジナルで5本の長編映画を作りましたが、他の人が書いた小説を脚色して長編に仕立てるのは初めてでした。プロの脚本家のように、長い原作の要所をつかみ、2時間の映像の設計図として再構成する訓練もしていないので、またもやズブの素人のスタート地点に立った気分でした。おぼつかない気持ちであちこち取材に出かけたり、今はなき小説のモデルを知る人や、佐木さんを知る人、服役経験がある人などから聞いた話、俳優たち、スタッフたちとの仕事についても、事細かく書いています。
映画を作るのは小さな星を一回りする旅のようだと思います。日照りにも嵐にも吹雪にも遭い、『だから映画はヤなんだよッ!』と毒づく日もあります。旅が終わると、もうへとへとにくたびれて、話題に出されるのもうんざりです。人は1本映画を監督すると3つ歳を取る、と聞いたこともあります。年に何本も撮る監督もいますが、一体何を飲んだらそんな精力がつくのでしょう。だけどしばらくぶらぶらしていると、また別の星へ旅をしてみたいと悠長なことを思うようになるからこれもふしぎです。次の星こそ、一番輝いているように思えてしまうのです。こんなことを言う柄ではないのですが、この本を読んで『映画の仕事も悪くないな』と思ってくれる若い人などがいたらそれほど嬉しいことはない気もします。こんな年寄りじみたことを言うようになってしまったのも、きっと映画のせいだと思います」(著者)
〈目次〉
まえがき
スクリーンが待っている
映画をはなれて
夢日記
蕎麦屋ケンちゃん失踪事件
[表: https://prtimes.jp/data/corp/13640/table/1017_1.jpg ]
【著者プロフィール】
西川美和(にしかわ・みわ)
1974年広島県生まれ。2002年『蛇イチゴ』で脚本・監督デビュー。以降、『ゆれる』(06)、『ディア・ドクター』(09)、『夢売るふたり』(12)、『永い言い訳』(16)と続く五作の長編映画は、いずれも本人による原案からのオリジナル作品である。著書として、小説に『ゆれる』『きのうの神様』『その日東京駅五時二十五分発』『永い言い訳』、エッセイに『映画にまつわるXについて』『遠きにありて』などがある。
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