スーパー耐久は「皆で新しい未来を目指す」…スーパー耐久未来機構に組織変更、豊田章男氏が理事長に就任
レスポンス / 2024年4月20日 21時25分
「ENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE」(スーパー耐久)開幕戦の舞台であるスポーツランドSUGO(宮城県)で4月20日、スーパー耐久機構(STO)事務局長の桑山晴美氏が、「一般社団法人 スーパー耐久未来機構(STMO)」に事業を承継し、6月より新体制で運営すると発表。記者会見には新理事長となるモリゾウこと豊田章男氏と、専務理事・事務局長となる加藤敏行氏も出席した。桑山氏は副理事長に就任する。
STOは桑山氏の夫である桑山充氏によって1991年に創設され、スーパー耐久シリーズがスタート。市販量販車をベースとした日本発祥、日本最大級の参加型レースとして歴史を重ねてきた。2013年3月に充氏が他界し、これまでレースには縁のなかった桑山氏がエントリーの取りまとめをすることになる。その時の状況を「夫の遺志を継ぐことを考え、何か分からない気持ちに押されるように『よし、やるか』と決意した」と語った。「晴美さんはお飾りでいいから、あとはこちらでやるから」と言われたこともあったそうだ。しかし、「自分ですべてをわかっていないと、このレースを成長させていくことはできない」との想いから、「まずは平たく全部を学ばせてくださいとお願い」し、自身としてはゼロからレース運営を始めた。
しばらくして気付いたのは、レース業界において、自らの考えや想いを形に表し実行に移している人があまり多くないことや様々な課題があることだ。そしてスーパー耐久に必要なのは「正しい規則を整えること」「ブランドを作ること」であると考え、この11年間、その課題を一つひとつ解決してきた。また、自動車メーカーには「スーパー耐久を開発の場として使ってもらうようお願いをしてきた」ともいう。これは生前に充氏が掲げていた同レースの意義でもある。2021年、他のクラスでは規定に該当しない車両かつ、STOが認めた開発車両が参戦できるST-Qクラスが新設され、現在ではトヨタ、スバル、マツダ、日産、ホンダが水素、合成燃料、バイオディーゼルを使用した車両で参加している。桑山氏は、「モリゾウさんに話した時には思いもしなかったが、水素エンジンという夢のある技術が試される場所になり、おかげさまでスーパー耐久は今とても良い状態にあると思っている」と話す。ST-Qクラスは着々と盛り上がりを見せ、楽しみを与えるだけでなく、自動車産業の一員として果たす役割も見えてきたという。
しかし、スーパー耐久の未来に想いを巡らせた時、「次の段階を考えなければならない。それを私一個人の小さな会社で運営していって良いのか」という風に感じるようになった。30年の歴史あるレースが守るべきことと、レースに関わる全ての人に未来を感じてもらうことを両立するためにはどうしたら良いか。そこで桑山氏が相談したのがモリゾウ氏だった。「とても純粋でまっすぐなこのレースを、歪ませることなく成長発展させていくため」に、他に思い当たる人はいなかったという。
モリゾウ氏は2019年よりスーパー耐久(当時はST-4クラス)に参戦している。桑山氏の話を受けて、「私一人であれば動きやすいのではないか」「OEM連合で引き受けてはどうかという話も出てきたが、メーカーが前面に出るのではなく業界550万人みんなで作っていくこと、車好きや運転・レース好き、そしてチューナー、メカニック、エンジニアなど多様な方々が参加できる枠組みを残して行くことが一番大切なのではないか」という考えから、今回の形に至った。
新たなスーパー耐久は「皆で新しい未来を目指していく」という意味を込め、名称を「スーパー耐久未来機構(STMO)」とした。その背景には、このレースをアジアに広げていきたいという桑山氏の想いもある。「近年、非常にクリーンで安全なレースが行われていることも、スーパー耐久の特長、ブランド力であると考えている。そういった点もアジアの方々にお伝えしていきたい」とのこと。モリゾウ氏自身もフィリピン、台湾、タイなどアジア各国で車好きたちの熱を体感してきたそうだ。今後、国外開催や海外からの参戦も考えられるとし、「このレースがあれば車好きたちが一つの仲間となり未来を作っていくことができると思う」と語った。
STMOでは、スーパー耐久の「割り勘レース」という文化(参加者が費用を出し合って参加する草の根レース)を守るため、これまで通り融通が利く体制は継続し続ける考えだ。また、ST-Qクラスのカーボンニュートラルの取り組みを押し進め、さらにアジア、世界への足がかりを作っていく。
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