「東洋一のつり橋」と呼ばれた橋は今・・・赤色がピンクに、重さ1キロの金属片が落下9年間大規模修繕なし「早期無料化の代償」か
RKB毎日放送 / 2024年4月14日 12時0分
北九州市のシンボル「若戸大橋」の老朽化が進んでいます。建設から60年を超え、安全な橋を維持していくためには定期的なメンテナンスが欠かせませんが、ここ数年、その予算が十分に投入されていたのか、疑問の声があがっています。
ライトアップされた「若戸大橋」
赤く染まった姿が夜の街に映える「若戸大橋」。2018年に通行料金が無料化されたのをきっかけにライトアップが始まりました。北九州市の象徴でもある橋は、おととし国の重要文化財に指定されました。そのシンボルカラーは赤ですが・・・
福岡市から訪れた人「ちょっとくすんでいるなと思いました。ちょっと赤くないなって」
岡垣町から訪れた人「もっと塗ったらきれいになるんやろうけど」
北九州市民「これね塗り替えるんですよ、時に。塗り替えたときはもっと赤いですよ。もうぼちぼち塗り替えても良いんじゃないかな」
橋に近づいてみるとイメージとは少し違った姿が見えてきました。
RKB今林隆史記者「真っ赤な姿が特色の若戸大橋ですが、よく見ると塗装が色落ちしている部分が多く見られます」
工業技術の粋を集め1962年に完成
1962年若戸大橋は完成した1962年当時「東洋一」と呼ばれ、工業技術の粋を集めた日本初の本格的なつり橋です。金属製のつり橋をサビから守るためには塗装の塗り替えが欠かせません。これまで断続的に塗り替え作業が続けられてきましたが、最後に行われたのは2014年。作業の空白は異例の9年間となりました。
なぜ空白期間があったのか、担当部署に聞きました。
記者「予算の投入の仕方と大規模改修の時期は適切ですか」
北九州市道路維持課楠根経年長寿命化担当課長「やはり無料化になって、2019年度から調査検討した上で、このタイミングでやるのが適切、ということで今回からやってきているといったような状況です」
25メートルの高さから1キロの金属片が落下
去年5月には、25メートルの高さから重さ1キロの金属片が落下する事故が起きました。適切な維持管理ができていれば防げた可能性があります。大規模修繕に9年間着手できなかったことについて、ある北九州市の関係者は「早期無料化の代償」と説明します。
2018年に通行料金を無料化
2018年に通行料金が無料化された若戸大橋。北橋前市長が就任前から公約に掲げ、市議会から強い要望も受けた政治的な決定でした。
北九州市北橋市長(2018年当時)「市民の長い間の強い念願を予定通り実現して、それを契機に人や企業投資の流れを呼び込んでいきます」
当時から課題として指摘されていたのが維持管理費の問題です。この時点で建設費の借金が54億円残っていました。年間13億円の通行料金は借金の返済と維持管理費に充てられていましたが、無料化でその収入が失われました。維持管理の予算確保が厳しい場合、借金返済後も料金を徴収できる「維持管理有料制度」があり、関門トンネルに活用されています。末吉市政時代に若戸大橋への導入も検討されていましたが、早期無料化でその制度の活用も不可能になりました。厳しい財政事情が続く北九州市で無料化の判断をした北橋前市長は・・・
北九州市北橋市長(2018年6月当時)「ぜひ国のほうにもですね、この道路の果たしている役割に鑑みて、適切な支援を期待をするものであります。一時的にはですね、他の維持管理の道路の維持管理の予算というものが移動することになるかもしれません」
この会見の翌月、北九州市は早期無料化に向けて「無料化後は本市が責任を持って維持補修を担い予算確保に取り組むこととしています」とする要望書を国土交通省に提出しています。市の関係者は「自分のところでやりますと宣言したようなもので、国から補助金をもらえるはずもなかった」と話します。維持管理費として北橋前市長が必要だと説明していた額は5億円でしたが…若戸大橋の維持管理費無料化以降、最近の4年間は必要とされる5億円を大きく下回る状態が続きました。借金返済が優先されたことで、大規模な修繕工事がストップしていたとみられます。担当部署はあくまで「適切だった」と説明します。
北九州市道路維持課楠根経年長寿命化担当課長「2019年度以降、ちょっと時間をかけて検討させていただいたという期間になります」
記者「予算的に不足していたわけではないのですか?
北九州市道路維持課楠根経年長寿命化担当課長「予算的にはその当時に必要な予算は組ませていただいています」
「無料化はよかったが、そのツケがまわってきた」
行財政改革を掲げ一部の予算を削減したことで市議会からやり玉に挙げられてきた武内市長ですが、若戸大橋の維持管理費は大幅に増やしました。
北九州市武内和久市長(今年2月)「若戸大橋、非常に大事なものであり、また落下物とかいった危険もありますけれども、やはりそういう問題が起きないように、しっかりとテコ入れをしてやっていかなきゃいかんということで今回予算を積ませていただいております」
市の関係者は「ギリギリのタイミングだった。これより遅くなると利子がつき工費を余計に払わないといけなくなるところだった」と説明します。
橋の専門家も「こまめにメンテナンスをする方が補修費用が少なくて済む」と指摘します。
九州工業大学(橋梁工学)高井俊和准教授「劣化が進んでから補修する場合は一般的には費用がかかるというふうに考えられていますので、早期の補修の方が費用が少なくて、補修ができるということが言えると思います」
北九州市の武内市長は、「維持・補修に対してはしっかりと予算として手当てをする」との考えを示しています。
北九州市武内和久市長「無償化にお金を使ってしまうがために若戸大橋の大規模修繕の予算が9年間全くとれてない。これによって、今どんどんどんどん若戸大橋から何かボルトが落ちたりとか老朽化の弊害が出始めています。無償化自体は良かったことかもしれませんがその後の手当をせずに9年間やってきたために、そのツケが回ってくる。こういう問題が出てきているので、そこにもしっかりと取り組んでいかないといけないと考えています」
無料化により橋の通行量は1日あたり約6000台増加。橋周辺の人口は増加傾向にあり、進出する企業も増えています。ただ、その代償としてメンテナンスを怠ったとすれば本末転倒です。先駆けて工業化し大規模な構造物が作られてきた北九州市。公共施設を維持するため課題先進地としてどのように行政が責任を持って取り組んでいくのかが問われています。
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