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ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンが語る、不滅のロック愛

Rolling Stone Japan / 2021年6月10日 18時0分

ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン

Mammoth WVH(マンモス・ダブリュー・ブイー・エイチ )のデビュー・アルバムがとても興味深い。このアーティスト名にすぐさま反応するのはヴァン・ヘイレンの熱心なリスナーたちだろう。

Mammothというのはアレックスとエディの兄弟が70年代に組んでいた、ヴァン・ヘイレンの前身にあたるバンドの名前でもある。そして、WVHという3文字が示すのはウルフギャング・ヴァン・ヘイレン。ご存じのとおり、彼の父親であるエディは昨年10月に他界。ヴァン・ヘイレンの歴史においては二代目ベーシストにあたるウルフギャングは、その最愛の父に捧げる楽曲として11月には「DISTANCE」という楽曲を発表し、それが彼自身にとってのソロ・キャリアの出発点となった。



それから約半年を経て、この6月11日に発売を迎えるのが『Mammoth WVH』というセルフ・タイトルのアルバムだ。ウルフギャングはヴァン・ヘイレンのライブ・ステージにおいて、ベース演奏のみならずバッキング・ヴォーカルでも大いに貢献していたが、実はマルチ・プレイヤーでもあり、この作品においてもヴォーカルとすべての楽器演奏を自らこなし、楽曲的には実に多様でありながらも”ロック”としか呼びようのない音楽を体現している。

今回は、そんな記念すべきデビュー・アルバムに際し、ウルフギャング自身がメールを通じてのインタビューに応えてくれることになった。アルバムに関しての質問中心でという条件付きで。当然ながらこれは今も心の傷が癒えているはずもない彼を気遣っての配慮なのだろうし、アルバムに関係ないことにばかり質問が集中することを避けるための手段でもあるのだろう。ただ、もちろん筆者自身にもそうした話を聞きたい気持ちはあったが、去る3月に30歳になったばかりの、この才能あふれる若きアーティストの実像に触れたいという欲求がそれを上回ったことを認めなくてはならない。

そして面白いことに、こちらがメールで送った質問に対し、ウルフギャングは音声で回答してきた。そのこと自体が、今現在の彼が伝えたいことをたくさん抱えている事実を物語っているようにも感じられる。以下は、そうした変則的なやりとりをもとにしたものである。


僕が子供だった頃、父がMammothの話をしてくれた

―まずはアルバム完成おめでとうございます。長年、‟あなた自身の音楽”を聴きたいと願ってきた者のひとりとして嬉しく思います。あなたご自身、こうしてアルバムが完成し、発売を待つばかりとなった現在はどのような心境ですか?

WVH:みんなと共有することを待ち望んでいた音楽を、ようやくこうして作品として届けることができるようになって、とても嬉しく思っているよ。ここしばらく、いくつかの曲を先行公開しながらその反応を見ることができたのも、とても価値のある経験になった。この先、みんながこのアルバムをフルで聴くことになるのを僕自身も楽しみにしているし、ここまで来るのには長い時間がかかったけども、そうして時間をかけたことで自分のやりたいことに集中できたし、自分の伝えたいことも明確になったうえでアルバムとして完成させることができたのは良かったと思っているよ。

―あなたがMammoth WVHという名義で活動するというニュースを知った時には、歴史を知る者のひとりとして感慨深いものがありました。このように名乗ることにした理由を改めて説明してもらえますか?

WVH:ヴァン・ヘイレンの熱心なファンの方々は知っているだろうけど、Mammothはヴァン・ヘイレンの前身にあたるバンドの名前で、父がギターを担当する3人編成のバンドだった。僕が子供だった頃、父がそのバンドの話をしてくれたことがあって、その当時から僕自身もその名前を気に入っていたので、大人になってバンドを組んだらこの名前を付けようと自分の中で決めていたんだ。そして、それがこうして現実になったというわけだよ。

―多くの人はあなたをまずベーシストとして認識したわけですが、ステージ上で披露されるバッキング・ヴォーカルの見事さにより、あなたが素晴らしい歌声の持ち主であることに気付き、のちにはマルチ・プレイヤーであることも知ることになりました。今作にも収録されている「DONT BACK DOWN」のビデオもそれを象徴しています。今回、こうしてすべての楽器を自分でプレイすることになったことにはロックダウンなどの影響も少なからずあるはずだと思いますが、それとは関係なく最初から「100%自分自身」というアルバムを作りたいという願望を持っていたのでしょうか?

WVH:そうだね。僕は最初からそのつもりでいたよ。自分ですべてを演奏できることはわかっていたから、自分だけで実際どの程度できるものなのかを試すための良い機会だと思ったし、パーソナルな挑戦でもあった。それに、実を言うと僕はデイヴ・グロールの大ファンでもあってね。彼がフー・ファイターズを立ち上げた時、最初のアルバムでは全部自分で演奏していたよね。それを知っていたから、自分でも同じことをいつかやってみたいという夢を抱き続けてきたんだ。そして結果、素晴らしい時間を過ごすことができたから、きっとまたこのやり方でやりたくなるはずだと思う。



―今作ではマイケル”エルヴィス”バスキットがプロデューサーに起用されています。彼を選んだ理由・経緯を教えてください。資料によると「リード・ヴォーカリストとしての自信を得るための手助けをしてくれた」とのことですが、具体的にはどのような貢献があったのでしょうか?

WVH:エルヴィスとは、トレモンティで活動していた当時、一緒に仕事をしたことがあってね(注:トレモンティはアルター・ブリッジのギタリスト、マーク・トレモンティがフロントを務めるバンドで、ウルフギャングは『CAUTERIZE』(2015年)、『DUST』(2016年)の2作品に参加)。当時、レコーディング中のオフ時間に自分のデモを彼に聴いてもらい、意気投合して、もっと一緒に仕事ができないかということになったんだ。そして実際、トレモンティの録音終了後、時間を作って僕自身のデモを一緒に録った。それ以来、彼とは仕事上の良い関係と友情を築いてきたんだ。以降の時間悔過の中で、彼は、僕がまだ自信を持てていなかったいくつかのことについて後押ししてくれた。演奏面ばかりではなく、ヴォーカルについてもね。僕自身、バッキング・ヴォーカルはずっとやってきたけども、いざリード・ヴォーカルをとるとなると、やっぱり不安をおぼえずにはいられなかった。そんな時、エルヴィスは僕が自信を獲得するうえでの手助けをしてくれて、不安と自信の境界線を飛び越えさせてくれたんだ。だからとても感謝しているよ。


アリス・イン・チェインズは僕にとってインスピレーションの大きな源

―楽器演奏面ではなく、ヴォーカリストとしてはどんな人たちからの影響を自負していますか?

WVH:変な話だけど、歌うことについては誰か特定のヴォーカリストに影響を受けているという自覚がないんだ。そう、他の楽器の場合とは違って、ヴォーカル面において僕を駆り立てた存在というのは特にいないと思う。

―マルチ・プレイヤーであるあなたは、各演奏パートについてはさまざまな異なるプレイヤーから影響を受けてきたはずですよね? こうして”ひとりでバンド形態の音楽を作る”というのは、ある意味、音楽ファンとしての頭の中にある”理想のオールスター・バンド”を体現するような作業でもあるのではないかと思います。あなたの妄想上の理想のバンドは、どんな顔ぶれなんでしょうか?

WVH:面白いことに、僕はまさに”夢のバンド”を結成することができたんだ。今は、彼らと一緒にツアーすることをとても楽しみにしている。その顔ぶれは、実際にジミー・キンメルのTVショウに出た時に一緒に演奏した親友たちで、YouTubeをチェックしてもらえればその時のパフォーマンスをみつけられるはずだよ。ギタリストはフランク・シドリス(ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュによるソロ・バンドの一員としても知られる)、ドラマーはギャレット・ウィットロック(トレモンティでウルフギャングと活動を共にしていた過去がある)、そしてロニー・フィアカロがベースを弾く。ツアーでは、このバンドを見られるはずだよ。

―アルバムの内容についての話に移ります。収録されている楽曲は実に多様ですね。なかでも「CIRCLES」「THE BIG PICTURE」「STONE」といったいくつかの楽曲からはアリス・イン・チェインズに通ずる匂いを感じさせられました。彼らの音楽にインスパイアされた部分というのはありますか?

WVH:もちろん。アリス・イン・チェインズは僕にとってインスピレーションの大きな源だといえるよ。初期からごく最近に至るまで、すべての作品が大好きなんだ。ことに彼らにとっての復帰作となった『BLACK GIVES WAY TO BLUE』は素晴らしいアルバムだと思っている。そして実際、素晴らしいバンドだよ。大ファンなんだ。

―ここにはハード・ロックも、かつてグランジと呼ばれたものも、モダンなロック、クラシックなロックもすべて収められています。しかも、そうした楽曲たちがお互いを殺すことなく有機的に共存していると感じます。こうしたマジックを可能にしたのは何だと思いますか?

WVH:ありがとう。それぞれの曲に応じて異なったアプローチをしながら、そうした多様な楽曲をひとつに繋げようと考えたんだ。たとえば、バンドの中心的な核となるサウンドの曲を軸としながら、その左側に進んで行くと「RESOLVE 」や「CIRCLES」、「THINK IT OVER」のようなソフトな楽曲があり、右側に行くと、「STONE」や「THE BIG PICTURE」、「HORRIBLY RIGHT」のようなヘヴィな曲がある、という具合にね。さまざまなサウンドの曲が混在してはいるけど、それらが上手く共存していると自分でも思っているし、こうした結果になったことについて満足しているよ。





とにかく「実際に演奏すること」を続けるべき

―アートワークも面白いですね。ジャケットにはマンモスが描かれることになるのかと予想していましたが、実際にそこに登場しているのは、いわばマンモス級のサイズのカニ。昔のSF小説の挿絵か何かのようでもありますが、このアートワークについて少し説明してもらえないでしょうか?

WVH:僕自身、この作品の大ファンでね。ジョン・ブロシオというアーティストによるものなんだ(注:ブロシオは1968年生まれ、アメリカのシュルレアリスム系現代画家)。原作は確か2004年か2006年に描かれたもので『Fatigue 2』というタイトルだったはずだ(注:ブロシオのオフィシャル・サイトによれば2009年の作品であるとのこと。ちなみに”fatigue”は”疲労”を意味する)。マンモスという言葉は、動物そのものよりも、その意味合い、つまり”巨大な””馬鹿デカい”といった意味で捉えたんだ。このブロシオの作品においては、普通は小さいはずのものが巨大で、それが日常生活を邪魔するさまが表現されているんだ。同時にこれは、僕自身が自分の音楽をどのように捉えたいか、ということを示してもいるよ。

―先行リリースされた楽曲のひとつである「DISTANCE」が、誰に捧げられたものであるかはもちろん把握しています。ただ、結果的にこの曲は、このパンデミック下、会いたい人にも会えない日々を過ごしてきた人たちすべてが共有できるものになっていると思います。ご自身ではどう感じていますか?

WVH:実際、この曲が誰に捧げられているかは誰の目にも明白だろうと思う。ただ、僕は、この内容に誰もがその人なりの意味を見出せるような視点でこの曲を書いたつもりだ。全体的なテーマは喪失感ということになるけれど、悲しいことにそれは誰もが感じ得るものだよね。特にこの1年のようなひどい状況において、僕たちが経験してきたことを踏まえれば、誰もが一個人としても集団のひとりとしても共感できる内容なんじゃないかと思う。

―話は変わりますが、近年において音楽は、それがロックの範疇にあるものであってもデスクトップで作られることが多くなっていて、実際には楽器が演奏できなくてもテクノロジーの助けを借りながら完成度の高い音源を作ることが可能になっています。あなたは世代的にはそうしたテクノロジーの恩恵を受けているはずですが、同時に昔ながらの”人間が演奏する”ということの大切さを知っている人でもあるはずです。実際、近頃のそうした風潮についてはどう思いますか? また、音楽家志望の子供たちに対して何か言いたいことはありますか? 
 
WVH:テクノロジーのおかげで、多くの人が好きなものを好きなように録音することができるようになったとは思う。そうした意味でテクノロジーというのは素晴らしいものだけども、そうして便利に力を貸してくれるものがあるからこそ、ナチュラルに生まれ持った能力というものを、人は失ってしまいがちなところがある。だから自分の技術を損なわずにおくためにも、今でも練習することは大事だと思っているよ。それを実際にライブでプレイできるようにするためにもね。だから僕自身は、とにかく”実際に演奏すること”を続けるべきだと思っている。


ロックとは、自分自身を楽しみ、楽しい時間を過ごすためのもの

―あなたは今年の3月で30歳になったばかりですよね。おめでとうございます。遠い昔、ロックンロールの世界では”Dont trust over thirty”なんてことが言われたものですが、ロックンロールも長い歴史を経てきて、むしろ今では逆に30代以上のためのもののように見られているような傾向もあります。そして、このアルバムは紛れもなくロック作品だと思うのですが、あなた自身の辞書でロックの意味を引くとどんなふうに書かれているのでしょう?

WVH:まずはお祝いの言葉をありがとう。実際、僕自身の目から見ても、今現在、ロックという音楽ジャンルが流行っているとは言いがたいところがある。確かにロックは、今や30代以上の人たちが好むカテゴリーになっているかもしれないね。ただ、その波はまた戻ってくはずだと思っているんだ。僕にとってのロックとは、自分自身を楽しみ、楽しい時間を過ごすためのもの。そして、僕がいちばん聴きたい音楽、いちばん好きな音楽ということになるね。

―僕自身、遠い昔、20代末期の頃には30歳になる日を1日でも先延ばしにしたいと考えていたものでした。しかし実際にそうなってみると何も変わらず、むしろ以前のままであり続けて良いのだと気付かされたものです。あなた自身はこの年齢になることについて、どのように感じていましたか? そして実際30歳になってみて、どう感じていますか?

WVH:僕もまったく同じことを感じているよ。年齢なんてものは、ただの数字でしかない。確かに、こうして実際に30歳になっている今でもその自覚がないというのは少しばかりおかしなことかもしれないし、少なくとも人間的な成熟度という意味においては、まだ自分自身では10代の頃と感覚的には同じままであるような気もする。でも実際には、僕はもう大人なんだって理解しているけどね。

―さて、今後のことを。今現在は通常のライブ活動ができにくい状況が続いていますが、今後、Mammoth WVHとしてはどのような活動展開を考えていますか? いざライブをやることになった場合、あなたはヴォーカルをとりながらどの楽器をプレイすることになるのでしょう?

WVH:これから先のことが楽しみだよね。安全が確保され、どこにでも行けるようになったならば……それは同時に、いろいろな国や地域の人たちが僕らを受け入れ得る状況になったら、という意味でもあるけども、日本に行けることをとても楽しみにしているし、日本でたくさんの人たちに観てもらえればと思っているんだ。なにしろ僕は日本の文化が大好きだからね。すごく素敵な場所だから、何度でも訪れたいと思っているよ。それからライブでは、主にギターを弾きながら歌うつもりでいる。さきほど名前を挙げた仲間たちと一緒にプレイすることになるはずだよ。

―最後に、アルバム発売を心待ちにしている日本のファンに向けてメッセージをいただけますか?

WVH:このアルバムを楽しんでもらえたら嬉しいな。僕はこのアルバム制作の過程において素晴らしい時間を過ごし、全力を尽くしてきた。これまでの人生で、何かひとつのことにこんなにも一生懸命に取り組んだことはなかったと思う。だからこそ聴いて楽しんでもらえることを願っているし、みんなの住む国に行ってライブをすることを楽しみにしているよ。





<INFORMATION>


『Mammoth WVH(マンモス ダブリュー ブイ エイチ)』
Mammoth WVH(マンモス ダブリュー ブイ エイチ)
エイベックス
6月11日発売

★デジタル
配信Linkfire(全14曲)
https://avex.lnk.to/MammothWVH-0611

★日本盤CD詳細
製品番号:AQCD-77492
POS:454211477492/8
税込価格:2,420円(税抜)2,200円
●日本盤ボーナス・トラック1曲収録(日本盤CDのみ)
●歌詞・対訳付
●初回封入特典:ジャケット・ステッカー(日本盤CD限定)

<トラックリスト>
1. Mr. Ed(ミスター・エド)
2. Horribly Right(ホリブリー・ライト)
3. Epiphany(エピファニー)
4. Dont Back Down(ドント・バック・ダウン)
5. Resolve(リゾルブ)
6. Youll Be The One(ユール・ビー・ザ・ワン)
7. Mammoth(マンモス)
8. Circles(サークルズ)
9. The Big Picture(ザ・ビッグ・ピクチャー)
10. Think It Over(シンク・イット・オーバー)
11. Youre To Blame(ユア・トゥ・ブレイム)
12. Feel(フィール)
13. Stone(ストーン)
14. Distance(ディスタンス)*ボーナス・トラック
15. Talk & Walk(トーク・アンド・ウォーク)*日本盤CDのみのボーナス・トラック

・Mammoth WVH at:
YouTube: https://youtube.com/channel/UCIzomCKpD_K71FGHvoljNFg
Twitter: https://twitter.com/MammothWVH
Instagram: https://www.instagram.com/mammothwvh/
Facebook: https://www.facebook.com/MammothWVH
Website: www.mammothwvh.com

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