WONK × 9m88 × jo0jiライブレポ 共通言語は音楽、台湾と日本をつなぐ美しい調和
Rolling Stone Japan / 2024年5月7日 12時0分
5月1日にEX THEATER ROPPONGIで開催された「WONK × 9m88 × jo0ji」のスリーマンライブ。台湾のR&B/ネオソウル系シンガーソングライターの9m88(ジョウエムバーバー)と、漁師の息子であり漁港で働きながらアーティスト活動をするjo0ji、そしてエクスペリメンタル・ソウルバンドWONK。異彩を放つ3組が、雨夜の六本木を彩った。
【写真ギャラリー】WONK × 9m88 × jo0jiライブ写真(全18点)
jo0ji(Photo by 木原隆裕)
jo0ji(Photo by 木原隆裕)
jo0ji(Photo by 木原隆裕)
最初の登場は、jo0ji。ふらりと袖から登場しライブがスタートした。今回は、WONKの江﨑文武と井上幹がプロデュースしたEP『475』収録曲を中心に6曲を披露。1曲目は「明見」。お囃子を彷彿させつつ、芝居を見ているかのようなドラマティックな展開の曲に心を掴まれる。2曲目、カントリー調のリズムに歌詞が溢れ出す「言焉」を演奏する頃には、観客がリズムに合わせて大きく体を動かしライブを楽しんでいた。曲が進むごとにステージで歌う姿から目が離せなくなり、彼の世界に引き込まれていく。MCで「≒」は、コーラスにWONKの長塚健斗を迎えていることを話しながら、高校生の頃からファンだったWONKとステージに立てることが嬉しいと喜びを噛み締めていた。Spotifyが躍進を期待する次世代アーティスト「RADAR: Early Noise 2024」にも選出されているjo0ji。約25分のステージは、その存在を観客にしっかりと刻みつけた。
9m88(Photo by 木原隆裕)
9m88(Photo by 木原隆裕)
続いて、台湾から来た9m88。台湾の若い世代に抜群の知名度を誇り、日本で暮らす若い台湾人にも知られている。Netflixの台湾ドラマにゲストボーカルとして出演したり、ファッション誌「Vogue Taiwan」に登場したりする注目の存在だ。R&B、ネオソウル、ジャズ、ヒップホップなどに影響を受け、NYのニュースクール大学(The New School)で、ジャズを主専攻した経歴を持つ。英語と中国語を曲によって使い分け、言語の壁をしなやかに乗り越える。
今回は、2023年のアルバム『SENT』収録曲「若我告訴你我愛的只是你」や、2019年のアルバム『平庸之上 Beyond Mediocrity』から「Leftlovers」、「浪費時間」などを披露。英語MCで観客とコミュニケーションを取り、和やかにライブは進んでいく。さらに、日本の歌を練習してきたと話し、とても緊張しているけれど、”頑張りです!”(この日本語は正しい?と観客に尋ね ”頑張ります!” と訂正)と言いながら、緊張の面持ちで、これから歌う曲は「丸の内サディスティック」と伝える。少し変身すると言ってメガネをかけた彼女が、リズムに合わせて軽く踊りながら、日本語で歌う姿に観客が沸く。歌い終わると彼女から安堵の笑顔が見え、それが観客との距離をより縮めたように思われた。
最後は、海外で大ブームを起こした日本の楽曲「プラスティック・ラブ」を披露。彼女がカバーした「プラスティック・ラブ」は2018年頃に話題になり、9m88というアーティストを世に知らしめる契機となった、言わば記念碑的な曲だ。限られた時間だったが、オリジナルとカバーの両面から、彼女の音楽性やパーソナリティが伝わるライブだった。
9m88(Photo by 木原隆裕)
WONKは新曲披露、アンコールで3組が共演
ラストを飾るのはWONK。彼らの登場と共に、会場の熱がもう一段階、高くなったように感じた。2020年のアルバム『EYES』から「Rollin」でスタートし、観客は音に合わせて波のように揺れる。そのまま2曲目「Fleeting Fantasy」が始まると、一瞬にして穏やかな空気が会場に流れる。曲の雰囲気がガラリと変わっても違和感は無く、心地良い空間が広がっていた。
WONK・長塚健斗(Photo by 木原隆裕)
WONK・江﨑文武(Photo by 木原隆裕)
WONK・井上幹(Photo by 木原隆裕)
WONK・荒田洸(Photo by 木原隆裕)
今回のライブでは、リリース前の新曲を聴くことができた。2023年にリリースされたシングル「Passione」の後に披露された楽曲は、静から動へ駆け上がるプレイヤーの熱量や息遣いを感じるものだった。固唾を飲んで見守っていた観客から、次第に歓声が湧き上がり、最後は拍手と大歓声が鳴り響く。そして、そのまま「FLOWERS」へと続くはずが、なんと機材トラブル。演奏を途中で中断し、コーラスやホーン無しで、メンバーが奏でる楽器とボーカルのみで披露されたが、その様子はまるでメンバーが観客を入れずに内々で演奏しているようで、個人的には非常に楽しかった。前曲での緊張感と「FLOWERS」でのトラブルが、ある意味で緩急になっていたようで、観客も滅多に経験できない出来事を楽しんでいた。
WONK × 9m88(Photo by 木原隆裕)
アンコールでは、9m88が再登場。昨年リリースのコラボ曲「Snowy Road」を披露。海外アーティストとコラボし、その曲をお互いの国で披露したいというWONKの願いが実現した。機材も無事回復し「Snowy Road」の美しいイントロのストリングスと2人の柔らかな歌声が聴こえると、会場は冬の煌めきに包み込まれた。日本と台湾で離れている2人がビデオ通話で日常を伝え合うMVも心温まる。そして最後に、jo0jiも加わり3組で「For Your Precious Love」を披露。それぞれの個性が光りながら調和する、美しい光景だった。
WONKを軸に実現した、世代や国の異なるスリーマンライブ。音楽が繋げた新しい出会いを、堪能できた素晴らしい夜だった。
【写真ギャラリー】9m88 × WONK × jo0jiライブ写真(全18点)
Photo by 木原隆裕
Photo by 木原隆裕
WONK x 9m88 x jo0jiライブ配信
2024年5月8日(水)23:59までアーカイブ視聴
配信視聴チケット:3500円
詳細:https://zaiko.io/event/363888
Spotifyセトリプレイリスト
※WONKの新曲2曲はアーカイブ配信のみでチェック可能
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