1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

知床事故2年「どこかで区切り」献花台撤去へ 事故の記憶、風化どう防ぐか

産経ニュース / 2024年4月23日 19時11分

北海道・知床沖で令和4年4月、観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)」が沈没し乗客乗員26人が死亡、行方不明となった事故から23日、2年を迎えた。これを区切りに、出港地の北海道斜里町は来月6日で献花などの受け付けを終了する。事故の記憶が薄らぐ中で風化をいかに防ぐか。地元では葛藤も生まれつつある。

「大切な人の元に戻れますように」。町役場の正面玄関にある献花台。地元住人や観光客らが持ち寄った花束や手紙、千羽鶴などが丁寧に並べられ、月命日になれば訪れる人も増える。事故直後、献花台は遺体安置所だった町の体育施設にあったが、後に役場へ移され、職員が毎日持ち回りで管理してきた。

町によると、これまでに約2600組の献花を受け付けたが、2度目の追悼式を区切りとし、翌日以降は役場の献花台を撤去。大型連休中の5月6日までは弔問客が多く訪れることを想定し、別の施設で受け付ける。

町の担当者は「どこかで区切りをつけなければならない。私たちにも葛藤はある」と話す。担当者によれば、町民や職員から献花台の前を通るたびに事故の記憶がよみがえり、「胸が痛くなる」といった声も聞かれるようになっていたという。

事故後に引き揚げた船体は現在、海上保安庁が捜査の証拠資料として保管しているが、捜査終了後の扱いは決まっていない。

運輸に絡む過去の重大事故では、航空機などの機体の一部を保存し、教訓に生かす動きもある。520人が死亡した39年前の日航ジャンボ機墜落事故では当初、日本航空が機体を廃棄する予定だったが、遺族らの要望で保存が実現。平成18年に開設した「安全啓発センター」(東京)で機体や遺品66点を展示する。

兵庫県尼崎市で17年、乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故でも、JR西日本が来年12月ごろの完成を目指し、事故車両の保存施設を整備する計画だ。同社によると、遺族らの間で賛否が分かれる一般公開の是非は結論が出ておらず、当面は社員の安全教育に生かす予定という。

知床事故で親族を失った北海道内に住む叔父(51)は「事故を思い出したくない気持ちはあるが、忘れてほしくないという思いもある」と複雑な心境を吐露した。

事故の記憶継承に詳しい金沢大の井出明教授は、知床事故の船体保存について「一義的には遺族感情に配慮すべき」と指摘した上で、「遺構は事故の風化防止という役割だけでなく、海の安全教育にも役立つ公共的な価値がある。社会全体で活用する方法を模索すべき」と提言している。

客足、回復伸び悩む

観光船沈没事故は斜里町の観光に暗い影を落とす。今年も観光船シーズンが始まったが、事故で安全への信頼が揺らぎ、客足は遠のく。3月末で廃業した運航会社は「事故が観光船事業に著しい一撃を加えた」と肩を落とした。

平成17年に町の一部を含む知床半島が世界遺産に登録されて以降、観光船は自然体験の目玉の一つとなった。町によると、昨年の観光客数は新型コロナウイルス禍前に比べ約3割減少。道内の他地域と比較しても、客足の回復は伸び悩んでいるという。

知床斜里町観光協会の事務局長、新村武志さん(57)は「事業者の廃業は地元でもショックが大きい。安全対策はアピールしているが、なかなか日本人の客足が戻らない。これが一番つらい」と打ち明けた。(白岩賢太)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください