文化財修理の京都の新拠点 候補地から後白河法皇や豊臣秀吉関連の遺構出土
産経ニュース / 2024年5月7日 18時16分
文化庁が京都での新設を目指している国立の「文化財修理センター」(仮称)の建設が模索されている京都国立博物館(京都市東山区)の敷地内から、後白河法皇の御所や豊臣秀吉が創建した寺関連の遺構が出土したことが分かった。遺構周辺の土中が湿地状態であることも判明。センター新設は文化庁の京都移転に伴う目玉事業で、文化庁は令和12年までの建設を目指しているが、今回の調査結果が今後の建設地選定に影響する可能性がある。
京都市埋蔵文化財研究所による昨年の試掘調査で判明した。出土したのは平安時代末に後白河法皇が造営した法住寺殿(ほうじゅうじどの)関係の遺構。源義仲が対立する法皇を急襲した「法住寺合戦」の舞台としても知られる。
同研究所によると今回の調査で、法住寺殿の溝状遺構と法皇の陵墓を管理する寺院時代の井戸跡が出土。溝状遺構は最大幅約3・9メートル、深さ約2・1メートル以上で、南に向かって細くなっていた。同時に出土した瓦や土器などから、12世紀後半の法住寺殿時代のものと確認された。この地では16世紀後半、豊臣秀吉が方広寺を造営しており、その際に金属を加工する鍛冶場で使われた土製機器の一部や金箔瓦(きんぱくがわら)の破片も出土した。
また東山から博物館の西に向かって流れ込む雨水の影響で、こうした遺構周辺の土中が湿地状態になっていることも分かった。試掘調査ではポンプで排水することもあったという。
文化財修理センターの新設は文化庁の京都移転を機に計画が持ち上がった目玉事業。各地に眠る文化財の修理を進め、国際的に高く評価されている日本の技術を国内外に発信し、次世代への継承や修理に使う原材料、用具の確保につなげる狙いがある。文化庁の基本構想によると、修理や調査研究体制の充実にとどまらず、人材育成や普及啓発のための機能も備えるとしている。
基本計画ではセンターの建設場所について「博物館など保存活用の現場から孤立しないことが望ましい」とされている。このため、同博物館敷地内での新設が有力視される一方、今回の調査結果や高さ制限などがマイナス要因となる可能性がある。
文化庁の担当者は「今回の調査は博物館内が建設候補地としてふさわしいのかどうかを探るためのもの。今後、専門家などの意見を聴きながら建設地を検討する」と説明した。(園田和洋)
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