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塾に預けるだけで本当に何とかなる? 親子で頑張ったのはうちだけじゃない 桜井信一  桜井信一の攻める中学受験

産経ニュース / 2024年4月20日 10時0分

今から40年ほど前、大阪に「入江塾」という超スパルタ塾が存在しました。灘高校を目指し、ラ・サール高校を滑り止めにするというとんでもない塾だったのです。

実際に灘高校50名ほどの合格者の多くが入江塾出身者という実績を持ち、入塾希望者は後を絶たなかったそうです。場所が不便なところにあったこともあり、深夜まで塾で勉強すると終電がなくなります。すると、そのまま塾に泊まる子もいたそうです。

そもそも、「学校に行く時間があれば勉強せい」という方針だったというのです。塾生は成績順に番号がつけられ、頭は丸坊主で、靴下を履かせません。野球部のような大きな黒いバッグにぎっしりと問題集を詰め込み、遠方から通ってくるのです。

あまり遠いと授業に間に合いませんから、学校を早退。そんなとことをして大丈夫なのと思ってしまいますが、この塾に「普通」は通じません。灘高校なら内申点は関係ないということで、公立高校を視野に入れていないのです。

さらに驚くことに、浪人生がいたそうです。今年ダメなら来年という塾生は、塾に住み込みだったというから恐ろしい。また、夏休みなどは合宿があったそうです。なんと風呂は週に1回。そんな暇があれば勉強せいということでしょうか。早朝に起床すると裸足で走り込みをし、食事には鰻丼が出たといいます。体作りも受験戦略のひとつだったのでしょう。

どうでしょう。我が子を預けることができるでしょうか。仮にここに預ければかなりの確率で灘かラ・サールに合格できるとして、託す勇気があるでしょうか。または必要性を感じるでしょうか。

今の中学受験界はとても中途半端なことになっていると私は思っています。大手塾に通わせて難関校に合格できるのは元から賢い子だけ。その他大勢の子の結果はとても満足できるものではないでしょう。

同じ月謝を払っているにも関わらず、そんな結果を受け止めなければいけないのです。こうなってしまう理由は、塾が普通に普通の授業をしているから。出来る子だけが伸びてくれれば合格実績は出るのですから問題ありません。

塾は怠けてしまう子のお尻を追いかけるようなことはしてくれません。多少の励ましや叱責はあるかもしれませんが、今の時代に強くは出られないでしょう。入江塾のようなことをすると大問題になります。

でも実際は、「今度こそ」「次こそは」「明日から」と言いながら、どうしても頑張れない子が多くないですか。それが普通だと思うのです。こんなに幸せに暮らしているのですから、頑張ることが苦手なのは当たり前。追い抜くなんて一番苦手なスキルでしょう。

大学受験の場合は、やや入江塾に近い場所があります。浪人生が通う医学部専門予備校と呼ばれるところ。当たり外れがあるそうですが、「やる気はあります。怠惰な自分を変えてほしい」と願い出れば、その希望通り一年中追いかけてくれるそうです。ところが問題はその金額。通塾でも600万円~800万円で、寮生となると1千万円になります。

なんと月額換算で70万円ほど。月収を超えるという人も多いでしょう。他人に託し、頑張れない子を頑張れるようにしてもらうにはこれだけの金額が必要なのです。

中学受験は、小学生がその競争に挑みます。賢い子を抜かすなんてことが普通に塾に通っていて起きるはずがありません。600万円払って託そうにもそんな塾はありません。それなら親がやるしかないと思いませんか。

私は娘を難関校に入れてみて初めて知りました。親子で頑張ったのはうちだけじゃなかった。全然珍しい話ではなかった。親が必死になって塾のサポートをし、難関校にたどり着かせているのです。仕事をしながらですから相当な苦労でしょう。親も根気がいるでしょう。でも、600万円分、800万円分と考えたらその苦労は妥当ではありませんか。

私が運営しているオンライン塾は、親が予習目的で見ている人がたくさんいます。ある程度予習してから親が必死で塾のサポートをするのです。子どもの成績の低迷は基礎からやり直さないと解決しないでしょう。

もう一度冷静になって考えてみてください。ライバルの親は無策です。次の公開模試の結果が良かったらいいなと祈るだけです。こっちは塾で習う問題ひとつひとつを練り直す。しばらく我慢すれば差が縮まると思いませんか。

入江塾にも預けられない。医学部専門予備校にも預けられない。そのまま塾に通っても多少のさざ波が起きるだけ。残る手段は親のサポートだけだと私は思います。塾は言います。「塾にお任せください」と。本当に預けるだけで何とかなるでしょうか。

筆者紹介

桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。

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