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第71回産経児童出版文化賞に9作品決まる 大賞は「小惑星・隕石 46億年の石」

産経ニュース / 2024年5月5日 5時0分

第71回産経児童出版文化賞(産経新聞社主催、フジテレビジョン、ニッポン放送後援、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物、タイヘイ協賛)が決まりました。昨年1年間に刊行された児童向けの新刊書を対象に審査を重ねた結果、次の9点を大賞、JR賞、タイヘイ賞、美術賞、産経新聞社賞、フジテレビ賞、ニッポン放送賞、翻訳作品賞に選びました。

■大賞 「ビジュアル探検図鑑 小惑星・隕石 46億年の石」三品隆司 構成・文 岩崎書店

■JR賞 「じゅげむの夏」最上一平 作 佼成出版社

■タイヘイ賞 「宿場町の一日」いわた慎二郎 作・絵 講談社

■美術賞 「なつやすみ」麻生知子 作 福音館書店

■産経新聞社賞 「ゆうやけにとけていく」ザ・キャビンカンパニー 作 小学館

■フジテレビ賞 「けものみちのにわ」水凪紅美子 作 BL出版

■ニッポン放送賞 「がっこうのてんこちゃん はじめてばかりでどうしよう!の巻」ほそかわてんてん 作 福音館書店

■翻訳作品賞「図書館がくれた宝物」ケイト・アルバス 作 櫛田理絵 訳 徳間書店

■翻訳作品賞「わたしは地下鉄です」キム・ヒョウン 文・絵 万木森玲 訳 岩崎書店

写真でたどる「石」の宇宙史 大賞に決まった三品隆司さん

受賞は夢にも思っていませんでした。編集者の方たちと喜びたいと思います。

企画から完成するまで約3年かかりました。発端は小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプルリターンに成功して大きな話題となったことです。私の中で小惑星への関心がさらに強まりました。今回、監修者で宇宙航空研究開発機構(JAXA)の吉川真先生からもご指導とともにいろいろホットな情報を伺うことができました。

監修者で天体写真家の藤井旭さんからは隕石(いんせき)にまつわる数々の逸話に加え、貴重な写真をお借りすることができました。令和4年暮れに急逝されましたが、一緒に隕石落下地点に行ったり、昔のアマチュア天文家の足跡を訪ねたりしたのも思い出深いです。藤井さんの子供向け啓蒙(けいもう)書を読んで、研究者になった方も少なくありません。藤井さんに少しでも近づけるよう、今後も図鑑の向こう側に大自然が見て取れるようなものを作っていきたいです。

関連する伝説や民俗の知識も数多く盛り込みましたが、興味を持って広く知ることは、良きアマチュアリズムだと思っています。大人にも手にとってほしいですね。

みしな・たかし 昭和28年、愛知県生まれ。科学ライター、イラストレーターとして、天文学や医学、古生物学などの図鑑や絵本の企画、執筆に携わる。

■作品選評

【大賞】「ビジュアル探検図鑑 小惑星・隕石 46億年の石」

「はやぶさ」の快挙で、イトカワなどの小惑星に注目が集まったが、児童向けの宇宙図鑑で太陽系の惑星以外に多くのページが割かれることはあまりない。本書は、マイナーな存在である小惑星、彗星(すいせい)、隕石に的を絞った大型ビジュアル図鑑。

46億年前に太陽が生まれ、周囲のガス中に無数の小さな塊(かたまり)が生まれた。それが衝突合体して地球などの惑星が誕生、残った微惑星が小惑星や彗星となった。

数億あるともいわれる小惑星の特徴や、その探査の歴史を最新の写真や図とともに説明。彗星の項では、ハレー彗星の発見史のほか、夜空に輝く尾の、塵(ちり)と氷でできた「核」の姿も眺めることができる。国内外の有名な隕石の発見の経緯も面白いし、古代エジプトのパピルスなどに記録された彗星や隕石の図版からは、古代の宇宙観が伝わってくる。

一見難解そうだが、科学ライターの文章は平明で、すっきり配された写真とぴったり合う。監修者の一人で、令和4年末に没した天体写真家・藤井旭氏の作品も観音開きページに収められている。監修、執筆、編集チームの息の合った仕事ぶりがうかがえる労作。

(東京子ども図書館理事長・張替惠子)

【JR賞】 じゅげむの夏

山間の小学校の4年生、山ちゃん、シューちゃん、かっちゃん、ぼくは子どもの頃から親友である。かっちゃんは、筋ジストロフィーという病気だが、いつも一緒にいるぼくらにとって特別な存在ではない。そのかっちゃんが、この夏休みを最高の冒険の夏にしたいと言い出した。集まった4人は、へんくつと恐れられる熊吉つぁんに会いに行き、橋から川に飛び込み、手押し車を押して樹齢千年のトチノキを探しに。わんぱく仲間のきらきらした夏の冒険だが、「もう来年になったらとべねえかもしんねえし」というかっちゃんの言葉で、この夏がかけがえのない時間であることが示される。難病ものの定番をかすりもせずに、10歳の生命を生き生きと描く物語。(日本女子大学教授・川端有子)

【タイヘイ賞】 宿場町の一日

江戸時代、旅は庶民にはかなりの出費で、今で言えば遠い外国に旅行するようなものであった。江戸時代中頃、元禄時代のように経済、文化が栄えてくると、お金をためて旅をする人が増えてきて、この絵本のように新たにはたご屋を開くところも出てくる。そんな活気づいた当時の宿場町の様子が、小さな男の子と上のお姉ちゃんが手伝う新しい小さなはたご屋を中心に描かれている。

宿場町、旅の風景、いろいろな小道具など、江戸時代の旅人の世話をする宿場町の生活が丁寧に細部にわたり、わかりやすく描かれている。はたして、この宿場町は実際のどこかの宿場町なのだろうか。お城があるので城下町の宿場町、海辺のような水辺も見える。そうすると…。(大妻女子大学教授・木下勇)

【美術賞】 なつやすみ

プール、スイカ、お祭り、夜店、花火と、夏休みを過ごす子どもの楽しさがいっぱいつまった絵本。いろいろな角度から見た絵が同じページに違和感なく混在する手法で描かれている。一般の絵本にはあまりない手法だが、複数の人物がさまざまな場所でさまざまなことをしていることがわかるし、子どもはむしろ楽しく見ることができるのではないだろうか。場面展開も多様で、観音開きの部分では、奉納神楽や50以上の夜店が並ぶ神社境内の全景を一望でき、その中で迷子になったこうた君だけではなく、こうた君を捜している家族の一人一人を見つける楽しみもある。裏表紙の子どもの絵日記や見返しの入道雲も、夏の楽しさに彩りを添えている。(翻訳家・さくまゆみこ)

【産経新聞社賞】 ゆうやけにとけていく

大分県の廃校で制作している夫婦ユニットの手になる夕暮れを味わう絵本。麦畑にたたずむ若夫婦、夕方のプールで泳ぐ子どもたち、小石を蹴るセーラー服の少女、電車の音を聞きながら犬と走る子、ストーブの前で写真アルバムを見る老女と幼い子、擦(かす)り傷をかばいながら入浴する子などが夕日とともに描かれている。「そこここで いきる ひとびとの きょういちにちの よろこびと かなしみが、ひとすじの ひかりと なって、そらに とろとろ とけていく」という言葉が、この絵本のテーマであり、書名もそこから。ジャン=フランソワ・ミレーや武井武雄へのオマージュも感じさせる絵は、従来のファンだけでなく新たな読者を獲得しそうだ。(翻訳家・さくまゆみこ)

【フジテレビ賞】 けものみちのにわ

おじいちゃんがとつぜん町から離れた山のふもとに土地を買って家を建ててしまった。おじいちゃんと気が合う5年生の風花は折あるごとにその家を泊まりがけで訪ね、そばにあるふしぎな「けものみち」の存在を知り、ゆめかうつつかさだかではない幻想的な体験をする。死んだ子どもの思いや、あちらの世界の住人との交流、大事なペットの死など、3月から翌年の2月まで、2人の不思議体験が1カ月ごとに四季折々の自然とともに描かれてゆく。そのうちに、おじいちゃんの子どもの頃の神隠し体験やおばあちゃんとの出会いなど少しずつ謎が解き明かされ、風花もあの世とこの世のあわいの体験を重ねて、生と死、人との関わりの大切さなどに気づいていく。(日本女子大学教授・川端有子)

【ニッポン放送賞】 がっこうのてんこちゃん はじめてばかりでどうしよう!の巻

テンのてんこちゃんは、初めてのことが苦手で、緊張してドキドキすると、頭の中に「どうしようオバケ」が現れる。そんなてんこちゃんが小学校へ入学し、担任の先生と9人の級友と過ごす日常を描いた5つのエピソード集。第1話は、クラスでの自己紹介の場面。自分の番になると、カーテンにくるまって隠れてしまう。しかし、級友の対応で心がほぐれて自己紹介ができる。ほかには、自分のお弁当が恥ずかしいと思ったり、窓から外を見ていろいろな発見をしたり、遠足で不安に感じたりする。

漫画家の著者の絵が楽しい。また、個性豊かな子どもたちの様子がユーモラスで、誰もがありのままでいいというメッセージが伝わる。(大阪国際児童文学振興財団理事総括専門員・土居安子)

【翻訳作品賞】 図書館がくれた宝物

1940年、第二次世界大戦中にロンドンの屋敷に住んでいた3人きょうだいの疎開経験の物語。孤児になった12歳のウィリアム、11歳のエドマンド、9歳のアンナは、弁護士の提案で、遺産を秘密にし、学童疎開をして、養子先を見つけることにする。

ところが、1つ目の家庭からは理不尽な理由で追い出され、お金目当てで引き取られた2つ目の家庭では、幼い子どもたちの世話をさせられる。3人の唯一の救いは、司書のミュラーさんがいる村の図書館だった。それぞれの個性が楽しく、村では偏見の目で見られているミュラーさんとの心の交流も印象に残る。また、読書の楽しさも伝わり、戦争時代の暮らしを知ることもできる。(大阪国際児童文学振興財団理事総括専門員・土居安子)

【翻訳作品賞】 わたしは地下鉄です

ソウルを走る地下鉄2号線。「どこかから来て、どこかへ行く」人を乗せて走る。乗客一人一人の「目には見えない物語も乗せて」。

地下鉄は知っている。猛ダッシュで飛び込んできた若い父親。かわいい盛りの子をあやしていたばかりに遅刻しそうになったことを。地下鉄は知っている。潮の香りと共に乗ってきたのは、娘と孫の家に獲(と)りたての海の幸を運ぶあのひとだ。おや、泣き虫だったあの子は2人目の子も生まれ、たくましい母親に。

地下鉄はそれぞれの道を歩いてきた靴たちも乗せて走る。そう、靴にだってドラマはある。絵は余すところなく、市民を地下鉄から切り取って絵本にした秀作。いつの間にか、わたしも乗客の一人になっていた。(作家・落合恵子)

■選考委員 川端有子(日本女子大学家政学部児童学科教授)▽土居安子(大阪国際児童文学振興財団理事総括専門員)▽落合恵子(作家、クレヨンハウス代表)▽さくまゆみこ(翻訳家)▽木下勇(大妻女子大学社会情報学部教授)▽張替惠子(東京子ども図書館理事長)▽村瀬健(フジテレビジョン編成制作局ドラマ・映画制作センター ドラマ・映画制作部部長職ゼネラルプロデューサー)▽箱崎みどり(ニッポン放送コンテンツプランニング局アナウンス室兼コンテンツプランニング部)▽河野利之(タイヘイ取締役総務部部長)▽本田誠(産経新聞東京本社編集局文化部長)

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