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ベンチ少なく、訪日客あふれカフェ満員… 休む場所ない東京都心の休日、解消策は

産経ニュース / 2024年5月4日 20時0分

京王井の頭線渋谷駅前にある「ウェーヴの広場」=4日午後、東京都渋谷区(酒井真大撮影)

大型連休中、ひと際にぎわいをみせる東京都心の商業エリア。好天に恵まれて汗ばむ陽気に一息つきたいと思っても、無料で休憩できる場所は意外なほど少ない。多くの人が集まる空間に、なぜ気軽に休めるスペースがないのか。取材を進めると、インバウンド(訪日外国人客)や景観、治安などの課題が複合的に絡み合う「ジレンマ」が浮かび上がった。

壁や柱にもたれ

「古新聞を敷いて、花壇の縁に座ることもありますよ」

JR渋谷駅(東京都渋谷区)のランドマーク、忠犬ハチ公像から数十メートル離れた歩道脇で友人を待っていた大阪府吹田市の男性会社員(63)は、こう話す。

ライブに参加するため頻繁に渋谷を訪れるが、「ベンチが少なくなっているように感じる」という。確かに、周囲には壁にもたれかかったり、柱を背もたれにしゃがみ込んだりして人を待つ姿が目立つ。

百貨店や高級ブランド店が軒を連ねる銀座(中央区)でも、電柱に寄りかかったり街路樹の柵に腰かけたりしている買い物客が目につく。

米ニューヨークから仕事で訪れたルーク・バルフォアさん(49)も歩道に立ち、友人を待っていた。「座る場所があれば快適だが、通りにベンチがないのはニューヨークも同じ。維持が難しいのと、ホームレスの居場所にしたくないのだと思う」と語った。

路上のみなど増

新型コロナウイルス禍の収束以降、渋谷駅周辺では路上飲酒などが増加。渋谷区安全対策課の担当者は「交通の妨げやゴミの放置、騒音などの問題がある」と指摘。仮に休憩場所を設置すれば、さらなる迷惑行為の温床になりかねない-。そんな思いもにじむ。

ただ、渋谷にベンチなどが少ないのは、最近始まった話でもない。

京王電鉄井の頭線渋谷駅の改札前には、「ウェーヴの広場」と名付けられた空間がある。周囲は鎖で囲われ、無数の突起物がせり出している。広場という名前とは裏腹な、人を寄せつけないオブジェだ。

東北大の五十嵐太郎教授(建築史)によると、こうした構造物が日本に登場したのは1990年代。ホームレスの排除などが目的だったという。「セキュリティー意識の増大と自己責任論の肥大化が(こうした構造物が作られるようになった)背景にある。他者を排除しているのではなく、みんなが不便になっている」と指摘する。

容量超える人出

一方、インバウンドの急増などにより、街の「収容力」を超えて人が押し寄せている、という側面もありそうだ。

例えば、渋谷のカフェでは休日の大行列は日常的な光景で、利用時間の制限を設ける店舗も少なくない。あるカフェの店長は「たくさんの人に利用してもらうために回転率を上げる必要がある」と打ち明ける。

海外に視線を転じると、公共空間づくりの差異に気づかされる。

文化人類学とデザインを組み合わせた研究を手がけ、街の「座れる場所」に着目して東京と韓国・ソウルを比較した作品を制作した武蔵野美術大の若狭風花助教は「一概には言えないが、ソウルの繁華街には座ることが想定された階段などがあり、演奏やダンスを見るために人はそこにとどまる」と説明する。

一方、渋谷や銀座での光景に見られるように「東京の人は、想定されていないところを座る場所にしてしまう『強さ』がある」とする。何を「ベンチ」とするかを、利用者側が決めている節があるという。

安らぐ場は屋上

人があふれる都心で、いかに安らぎの空間を確保するか。示唆に富むのが令和2年、渋谷駅近くに開業した複合施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」の屋上にある、渋谷区立宮下公園だ。

約1万3千平方メートルの空間には木々が植えられ、若者が芝生に寝転ぶ姿もみられる。同区公園課の担当者は「休憩機能が充実していった方が、区民や渋谷を訪れる人々にとってもいいことだ」と話す。

銀座でも、銀座三越の屋上に設けられた芝生の広場があるテラスは、飲み物を手に談笑する観光客らでにぎわう。居心地の悪い地上を離れ、建物の屋上へ-。飽和状態となっている都心の「公共空間」を考える、一つのヒントとなりそうだ。(山本玲)

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