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開業医の平均年収2530万円、病院勤務医は1479万円…それよりもすさまじい医者のアルバイト「時給」額は?

集英社オンライン / 2024年4月8日 11時0分

一般的に、医師は高給取りなイメージはあるが、具体的な平均年収まで熟知している人は少ないのではないだろうか? 医師、特に開業医についてその収入のディテールを解説した書籍『開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』より、開業医がズバリどれくらい稼いでいるのかを一部抜粋・再構成して紹介する。(サムネイル/写真はイメージです)

医師の収入はいくら?

医師の収入は、ネット検索すればすぐに分かる。たとえば、「医師」「収入」「厚労省」と打ち込んでみると、すぐに資料が出てくる。

平成18年(2006年)とちょっと古い資料だが、厚労省が勤務医の給料と開業医の収支差額を公表している。

これによると、病院勤務医の年収は、1479万円。



法人の開業医の年収は、2530万円。

個人開業医の年収(収支差額)は、2458万円。

収支差額というのは、借入金の返済やクリニックの建て替えや修繕のための準備金などを含んでいるものだという。

なお、全国の勤務医の平均年齢は43.4歳、開業医の平均年齢は59.4歳と報告されている。それはそうであろう。ベテランになってから開業するのだから。なお、2020年のデータを見たら、開業医の平均年齢は60.2歳とさらに上がっていた。なんと還暦が平均である。

前章で述べたように、大学病院の医師はアルバイトをしなければ生活が成り立たない。ぼくが所属した小児外科は大変アルバイトに厳しく、大学病院で一番プアな科と言われていた。どこの科とは書かないが、医局員がアルバイトをしまくっている医局もあった。そうやってアルバイトをしまくると、大学病院の医師も一般病院並みの収入が得られる。

しかし、医者のアルバイトの時給はすさまじいものがある。時給1万円くらいである。だったら、アルバイトだけで生活ができてしまうのではないか? そう、その通りである。最近増えてきたフリーランスの医師というのは、まさにアルバイトのみで食っているわけだ。

1日8時間働けば8万円。月に20日働けば、月収160万円である。特に麻酔科にフリーランスが多いと言われており、ぼくもフリーランスの麻酔科医に、あるバイト先の病院で麻酔をかけてもらったことがある。麻酔は手術の内容によって難度の高い技術が必要であり、難しい麻酔をもっぱらかけているフリーランスの医師は年収1億円という話も聞く。

ただし、フリーランスになると、ある意味で毎日がアルバイトの生活なので、勉強をする機会が著しく減る。医師として成長していくのは難しいという意見も聞く。

ぼくのクリニックの収益は?

開業医に話を戻すと、開業医も行列のできるクリニックから、つぶれかけのクリニックまで、かなり収益に差があるはずだ。

うちのクリニックはどうだろうか。前に述べたが千葉市には六つの区があり、ぼくのクリニックは若葉区。患者の多さは、小児に限れば、おそらく若葉区で2番目くらいではないだろうか(もしかしたら、自惚れかもしれないが)。

これまで最も患者が多かった年は、1万8470人の来院があった。現在はちょっと落ち着いていて、1万6000人くらいである。でもこれではちょっとピンとこないだろう。

2023年1月のうちのクリニックの収支をこっそり紹介しよう。

保険診療と予防接種・健診の医業収益が785万円。

ここに経費がかかる。

材料費・人件費・家賃・修繕費・消耗品・光熱費・事務費などなどが、合計で、295万円。1章で書いたように、借入金・リース代の返却はすでに済んでいる。ちなみに事務費で最もかかるのは、レーザープリンターのトナーである。クリニックではものすごい数の文書を印刷する。患者家族への配布資料とか、紹介状とか、挙げていけばキリがない。約1万円のトナーを毎月2台のペースで購入している。

さて、医業収益から経費を引き算すれば、ぼくの収入は、490万円となる。これを12倍すればぼくの年収は6000万円弱になるが、そうはいかない。そもそもこれほどの高収益の月はめったにないし、年に2回のボーナス月には人件費がドカンと跳ね上がる。

夏には感染症が減るので、患者も減る。おまけに夏季休暇も取る。冷蔵庫も壊れるし、自動ドアも壊れるし、エアコンから水が漏れる。いつも何かにお金が出ていく。ちなみに2022年の10月には電子カルテを入れ替えたため、300万円以上支払った。2023年の11月にはエアコンと現像機が壊れて、買い替えのために200万円以上を支払った。

そうすると、ぼくの年収は、厚労省の資料にあった開業医の平均値よりちょっと高い程度だ。

目の前をお金が素通り

それでも勤務医より全然高いではないかという声が聞こえてきそうである。それはその通りであるが、世の中の仕組みはよくできていて、日本の税制は累進課税制度を取っている。医師の収入を解説した書籍やYouTubeはよくあるが、なぜかそこでは税金については全然触れられていない。

問題は、どれくらい手取りがあるかである。開業医がどれほど税金を払っているかを知ると、ちょっとみなさんは驚かれるのではないだろうか。

行列のできるクリニックの院長先生が、年収3900万円を稼ぐとどうなるか。以下、煩雑になるので、「扶養控除」や「社会保険料控除」などの所得控除は考えないで大雑把な計算をする。(3900万円×0.4)-279万6000円=1280万4000円の所得税がかかる。

住民税は10%だから、390万円である。合計で1670万4000円が税金としてかかってくる。このほかに所得に応じて事業税というのがあり、数十万円収めることになる。当然、社会保険料も支払う。

3900万円の収入を得ても、手元に残るのは、約2230万円である。十分高額であるが、半分近くが税金で持っていかれるのは、まるで目の前をお金が素通りしていくようなものだ。

勤務医の平均給与は厚労省の資料では1479万円だった。これを表に当てはめると、所得税は約334万円である。住民税(10%)を加えて約482万円となり、手元には1000万円弱が残る。もちろん社会保険料も天引きされるが、それを含めても手元約1000万円というのはかなり正確な数字だろう。

前に述べたように、ぼくは31歳から33歳まで一般病院(県立病院・市立病院)に出向した。明細書はさすがにもう手元にないが、3年間で2000万円貯金したことをよく覚えている。独身だったし、生活費以外は使わなかったので、毎年700万円を貯めたのだろう。おそらく手取りは、やはり年1000万円に近かったのではないか。

 平均的な勤務医と、行列のできるクリニックを比べると、手にする金額はおよそ2倍の違いがあるということになる。だが、すいているクリニックとなると、どちらが上かはかんたんには言えない。たぶん勤務医の方が上であろう。そう、つまり開業医というのは大きなリスクを背負っているのであり、そのリスク代がこの金額差なのかもしれない。

ぼくは大学に勤務していたとき大きな病気をして26日間休んだことがあったが、有給休暇などの枠を秘書さんがうまく使ってくれて、月収は保たれた。しかし開業医が26日休んだら、利益が出ないどころかその月は赤字である。人件費も家賃も自動的に出ていく。

2020年は新型コロナのパンデミックで患者数が大きく減った。診療控えと感染防止策の徹底で感染症が激減したからだ。100年に一度の感染症爆発など予測がつくわけがない。このとき、ぼくの年収は前年の61%に落ち込んだ。この先、一体どうなるかとさすがに不安になった。とにかく開業医は働き続けなくてはならない。夏休みや正月休みを取れば、その分、ガクンと収入が減る。

写真/shutterstock

開業医の正体-患者、看護師、お金のすべて(中央公論新社)

松永 正訓
開業医の正体-患者、看護師、お金のすべて(中央公論新社)
2024/2/9
990円(税込)
264ページ
ISBN: 978-4121508096
クリニックはどうやってどう作るの? お金をどう工面しているの? 収入は? どんな生活をしているの? 患者と患者家族に思うことは? 上から目線の大学病院にイライラするときとは? 看護師さんに何を求めているの? 診察しながら何を考えているの? ワケあって開業医になりましたが、開業医って大変です。開業医のリアルと本音を包み隠さず明かします。開業医の正体がわかれば、良い医者を見つける手掛かりになるはずです。

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