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4月からレギュラー10本超の千鳥。“大阪ローカル”の壁を破れずくすぶっていた彼らが一躍、全国区になった転機とは?

集英社オンライン / 2024年4月4日 19時0分

春の番組改編で8年ぶりに復活した「すぽると」(フジテレビ系)のキャプテンに起用され、レギュラー番組は今や10本、さらに大吾は新番組が2本スタートするなど“無双状態”の千鳥。「ポスト・ダウンタン」の最右翼ともいわれる彼らにも、大阪ローカル芸人としてくすぶっていた時代があった。

かつて大阪ローカルでは人気も、全国区になれず

今やテレビのレギュラー本数は10本をかぞえ、押しも押されもせぬ売れっ子となった千鳥。ただ、大阪を拠点に活動していた2010年前後までは全国進出のきっかけをつかめないまま、ローカル芸人としてくすぶっていたという。
当時の千鳥の様子を知る吉本NSC講師の本多正識氏がこう振り返る。

「その頃の千鳥は関西のテレビ番組で数本のレギュラーを持ち、若手芸人が出演する『ベース吉本』でも笑い飯やノンスタイルと人気を3分するなど、そこそこの人気者でした。ただし、その地位も大阪ローカルどまり。全国区人気にはなかなか手が届かないでいました」



たしかに当時の千鳥は全国区への足がかりとなるM-1でも決勝には何度も進出するのだが、結果はいつも下位どまり。お笑い界スターダム入りへのチャンスをつかめずに低迷していた。

「そうこうしているうちに、2008年には活動の拠点だった『ベース吉本』から卒業扱いとなってしまったんです。また、2010年には結成から15年以内というM-1出場資格を喪失し、最後のチャンスと挑んだ同年のM-1もあえなく準決勝で敗退するはめに。千鳥にしてみれば、芸人として次に何をすればよいのか、試行錯誤を迫られている状況でした」(本多氏)

普通ならここで反転攻勢できずに、ローカルにくすぶってそれっきりという芸人も珍しくない。ところが千鳥のふたりはM-1敗退の崖っぷちからわずか2年後の2012年には東京に進出し、あれよあれよと全国キー局を中心に10本近くのレギュラー番組を持つ人気者になった。

いったい、千鳥が上昇気流へと転じるきっかけは何だったのか? 前出の本多氏は2011年に「5upよしもと」(2011年1月に『ベース吉本』の後継劇場としてオープン、2014年11月に閉館)の舞台袖でノブと交わした会話が「その瞬間だったのではないか」と証言する。

「出番を終え、大悟くんは楽屋へ戻ってしまったんですが、ノブくんが舞台袖にいた私のもとへ近づいてきて、『大悟の岡山弁はちいときつすぎるような気がするんです。もうちぃと柔らこうしてわかりやすいことばづかいに変えたほうがええかなと思うんですけど、先生、どう思われます?』と聞いてきたんです」

大悟とノブはともに岡山県出身。岡山弁と大阪弁が混在した独自のしゃべりで笑いをとるのが千鳥の漫才スタイルだ。ノブは全国的になじみが薄く、しかもわざとどぎつ目の岡山弁を連発する大悟のしゃべりが千鳥低迷の一因になっているのではと悩んでいたのだ。本多氏が続ける。

「大悟くんのルックスはどう見ても柄の悪い田舎のおっさん風。そんな大悟くんがどぎつい岡山弁を連呼したら、お客さんは笑うどころかドン引きしてしまうのではないかと、ノブくんは心配していたんです。千鳥の芸を何とかして変えていかないと、さらなる高みには行けないという思いがノブくんにはあったんでしょう」

「もっと岡山弁を使え」とアドバイス

「5upよしもと」の舞台袖でノブが漏らした弱音とも迷いともつかないようなひと言――。それに対する本多氏のアドバイスがふるっていた。何と本多氏は「そんな心配はいらんいらん。もっとどんどん岡山弁を強調したほうがええよ」とノブを励ましたというのだ。そのときの心境を本多氏はこう説明する。

「じつは私も岡山に住んでいたことがあるので、千鳥の岡山弁のどぎつさはよく理解できていました。たとえば、岡山では『いけない、ダメ』ということを『そげなことをしちゃぁいけん』と言うのですが、意味を強めたいときには『そげなことをしちゃぁおえん』となる。つまり、岡山弁では『おえん』は『いけん』の最上級なんです。そして、大悟くんはそんな最上級表現のどぎつい岡山弁を漫才でがんがん使う(笑)。

ただでさえ、他の都道府県の人は岡山弁の意味がよくわからないのに、これではノブくんが不安になるのも無理はありません。でも、お笑いの世界では方言は笑いをとる強力なアイテムなんです。耳慣れない方言に、客は『どんな意味だろう?』と注目し、そこでひと笑いをとるチャンスが生まれる。

さらに相方がその方言の意味を客席に向かって説明するときにも笑いのチャンスができると考えると、方言は二重、三重の笑いの武器になるんです。だから、ノブくんには『おえんじゃお客さんにわからんけん、せめて、いけんくらいにしとけぇ!』と、大悟くんを諭すふりをして客席に向けて説明すればいいだけのこと。

そうやってノブくんがフォローすることでお客さんが岡山弁の意味を理解できるだけでなく、大悟くんのしゃべりが際立ってさらに笑いをとれる』と伝えました」

そのアドバイスを聞いたノブは、驚きながらもどこか安心した様子だったという。

「最初は『えっ、じゃあ、俺らはこのままのしゃべりでええんですか?』と驚いたような様子だったんですが、私がさらに『これだけどぎつい岡山弁をしゃべる漫才コンビはほかにおらへん。それだけ君らの岡山弁漫才は目立つということやんか』説明すると、なるほどと得心したのか、ホッとした表情になっていました」(前同)

「クセがスゴい!」も幻になっていた⁉

千鳥の代表ギャクといえば、どきつい岡山弁でボケ倒す大悟に、相方のノブが鋭く「クセがスゴい!」と返すツッコミ。そのひと言で観客席がどっと沸く。あまりの受けっぷりに、「千鳥のクセスゴ」(フジテレビ系)という冠番組も生まれたほどだ。

本多氏の記憶によれば、千鳥のふたりは「クセがスゴい!」というフレーズを大阪ローカル時代からよく使っていたという。

「千鳥が『ベース吉本』を卒業する以前の07~08年頃からノブくんはこのフレーズをよく口にしていたと思います。当時はお決まりのギャクというよりも、濃い岡山弁を繰り出すやんちゃな大悟くんに、ノブくんが反射的に『クセがつえーわ!』とツッコむという感じのやりとりでした」

その後、このやりとりは大悟の奔放な岡山弁が連発されるなかで磨かれ、千鳥の代名詞的なギャクとして定着し広まったというわけだ。本多氏が言う。

「ノブくんは『5upよしもと』の舞台袖での私との会話をもう忘れているかもしれません。でも、もしあのとき、『大悟くんのどぎつい岡山弁を客が理解できるよう、もっとやわらかいものに変えたほうがいい』と私がアドバイスし、そしてそれを大悟くんが実行していたら、ひょっとしたら、『クセがスゴい!』は生まれてなかったかもしれませんね(笑)」

舞台袖でのノブと本多氏のやりとりは時間にすれば、ほんの数分間のことだったという。しかし、今振り返ると、その数分間こそが「クセツヨ」の岡山弁を武器とする千鳥を全国区人気に押し上げた瞬間だったのかもしれない。

 

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