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〈急拡大する“スキマバイト”の闇〉「挨拶なしで名前も呼ばれない」「社員とパートの板挟み」賃金もヒエラルキーも最下層…「二度とここで働くか!」某牛丼チェーンで体験した理不尽とは

集英社オンライン / 2024年4月21日 17時0分

〈急拡大するスキマバイト体験記〉「やり方、1回で覚えてね」ピークタイムの飲食店では無茶ぶりも当たり前の忙しさ。オジサン&20代女性記者が実際に応募してみた! 〉から続く

タイパ(タイムパフォーマンス)を気にする人が増えるなか、「すぐに働けてお金がもらえる」を売りにする、スキマバイトサービスが非正規ワーカーの働き方のひとつになっている。しかし、その実情は賛否両論のようだ。実際に働いた人に聞いてみた。

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“バイト探し”感覚で利用する大学生も

累計利用者数700万人を突破するなど、スキマバイトサービスは大手のA社が市場をほぼ独占している。

A社を通じてバイトをしたことがある50代の男性はこう話す。



「一番の特徴は、働くにあたって面接や面談がなく、履歴書提出も不要なこと。運転免許証などの身分証明さえあれば手元のアプリで登録でき、すぐにバイトを探して予約できる手軽さはいいですね。もちろん利用料はタダです」

A社に登録し頻繁に複数のバイトをしているという40代の女性も、その利便性をこう説明する。

「派遣や普通のバイトなら、賃金を手にできるのは数日後になるか、当日でも勤務記録を提出したり支払い請求をしたりという手続きを踏まないと受け取れない。

でもA社は、勤務時間が終わってバイト先に用意されているQRコードをスマホで読み込めば、その時点で給料を受け取れます。帰り支度をしながら5分後にはアプリのマイページを通じて受け取り、すぐに口座に移せるスピード感は魅力です」

なぜそんなに早く賃金を支払えるかというと、ワーカーへの支払いはA社が立て替え、企業側が月末締めで翌月に一括してA社へ賃金を支払う仕組みとなっているためだ。

「僕の大学ではけっこうやってる人多いですよ。授業と授業の間の空きコマに短時間で働けるから、効率よく稼げるって評判です」と言う20代の男子大学生は、「A社でいろんな仕事を試してみて、もし気に入ったものがあればそのバイトの正規の面接を受けてみようと思っています」とも話した。

派遣会社は、登録社員が派遣先企業と直接雇用契約を結ぶことを厳禁しているが、A社のサービスでは、企業側がアプリを通じてバイトに入った人を直接雇うことができるとしており、利用者は「バイト探し」の感覚で仕事に入ることもあるようだ。

 ヒエラルキー最下層という扱いに不満も

一方で働く側には普通のバイトよりも不利だと感じられることもあるという。

「バイト代ですね。アプリに出てくる仕事の多くは安く、最低賃金(東京都なら時給1113円)の仕事も少なくない。東京23区内ならコンビニや飲食店のバイトは人手不足で時給1300円台のものも珍しくないことを考えれば、ここのはかなり安い。それに交通費も上限500円程度のものがほとんどで、まったく出ない仕事もありますね」(40代女性)

A社のサービスを利用し求人をアプリに掲載している企業は、バイトに支払う報酬額の30%を「利用料」としてA社に支払い、バイトに払う交通費も利用料の適用対象に含まれる。このあたりも賃金の安さの背景にあるようだ。

「企業側からすれば、実際に働いた人に支払う額の1.3倍以上の人件費がかかることになるので、基本になるバイト代を低く抑えたいんでしょうね。自社で募集しても集まらない人手を確保するためA社に求人を掲載してもらうので仕方ない面もありますが……」(50代男性)

埼玉県在住で週に数日、スキマバイトで都内の会社に勤めているという50代の女性は求人の地域差についてこう指摘する。

「スキマバイトの求人を出す会社は都内から外れると急に少なくなる印象です。だからA社を利用して副業でバイトをするときも都内で探すことがほとんどです。でも交通費が出ないところが多いので、ふだん通勤で使ってる定期券の範囲で探しています」

4月上旬、スキマバイトで流通倉庫のピッキング(荷出し)に入った人物がネット上で公開したエッセイが話題になった。

初めて入った倉庫で社員に言われたとおりに荷物をハンドフォークに積み上げた筆者は、パート女性から「無茶苦茶な積み方をしてるね」とこき下ろされ、次の工程の人が作業しやすいように荷物を積み直した。

社員の指示に基づいて積まれた荷物を見て「教えた人が悪い」と言ってのけたパート女性から筆者は、荷積みの方法ひとつとっても繰り広げられている正社員とパートの主導権争いの中で、自分たちスキマバイトは双方から代理戦争のコマにされている現実を悟り、疲労感に包まれる、という内容だ。

スキマバイトのワーカーは初めての作業で不慣れな面が多いことも災いし、経営者や社員、パート、バイトなどで構成される仕事場のヒエラルキーで、非正規の中でもかなり下位に置かれていることをうかがわせる証言はほかにもある。

「一番辛かったのは某牛丼チェーン」

「半年ほど前、A社を通じ大手のコンビニで商品の荷出しと賞味期限チェックをしたのですが、店のオーナーの奥さんがやたら厳しく、他のバイトには何も言わないのに僕にだけあたりがキツかったんです。言われたとおりに賞味期限チェックをしても『どうせやっていないんでしょ』とまで言われました。

初めてやる品出しに時間がかかると『なんでそんなに遅いの? そんなんじゃ終わらないよ?』と嫌味を言ってきたり、『〇〇時に納品あるんだからやっとけって言ったでしょ!』と怒ってきたり。しかも、僕のことは“A社くん”と、名前すら呼んでもらえなかった。マジ最悪。二度とスキマバイトはしたくないですね」(20代男性)

仕事の説明をきちんとされず、名前を呼ばれず、あいさつも、店側の人からの自己紹介もされなかったという経験を話す人は他にもいる。30代の男性フリーターは「A社経由で入って一番キツいのは飲食店、なかでも某牛丼チェーンは辛かった」と話す。

「仕事に入るや否や、店長は『とりあえず洗い場をやって。わからないことはバイトの子に聞けばいいから。はいスタート』としか言わず、途中で別の業務をやるように言われたのに、今度はバイトリーダーみたいなおばさんに『来なくていいから、さっさと洗い物だけやって!』と真逆の指示をされる始末。店長からは『おばさんの言うことは聞かなくていい』と板挟みにあって……。

帰るときも一言も声をかけられず、『二度とここで働くか』と思いました。でも、今思うとあの店には毎日のようにA社経由で新人バイトが来て、毎回イチから説明をしなければならず、店長は軽くノイローゼを起こしていたんじゃないかなと思います。受け入れる側も大変なのかもしれません」

「いろんな仕事場に行けて、自分が好きな時間を選べるのがいい」(40代女性)という人もいれば、「知らない人と働くなんて嫌じゃないですか? だったら休日などに正規のアルバイトとして長時間働きますね」(20代女性)と賛否が分かれるスキマバイト。

働き方の多様性が広がったことで生まれたこのスタイルも、肌に合わない人は少なくないようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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