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〈前澤氏やホリエモンも激怒〉SNSの偽広告で詐欺被害者がFacebook Japanを集団提訴「徐々に警戒心が薄れ…」被害者代表が語る投資詐欺の巧妙な手口

集英社オンライン / 2024年4月25日 11時0分

著名人を騙った巧妙なSNSの偽広告について、4月25日、神戸市などに住む男女4人がSNS運営会社の日本法人に対して集団訴訟を行うという。問題の背景にあるものは。また、被害者代表がその詐欺被害の詳細について重い口を開いた。

〈画像〉集団訴訟を起こした被害者の代表Aさんと詐欺師とのやりとり

プラットフォームに詐欺広告を掲載した責任を問えるのか

Facebook やインスタグラム などのSNSで、前澤友作氏や堀江貴文氏といった著名人や、SBI証券や松井証券などのロゴを無断使用して証券会社を騙る偽広告による投資詐欺被害が急増している。

警察庁の発表によると、昨年、全国の警察が認知したSNS型投資詐欺(SNSを利用した非対面接触で金銭を騙し取る詐欺)は2271件で、うち1億円超の被害は26件。1件に対する最大の被害額は約3億4000万円、被害総額は約278億円となっている。このような状況に警視庁は専門の捜査班を立ち上げて対応にあたっている。

NPO法人「投資詐欺被害者の会」副理事長として投資詐欺被害者の支援と集団訴訟の呼びかけ活動を行う国府泰道弁護士は次のように話す。

「新NISA制度が始まるなど、国をあげて国民に投資を推奨していることも、投資詐欺への警戒力を低下させているひとつの要因でしょう。

現在はSNSが犯罪に利用されるツールとなっていますが、犯罪集団にこのようなツールを簡単に利用できないようにするのが、社会的責任ではないでしょうか。たとえば、かつて振り込め詐欺などの特殊詐欺によく利用されていた携帯電話は、現在では本人確認手続きが強化され、違反があった場合にはその利用が停止されます。SNSに対しても同様の対応が必要だと考えます」

しかし、誇大広告や虚偽広告の責任を負うべきは広告主と考えられており、一般的には広告の場を提供しているプラットフォーマー(広告媒体)には罪を問えないとされている。

1989年9月に最高裁の判決が下された「日本コーポ事件」(新聞各紙面に不動産広告を掲載したにもかかわらず、物件の引き渡しも代金の返済もせずに売主の日本コーポは倒産。売買契約を結んでいた買主らが当該広告を掲載した各新聞社に対して損害賠償を求めて提起した事件)では、『広告内容の真実性をあらかじめ十分に調査確認する一般的な法的義務はない』とし、広告を掲載した新聞側の責任を否定した。

「ですが、このときの判決によれば『広告媒体が誇大広告・詐欺広告とわかる状況になったときは、広告媒体は掲載してはならず不法行為責任になる』ともしています。
Facebookに溢れている偽広告については、2023年夏に前澤社長は『自分の広告ではない』とSNS等で呼びかけています。つまり、それ以降は、詐欺疑念が生じるため、広告媒体は(偽広告を)掲載してはならない義務が生じます」(国府弁護士)

「前澤社長が関わっている講座だからいいもののはず」と入会

SNS運営会社メタは4月16日に、「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」というタイトルで声明を発表。それによれば、「メタは詐欺広告と弊社ポリシーに違反しない広告とを区別するために広告規定に沿って広告を審査している」「プラットフォーム上の安全を守るため、2016年以降200億ドル以上を投資してきた」「しかし、膨大な広告の中から審査するのは、難しい課題である」としている。

これに対し、国府弁護士はいう。

「メタ社の主張は、『結果回避可能性』(詐欺を予見し回避できた可能性)がないので、注意義務違反にはならないという考え方です。
しかし、訴訟を通じて、広告媒体が偽広告を排除するために何をしてきたのか、広告審査の実態はどうだったのかという事実関係を被害者に対して明らかにしていくことができると思います。この点も訴訟することの意義のひとつです」

そんななか、4月25日、神戸市などに住む男女4人がこのSNS型投資詐欺の被害に遭ったとして、米メタの日本法人「Facebook Japan合同会社」に約2300万円の損害賠償を求め、神戸地裁に提訴した。被害者代表のAさん(42歳男性)は被害について、集英社オンラインに対して重い口を開いてくれた。

「Facebookを見て流れてきた広告を踏んだのは2023年11月6日のことでした。私が見たのは、前澤友作さんが投資の講座を始めるため専門家を雇ったという広告です。広告に表示されていたQRコードを読み取ったところ、Sという投資家につながりました」

この人物の名前を検索してヒットするビジネス特化型SNS「LinkedIn」のプロフィールには三つ揃えのスーツを着た男性の写真が掲載されており、「1973年生まれ、ケンブリッジ大学経済学部卒業。Sは、日本の投資専門家であり、金融分野で幅広い経験を持つ人物」と紹介されている。
その他、ブログに金融記事を掲載しており、YouTubeチャンネルがあった形跡が残されている(現在はチャンネルごと削除済み)。

「昨年8月ごろに保険を解約し、まとまった金額が手元に入ったんです。これをどうしようかと考えていたときに、ちょうどFacebook広告を見ました。もともと投資は老後のためのつみたてNISAを細々とやっていました。でも、もう少し勉強をして、他の投資についても学びたいと思い、広告の投資講座に登録をしてみることにしました。前澤友作さんが関わっている講座であればいいものなのではないかと……」

 徐々に警戒心が薄れ、誘われるがまま入金

グループに入ると、そこでは投資についての活発なやりとりがされていた。Aさんは「指導者が投稿する投資情報は、新聞や他の投資記事と比較しても遜色のないまともなものでした」と感じ、そこから学べることがあるだろうと入会後1ヶ月はそのやりとりを眺めるだけだった。しかし、同じグループに入ってきたBという人物によって、詐欺の沼へと足を踏み入れることになる。

「そこでBは『子どもの学費準備のためにジュニアNISAをやっているが、この方法でやっていくことが本当に正しいのかわからない』『無事に学費を準備できるか不安だ』というようなことを投稿していたんです。私にも子どもがいるため共感しまして、その人と個別にやりとりをするようになりました。
お互いに悩みを相談したり、励ましあったりしているうちに、徐々にガードが緩むというか……。今、振り返れば洗脳されていたような状態だったなと思います。まるで恋人かというくらいに、頻繁に連絡がくるんです」

そのうち、グループの指導者からFXに誘われる機会があった。もともとFXはやるつもりはなかったが、Bとのやりとりで警戒心が薄れていたAさんは、ものは試しと指定された口座に入金してしまう。

「指示通りにやったら儲かったので、これはいいのかもしれないと思い、ますますガードが緩み、さらに10万円、その次に10万円、そして5万円と追加で入金していってしまいました」

ちょうど3回目の入金をしてしばらく経った後、Aさんの身内に不幸があり、まとまったお金が必要になった。

「入院費の支払いなどに充てるため、投資したお金を払い戻そうとしたところ、税金を支払わないと引き出すことができないなどの理由をつけて、出金させないようにするんです。それで調べてみたところ、詐欺だとわかりました」

その後、同様の詐欺被害者がいないかとネットで探して知り合ったのが、この度、集団訴訟をするにいたるメンバーたちだ。彼らと情報交換をしているうちに知った「投資詐欺被害者の会」理事長、西条和秀氏に相談し、Facebook Japan合同会社を訴える流れになった。
Aさんは集団訴訟の代表のほか、個人的に次のような行動も起こしている。

「自分が詐欺被害に遭ったとわかってからは、あえて有名人の偽SNS広告を踏んで、その投資グループに参加しています。そしてやりとりのなかで口座を聞き出し、見つけしだい、銀行に連絡をして『この口座は、詐欺で使われているようです』と伝え、閉鎖させています。

相手は日本人名義だけでなく、外国人名義の口座のほか、高額の振り込みを指定する際には法人名義をかたるなど相手によって使い分けているんです」

そう怒りを滲ませるAさん。
#2では今回、集団提訴したその他の被害者にも話を聞く。

※「集英社オンライン」では、SNS型投資詐欺について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news 

取材・文/中山美里
集英社オンライン編集部ニュース班

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