1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

マジで年金破綻を信じているとヤバい理由【30代で知らなきゃアウトなお金の授業】

集英社オンライン / 2022年8月1日 13時1分

日本の人口減少、景気悪化の影響からか、まだまだ年金破綻を信じている人を見かける。2022年現在、年金制度の正しい認識は「破綻はしないけれども、給付額は減る」ということをわかりやすく解説する。

年金は日本が消滅しない限りもらえる

はじめに言っておきますが、年金制度はすぐに破綻する仕組みではありません。

なぜかというと、日本の年金システムは賦課(ふか)方式を採用しており、今の僕たちが支払う保険料が年金受給者にすぐに渡るような仕組みになっています。ですので、保険料を払う世代がいる限り年金制度は維持されるので、自分が日本最後の世代でない限り年金は受け取れます。

ちなみに「賦課方式」と別に「積立方式」という方法もありますが、多くの先進国は基本的に賦課方式を採用しています。



また、日本の年金システムは賦課方式を採用しているといいましたが、少し積立金も保有しています。この積立金を運用しているのがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。
この積立金の運用リターンがマイナスになるとよくニュースになりますが、トータル(2001年〜2021年)で見れば年率3.69%のプラスリターンとなっています。

もっといえば、この積立金は賦課方式の年金制度のバッファのような役割なので、積立金の運用がダメになったから年金が破綻するといったものではありません。

年金は20〜30%ほど少なくなるのが既定路線

では、年金が簡単に破綻しないことを理解できたなら、「実際に僕たちは年金をどれくらい受け取れるのか?」を考えてみましょう。

年金財政は賃金や労働参加率などといった様々な要素に影響を受けるため、「受給額がいくらになる!」といい切ることができないのですが、ざっくり今の水準から20〜30%ほど少なくなると思っておくといいのではないかと思います。

これは厚生労働省が行った2019(令和元)年財政検証レポートに記載されていますが、その前に年金財政維持のために導入されているマクロ経済スライドというものを理解しておく必要があります。マクロ経済スライドとは、簡単にいうと年金財政維持のための調整機能だと思ってください。

年金制度はこれまで財政維持のために保険料を払ってくれている人たちの保険料を上げることで財政維持をしようとしてきました。しかし、それだと現役世代の負担が大きくなりすぎてしまうため、保険料を増やすのではなく、年金給付を減らすことで対応することに決めました。つまり、収入を増やすのではなく支出を減らすという判断ですね。

では、どれくらい減ってしまうのかというと、それを考えるのに役立つのが財政検証レポートです。

この資料では、経済前提がケース1〜ケース6まで用意されています。簡単にいうとケース1が最もいいケース、ケース6が最も悪いケースです。

ケース1だと実質経済成長率が0.9%で実質賃金が1.6%も増えていくバラ色の未来です。実質経済成長率は、1991年〜2021年の30年間の平均は0.7%ですので、控えめな数字かもしれませんが、実質賃金が1.6%も増えるのはかなり無理があると思います。仮にそれが実現できたとして、年金はどれくらい受け取れるのかというと、その右側にある所得代替率が参考になります。

経済成長率0%で30%減の現実

所得代替率とは、現役男子の平均手取り収入額に対して年金額は何%にあたるのかを示す指標です。2019年はモデル世帯だと所得代替率が61.7%と書かれており、ケース1だと2046年には51.9%になると書かれています。61.7%が51.9%になるということなので、約84%(51.9%/61.7%)となり、16%ほど年金が少なくなるということになります。

つまり、仮にどれだけよくても年金は今の水準から16%ほどは少なくなるよということですね。現実的なラインに見えるケース4やケース5だとどうでしょう?

ケース4だと2053年には所得代替率が46.5%(機械的に給付水準を下げた場合)となっています。現在の水準からすると、25%減です。ケース5だと28%減です。

そう考えると、経済成長率0%という経済状況でおおよそ30%減ですので、年金は破綻するという認識ではなく、今より30%少なくなると思って心づもりをしておく方が現実的ではないでしょうか。

経済成長して賃金が上がれば年金制度は全く問題ないわけですので、年金の問題は制度の問題というよりは日本経済の問題だというのが僕個人の意見です。

ちなみに、人口比率の問題じゃないの?と思った方もいると思いますが、それも勘違いです。 確かに1970年は65歳以上1人に対して65歳未満の人は13.1人でした。それに対し2040年には1人を1.8人で支える構造になります。

いわゆるお神輿型から肩車型と呼ばれるものですね。

これだけ見ると年金は破綻していそうに見えますが、年齢区分ではなく、働いている人と働いていない人の割合で見ると見え方が変わります。1970年では働いていない人1.05人を働いている人1人で支えていました。そして2040年では働いていない人0.96人に対して働いてる人1人が支える構造になります。

つまり、ほぼ変化がないということです。

理由は簡単で、みんなの働き方が変化しているからです。女性が働くようになり、55歳退職だった時代から比べると、より長く働く時代になりました。高齢者も増えるけれども、働く人も昔より増えているということですね。

受給開始年齢を先延ばせば…

実は、日本の年金は受給開始年齢が65歳となっていますが、受け取り時期は60歳〜75歳の間で選択できます。

ただし、早く受け取ると年金額が一月あたり0.4%減少し、遅らせると一月あたり0.7%アップします。例えば、元々の年金額が200万円の人が60歳から受け取る場合は、0.4%×60ヶ月の24%減少するので、152万円(200万円ー48万円)となり、一生涯この金額を受給することになります。

反対に70歳まで遅らせた場合は、0.7%×60ヶ月の42%増となり元々200万円の人だと284万円の年金額となります。

世界では、マクロ経済スライドのような制度が導入されている国は多くありません。ドイツやアメリカ、イギリスなどは支給を67歳に引き上げる予定となっています。(イギリスはさらに2046年までに68歳 に引上げ予定)

このように世界を見ると高齢化は先進国共通の悩みですし、年金財政の悩みも先進国共通なのではないでしょうか。もはや先進国において長く働くことは避けられないと思いますので、年金破綻といったトンデモを信じるのは自殺行為です。長く働けるように人的資本を維持することや将来に向けて少しでも投資をする方がよほど有意義だと思います。

文/井上ヨウスケ

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください