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コロナ禍で開通した新型バスと電車で行く、ベトナム・ハノイの旅

集英社オンライン / 2022年8月5日 11時1分

待ちに待った人も多かっただろう。今春、ベトナムが外国人観光客の受け入れを本格的に始めた。しかも首都・ハノイではコロナ禍にもかかわらず新型バスを導入し、市内をつなぐ電車の運行も始めた。これからはコロナ禍以前より、さらに快適に観光が楽しめるだろう。さっそくバスと電車を使った小トリップを提案したい。

車内にジャズが流れる新型バスに乗る

バス停に、目のさめるような若草色のバスがすべるように入ってきた。段差のないステップを上がって車内に入ると、濃紺のポロシャツを着た車掌の青年が

「ビンバス、シンチャオ」(ビンバスへようこそ!)

と、元気よく挨拶してくれた。

ビンバスは現在、ハノイ10路線、ホーチミン市5路線で運行している。この車体のバスを見掛けたら一度乗ってみてほしい


ここはハノイ市のドンスアン市場近くにあるロンビエン・バス・ターミナル。私はここのE1.4乗り場からビンバスのE02番「ハオナム行き」のバスに乗り込んだ。

コロナ禍は世界を窮屈にしてそれはベトナムでも例外ではないけれど、この中で「良かった」ことのひとつが、このビンバスと、あとで紹介する「ハノイメトロ」の運行だ。なにしろそれまでの市バスは車体が古い、音がうるさい、車掌が無愛想と三拍子揃ってひどかった。ベトナム市民すら乗るのを敬遠していたほどだ。

ベトナムではバスの運賃を車掌さんに現金で支払う。小銭は用意しておこう

ところが2021年12月から運行が始まったこのビンバスは、車体がまだ新しいし、車内にはジャズまで流れている。車掌も親切で、ちゃんと運賃の釣り銭もごまかさずにくれる!(当たり前かと思われるかもしれないが、ベトナム旅行では重要なポイントだ)。しかも運賃はどこまで乗っても一律8000ドン(48円、2022年7月25日現在。以下同じ)とあって、市民・観光客問わずに大人気だ。

ちなみにビンバスを運行しているビンバス社は、ベトナムの新興財閥であるビングループに属する。同財閥は不動産開発から学校・病院経営、ベトナム政府悲願の国産車の開発まで手がけている。このバスのように、世界標準のサービスをベトナム国内に持ち込んだことが、同財閥の急成長している秘密なのかもしれない。

ベトナムでのランチにはぜひ家庭料理を

さてターミナルからビンバスに乗った私が最初に目指すポイントは、乗車した「ロンビエン・バス・ターミナル」の隣の停留所「ベトナム・キューバ小学校前」だ。「えっ1区間だけかよ」と、言わないでほしい。ここにぜひ皆さんに味わってほしい料理があるのだ。店の名前を「1946」という。ベトナム初の共和国が成立し、フランスからの独立の交渉が進められていた1946年にちなんでいる。

黄色の可愛らしい外観のレストラン「1946」。営業時間:9:00-14:30, 17:00-22:30

ベトナムを旅行していて、現地の人にお勧めレストランを尋ねてよく紹介されるのが、外国人観光客用に用意されたようなレストランだ。それはそれで悪くはないのだが、物足りなさがあるのもたしか。かといって、ど・ローカルなお店で食事をする勇気もちょっとない……という人に「1946」はちょうどよい。外国人観光客はもちろん、ハノイ市民にも大人気だからだ。

オープンしてちょっとする間にすぐ席が埋まった。家族連れや会食を楽しんでいる人もいる

人気の秘密は、懐かしいベトナムの家庭料理が味わえること。フォーや生春巻きのような、日本でも食べられる料理をここで注文してもつまらない。ぜひ「聞いたことのない料理」にチャンレンジしてほしい。注文のコツは、スープと野菜料理を必ず付けること。丁寧に出汁が取られたスープの味は鮮烈で、そのまま飲んでもよいし、ご飯にかけて食べてもよい。日本ならはしたないといわれる行為でも、こちらではOKだ。不思議なもので野菜は、たとえば同じ空心菜炒めでも日本で食べるそれと、ベトナムで食べるそれはインパクトが違う。野菜の持つ生命力の違いなのだろうか。複数で訪れてたくさんのおかずを注文して少しずつ取り分けて食べるのが楽しい。あいにくこの日私はひとりだったが、撮影用として多めに注文した。女性なら2~3人前だろうか、これで料金は16万5000ドン(約990円)だった。

私が注文した料理。上から時計回りで、あさりの酸味スープ、豚バラ肉の炒めもの、小ナスの漬物、白いご飯。ご飯の量が多いが、さらさらしたインディカ米なので意外とするっと入る。ご飯にスープをかけ、小ナスのつけものと一緒にいただくと、これが絶品なのである

バスから電車に乗り換える

お腹がいっぱいになったあとは、またバス停に向かって終点の「ハオナム」停留所を目指す。今度はお土産を探しに行こう。

タクシーと違うバス旅の魅力は、料金が安いことに加えて、ゆっくり車窓からの風景を楽しめること。ここでもタンロン城址のレンガ塀、国会議事堂や、遠くホーチミン廟を臨むことができる。またかつてはフランス人街と呼ばれた場所を通り過ぎる。多くが官公庁や各国大使館となったフランス建築の街並み、緑ゆたかな景色が窓外に広がる。ハノイの旧市街とは異なるおもむきの街だ。

かつてフランス人街と呼ばれたチャンフー通り。フランス風の洋館が立ち並ぶ

バスで終着駅の「ハオナム」停留所について、そこでハノイ都市鉄道2A号線の「カットリン」駅に乗り換える。ベトナム初の市内をつなぐこの鉄道は、2021年11月に運行を開始した。中国政府の援助を受けて、2011年に着工、当初は2015年に開通の予定だったが、遅れに遅れて昨年ようやく営業を開始した。ハノイメトロの愛称があるものの、この新しい都市鉄道には地下部分はなく、全長13.1kmの高架上を走る。ちなみに南部のホーチミン市の鉄道網は日本政府の援助を受けている。一つの国に寄りかかって援助を受けて「債務の罠」に陥るようなことはせず、さまざまな先進国から援助を引っ張ってくる「したたかさ」も、ベトナムの顔である。

カットリン駅は、見た目に駅舎とは思えない現代的なスタイルの建物。切符売り場は正面から入り、エレベーターで2階にあがったところにある。

ハノイメトロ2A号線の高架上の駅。途中の駅はどの駅も同じスタイルだ

券売機は数台、フロアに散在している。券売機の画面右下の「English」のボタンを押と、ベトナム語表示から英語表示に切り替わる。タッチパネルに路線図が示されるので、目的の駅名にタッチすれば料金が表示される。あとは挿入口にお金を入れればOK。英語がわからなくてもパネルに表示されるので直感的にわかるだろう。

正面にタッチパネル式画面。紙幣は右下の「INSERT CASH」とあるところへ挿入

駅のホームは、改札機をでてさらに上がった3階にある。現在は10分間隔で運行されている。線路を覗こうとホームの端に立ったら、拡声器をもった駅員さんに「ホームの端を歩かないように!」とたしなめられてしまった。ベトナムの駅員さんは怖いので、撮り鉄のみなさんはご注意を。

このメトロ2A号線は中国政府の援助で建設されているため、車両は北京地下鉄車両装備社製

電車は高架を走るので、ハノイを俯瞰するように観光できる。60〜70年代に建てられたプレハブ式集合住宅や、幅の狭いペンシルビルの向こうに林立する高層マンション群。ハノイの発展の歴史がパノラマのように窓外を流れていく。

ハノイメトロ2A号線からみた窓外風景。手前は70年代に作られたであろう集合住宅

9世紀から続くベトナム・シルク

カットリン駅からハノイメトロに乗って15分程度で、バンクアン駅に到着。運賃は1万2000ドン(約73円)だった。目指すはそこから北に歩いて20分ほどのバンフック村だ。そこでシルクのお土産を買おう。

シルクといえばタイが有名だが、ここバンフック村がシルクの生産地として成立したのは、なんと9世紀。15~17世紀にかけては、銀と交換で日本に輸出されていた歴史もある。

バンフック村にいく途中の商店街では、両側にお土産物が立ち並び、空に色とりどりのパラソルがかかっている。別に傘は名物でもなんでもないし、こうした趣向はハノイの街中やベトナム各地の観光地でも見られる。「インスタ映え」を狙った演出なのだが、なにかこう「みなさんはこういうのがお好きなんでしょ?」というベトナム人の「あざとさ」(褒め言葉です)がうかがえるようで、微笑ましくさえある。

お土産物さんをひやかして歩くのも面白い

バンフック村の入口にはレンガ造りの門が建てられているので、すぐわかるだろう。

バンフック・シルク村センター。中にはショップはもちろん、古い織機も陳列されている

工場で働いているランさん(60)は「この通りにはあともう1件、工場があるのみ。昔は軒並み絹布の織布工場だったんだけどねえ」と昔を振り返る。訪れるなら今のうち、ということか。

お土産のお勧めは、シルクのネクタイなど。実はベトナム土産で困るのが男性向けのもの。女性向けはアジア雑貨や焼き物などたくさんあるのだが、男性が貰って喜びそうなものが少ない。必要な人はこの村でゲットしておこう。

ショップ店内。ネクタイは4000円ぐらい。それ以外にもシャツなど品揃えも豊富だ

バスと電車を乗り継いで近代的な高層ビルが並ぶ街から1000年の時を超えた伝統工芸の村へ。それが新しいハノイ観光の魅力だ。

<ベトナムへの渡航について>
2022年3月15日、ベトナム政府はこれまでの入国制限を全廃し、水際措置適用以前の入国手続きに戻すことを発表した。これにより日本人の入国については入国目的にかかわらず入国日から15日間の滞在について査証が免除され、ワクチン接種の有無、回数を入国の条件とせず、また陰性証明書の取得、持参も入国の条件としていない。しかし状況は今後変わる可能性もあるので、詳しくは、在ベトナム日本国大使館のHPで確認してほしい。

文・写真/新妻東一

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