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顎がズレて歯が折れても、心は折れない。「絶対、地獄から這い上がるところを見せる」死にもの狂いでマイクを掴んで喋った“闘魂Hカップグラドル”白川未奈の現在地と野望

集英社オンライン / 2023年2月3日 17時1分

昨今の女子プロレス人気を牽引する団体「スターダム」。可愛い、カッコいい、強い、悪い……。様々なタイプのレスラーがいる中で、ひと際、目を引くレスラーがいる。元グラビアアイドルで、ニックネームは「闘魂Hカップグラドル」――。セクシー担当? そんな簡単な言葉で彼女を括ることはできない。エネルギッシュで、ポジティブで、ファンを愛し愛され、太陽のように明るい、白川未奈選手に話を聞いた。(全3回の1回目)

30歳でデビューしてから、雑誌の表紙を飾るまでに

筆者が初めて白川にインタビューしたのは、1年10か月前。「『女の花は短い』と言われるのがすごくイヤ。女性は何歳になっても女性じゃないですか」という言葉が、いまでも心のど真ん中に突き刺さっている。白川は30歳でプロレスデビュー。身も心もエイジレスな彼女へのインタビューが実現した。白川未奈の現在地と野望とは――?



***

インタビューの直前、白川率いる「Club Venus」が、その週の『週刊プロレス』の表紙を飾ることが発表された。取材場所に入ってくるなり、彼女は「うれしい!」を連呼する。ずっと夢見ていたという、週プロの表紙。祝福ムードの中、取材を進める。

『週刊プロレス 2023年 02/01号』

――おめでとうございます! 週プロの表紙は、やっぱり大きいですか?

大きいですね、やっぱり。そのときに影響力がある人しか表紙にはなれない。そこに選んでもらえたというのが、ものすごく嬉しいです。

――買います、絶対。

100冊ね!(笑)

――怪我はもう大丈夫……? ※昨年、11月3日の広島大会で、上谷沙弥の持つワンダー・オブ・スターダム王座(通称、白いベルト)に挑戦。しかし、上谷のフェニックス・スプラッシュが顔面に直撃し、試合はレフェリーストップ。上谷の防衛となった。

完璧かと言ったらあれかもしれないですけど、まあ大丈夫です。

――どんな思いで臨んだ試合でしたか?

自分がいままでやってきたことすべてを賭けて臨みました。もちろん勝つのもそうだし、こんなチャンスを掴んでいい試合ができなかったら、この先プロレスラーとしてもっと上に上がるなんて無理だろうなと思った。そこまでコツコツと組み立ててきたプロレスのスタイルには自信があったので、緊張は一切なかったです。ベルトを獲れる自信もあったし、すべて魅せられる自信があったので、怖いものはなにもなかったですね。

前歯3本折られても心は折れず…

――しかし、大怪我をしてしまった……。

あの瞬間、痛みよりも、メンタルが落ち込むよりもなによりも、あの姿でリングを降りなきゃいけないっていう悔しさですよね。映像では抜かれてたし、会場にいる人もサーっと引いた空気を感じた。かつ顔もボロボロになってて、その姿で降りなきゃいけないのが悔しすぎて。
“可哀想”という状態でリングを降りるのが、わたし的には許せなかったので、死にもの狂いでマイクを掴んで喋りました。

対戦相手からの「白川未奈、この白いベルト希望だった? 絶望だった?」との問いかけに、

「絶望の血の味がするよ。歯も希望もどこか取れちゃった。でもこの火は絶対に消えないから地獄から這い上がってやるよ」(白川リングマイク)

――あそこで喋れるのが、白川未奈だなという感じはします。

あそこで喋る以外の選択肢はなくて。レフェリーストップは賢明な判断だったと思うんですけど、わたしは正直、まだ闘う気力があった。わたしは(3カウントの前に)返してるので。意識があったし、闘う意志もあったんです。自分は闘いたい。でも終わった。お客さんは冷めている。上谷は勝って、「どうだった?」って聞いてくる。あそこで無言で帰ったら、結局すべて上谷の勝ちになる。それは許せなかったので。そういうところも勝負だなと思いますね。

――歯がボロボロに折れてしまって……自分の歯だったんですよね?

そうです。前歯3本、神経が死んじゃって。でも、(中野)たむがリングに落ちた歯を拾っててくれたので、もしあれがなかったら仮歯を差し込まなきゃいけなかった。

――いやあ、自分の歯が折れるというのは、本当にショックだと思うんですよ……。欠場中はどんな思いで過ごされましたか?

とにかく悔しいっていうのと、あとは怪我のイメージがつくのがすごくイヤでしたね。前の欠場(2020年12月)から大きい怪我もなくて、コンディションはずっとよかったので。なのに、すごく大きい怪我をしちゃったので、「怪我のイメージつくじゃん……」みたいな。それってすごくレスラーにとってマイナスかなぁと。怪我は付き物なんですけど。

「絶対、地獄から這い上がるところを見せる」

――メンタルは落ち込みませんでしたか?

リングで自分がマイクを持って、ファンの人に「絶対、地獄から這い上がるところを見せるから、待っててください」みたいなことを言ったし、約束したから、そんな強いことを言っておいて、ネチネチ悩んでいる姿を見せるのは違うっていう気持ちがありました。

頭で「ダメかも」と思っているとそういう風になっていくから、「いや、わたしは大丈夫だし! これは乗り越えればいいだけだし! 乗り越えたらまた強くなれてるし!」って、自分を奮い立たせた。あとは、上谷をぶっ潰すっていう。

それがモチベーションでしたね。わたしは負けてないと思ってるんで。

――白いベルトは、上谷選手から奪うことに意味がある?

そうですね、こうなったからには。上谷が今度、渡辺桃から防衛できなかったとして、それでもベルト挑戦は自分のMAXいい時期にいこうと思うけど、そこで獲ったとしても、上谷を挑戦者に指名するかな。あの人から3(カウント)を取れないと、自分のモヤモヤは回収できないと思います。

――なぜそこまで白いベルトにこだわる?

白と赤(ワールド・オブ・スターダム王座)があるけど、わたしは白のほうにすごく興味があって。白いベルトって持つ人によって本当にイメージが変わる。その人の色に染まる。だから白なのかなと思うんですけど。

赤は“THE・ストロング”みたいな印象がすごく濃いけど、白のベルトは持つ人によって本当に表情が変わる。わたしは既存のものよりも、自分でイメージを作ったり、変えていくことのほうが好きだから、白いベルトを白川未奈の色に染めてみたいなと思いましたね。

――そういうお話を聞くと、白川選手は白が似合う気がします。

白いベルトは神聖なものすぎて、たむが持ってたときに受け取ったりしたけど、持つ手が震えました。相応しい人間しか触っちゃいけない。
(#2へつづく)

白川未奈の肉体美と鮮やかなリングコスチューム撮り下ろしはこちらから(すべての画像を見るをクリック)

取材・文/尾崎ムギ子 撮影/井上たろう

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