3つの宇宙望遠鏡の合作。多波長で捉えた“幻の銀河”「M74」
sorae.jp / 2023年6月3日 11時30分
こちらは「うお座」の方向約3200万光年先にある渦巻銀河「M74(Messier 74)」です。M74は明瞭な渦巻腕(渦状腕)を持つことから、はっきりと目立つ渦巻腕がある「グランドデザイン渦巻銀河」(grand design spiral galaxy)に分類されています。
名称の「Messier(メシエ)」は、18世紀にフランスの天文学者シャルル・メシエがまとめた「メシエカタログ」に記載されていることを示しています。M74はメシエカタログの他の銀河よりも暗く、見えにくいことから「幻の銀河(Phantom Galaxy)」とも呼ばれています。
実はこの画像、単一の望遠鏡で撮影されたものではありません。画像の作成には「ハッブル」宇宙望遠鏡、「チャンドラ」X線観測衛星、そして「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡で取得されたデータが使用されています。
ウェッブ宇宙望遠鏡で取得された赤外線の観測データ(使用されたフィルターに応じて緑・黄・赤で着色)は、M74に存在するガスや塵の輪郭を描き出しています。ハッブル宇宙望遠鏡で取得された光学観測データ(同様にオレンジ・シアン・青で着色)は、ダストレーン(塵が帯状に濃く集まっている部分)に沿う星々や塵を示しています。そしてチャンドラX線観測衛星で取得されたX線の観測データ(紫で着色)は、M74に潜む高エネルギー天体の活動に焦点を当てています。
このように、同じ天体を可視光線だけでなく赤外線、紫外線、電波、X線といった様々な波長の電磁波で観測することは「多波長観測」と呼ばれています。多波長観測を行うと、ある特定の波長だけで観測した時にはわからなかった性質や構造が見えてくるのです。
本記事に掲載したM74の画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)やスミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターから2023年5月23日付で公開されています。
Source
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/ESA/STScI; IR: NASA/ESA/CSA/STScI; Image Processing: L. Frattare, J. Major, and K. Arcand NASA/JPL - NASA’s Chandra, Webb Telescopes Combine for Arresting Views Candra X-ray Center - NASA's Chandra, Webb Combine for Arresting Views文/sorae編集部
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