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赤色矮星を公転する惑星の3分の1は表面に液体の水が存在できる可能性

sorae.jp / 2023年6月9日 21時5分

フロリダ大学の博士課程学生Sheila Sagearさんと同大学の天文学者Sarah Ballardさんは、太陽よりも直径や質量が小さく、恒星の中でもありふれたタイプである赤色矮星(M型星)を公転する太陽系外惑星について、その3分の1は表面に液体の水が存在できる可能性があるとする研究成果を発表しました。

このような系外惑星は地球外生命を探索する上での最適なターゲットになり得ることや、対象となる惑星は天の川銀河だけでも何億もあると推定されることから、Sagearさんは「今回の成果は今後10年間の系外惑星の研究にとって非常に重要だと思います」とコメントしています。

【▲ 赤色矮星を公転する系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

【▲ 赤色矮星を公転する系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

人類はこれまでに5400個以上の系外惑星を発見していますが、赤色矮星の周囲では地球に似た岩石質と推定される系外惑星が幾つも見つかっています。ハビタブルゾーン(天体の表面に液体の水が安定して存在し得る領域)を公転しているなどの条件次第では生命が存在する可能性もあることから、これらの系外惑星は研究者の注目を集めています。

赤色矮星の表面温度は4000℃程度よりも低く、ハビタブルゾーンは主星である恒星からそれほど離れていない場所に広がっているため、その中を公転する惑星は主星の重力がもたらす潮汐力の影響を強く受けます。潮汐力を受けた天体はわずかに変形しますが、惑星の軌道が真円ではなく楕円形に歪んでいる場合、公転軌道を周回する度に変形の度合いが周期的に変化することになるため、惑星の内部では摩擦による熱が生じます。

このように、潮汐力によって天体内部が加熱される現象は「潮汐加熱」と呼ばれています。木星の衛星イオでは木星や他の衛星の重力による潮汐加熱を熱源とした非常に活発な火山活動が知られていますし、土星の衛星エンケラドゥスからプルーム(水柱、間欠泉)として噴出する水は潮汐加熱によって維持されている内部海が源だと考えられています。

系外惑星でも同様に潮汐加熱が起きている可能性があり、火山活動が起きていると指摘されているものもありますが、生命の居住可能性という観点では加熱の強さが問題になります。もしも極端な潮汐加熱が起きた場合、惑星は表面に液体の水が存在できないほど加熱されることも考えられるというのです。

【▲ 参考:火山活動が起きている可能性がある太陽系外惑星「LP 791-18 d」の想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith (KRBwyle))】

【▲ 参考:火山活動が起きている可能性がある太陽系外惑星「LP 791-18 d」の想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith (KRBwyle))】

関連:火山活動が起きているかも? 86光年離れた地球サイズの太陽系外惑星を発見(2023年5月20日)

今回、SagearさんとBallardさんは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「Kepler(ケプラー)」宇宙望遠鏡と欧州宇宙機関(ESA)の「Gaia(ガイア)」宇宙望遠鏡の観測データを使用して、101個の赤色矮星を公転する合計163個の系外惑星について、潮汐加熱の強さに影響する公転軌道の離心率(軌道離心率)を調べました。

離心率とは軌道の形を示す数値のことで、真円は0、楕円は0よりも大きくて1よりも小さく、放物線は1、双曲線は1よりも大きくなります。たとえば月の公転軌道は離心率0.0549の楕円形なので、地球に近付く時と遠ざかる時の距離には約4万kmの差があります。地球に近付いて大きく見えるタイミングの満月はスーパームーンと呼ばれています。

分析の結果、調査対象のうち3分の2の惑星は離心率が大きく、極端な潮汐力がもたらす加熱によって表面で液体の水を保持できない可能性が示されました。いっぽう、残りの3分の1の惑星ではそこまで潮汐加熱が強くはなく、表面に液体の水を保持できる可能性、ひいては生命が存在する可能性もあることが示されています。複数の惑星が見つかっている惑星系では公転軌道の離心率は小さくて真円に近い傾向にあり、主星を単独で公転する惑星では離心率は大きい傾向にあることもわかったといいます。

なお、赤色矮星の周囲では主星からの距離や公転軌道の離心率だけでなく、赤色矮星の活動性も生命の居住可能性を左右すると考えられています。最近では約4.2光年先の赤色矮星「プロキシマ・ケンタウリ」の活動を分析した結果、そのハビタブルゾーンを公転している系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」の居住可能性は低いかもしれないとする研究成果が発表されています。

また、過去には赤色矮星の活動が惑星大気中のオゾン層の形成を促したり、赤色矮星の表面でフレアが発生する緯度によっては惑星への影響は限定的だとする研究成果も発表されています。

関連
・系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」は “ハビタブル” ではない?強烈な恒星風にさらされている可能性(2023年1月2日)
・赤色矮星のフレアにさらされる惑星ではオゾン層の形成が促されているかもしれない(2022年12月2日)
・朗報? 赤色矮星のフレアが系外惑星に及ぼす影響は限定的かもしれない(2021年8月10日)

SagearさんとBallardさんによる今回の成果は、強い潮汐加熱が生じることもある赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する系外惑星のなかにも、地球外生命探査の対象になり得る惑星が数多く存在する可能性を示しており、今後の研究に対する影響が注目されます。両名の研究成果は2023年5月30日付で米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されています。

 

Source

Image Credit: NASA/JPL-Caltech, NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith (KRBwyle) University of Florida - One-third of galaxy’s most common planets could be in habitable zone Media INAF - Un terzo degli esopianeti nella zona abitabile Sagear & Ballard - The orbital eccentricity distribution of planets orbiting M dwarfs (PNAS, arXiv)

文/sorae編集部

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