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ブラック”ホール”フライデー!? 2019年のブラックホールニュースを振り返る

sorae.jp / 2019年11月30日 21時0分

日本でもオンライン通販サイトや小売店などでセールが開催されるようになった「ブラックフライデー」。NASAはこの日にちなみ「Black Hole Friday(ブラックホールフライデー)」と題して、ブラックホールについてのニュースや知識を改めてピックアップしています。

そこで、soraeでも一足早く、今年のブラックホールに関するニュースを幾つか振り返ってみたいと思います。

■史上初のブラックホール直接撮像に成功

EHTが撮像に成功したM87中心部の超大質量ブラックホール(Credit: EHT Collaboration)

2019年4月、国際協力プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、地球からおよそ5500万光年離れた楕円銀河「M87」の中心にある超大質量ブラックホールの直接撮像に成功したことを発表しました。この功績により、EHTに参加するメンバー347名には2019年の基礎物理学ブレイクスルー賞が授与されています。

今年のブラックホールニュースといえば、やはりこの話題。ブラックホール(正確にはその事象の地平面)を直接見ることはできませんが、太陽65億個分という途方もない質量がもたらす重力によって進路を捻じ曲げられた光(電磁波)が、ブラックホールを縁取るリングのようにキャッチされています。

EHTは天の川銀河の中心に存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の観測にも挑んでおり、こちらの成果にも期待が高まります。

関連記事:人類が新たに開いた扉。「ブラックホールの直接撮影」に成功。”シャドウ”を捉える

■ブラックホールの見え方をNASAがシミュレーション動画化

ブラックホールを横から見た場合のシミュレーション動画(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman)

9月には、NASAからブラックホールの見え方を可視化したシミュレーション動画が公開されました。

ブラックホールの周囲には吸い込まれかけた高温のガスによって降着円盤が形成されることがあり、これをどの角度から見るかによってブラックホールの見え方も変化します。上(あるいは下)から見るとドーナツ状の降着円盤が見えるだけですが、横から見ると降着円盤の裏側に回り込んでいる部分からの光が大きく捻じ曲げられて、上下両面が同時に見えてしまいます。

角度によって見え方が変わる様子を示したシミュレーション動画(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman)

横から見た場合のシミュレーション動画から、映画「インターステラー」の重要な舞台であるブラックホール「ガルガンチュア」を想起した方も多いのではないでしょうか。

関連記事:ブラックホールはどう見える? NASAが新しいシミュレーション動画を公開

■時には銀河から恒星を追い出してしまうことも

銀河中心を高速で飛び出した恒星「S5-HVS1」(右)の想像図(Credit: James Josephides (Swinburne Astronomy Productions))

地球からおよそ2万9000光年先に、秒速1700km(日本の新幹線のおよそ2万倍)という猛スピードで天の川銀河を脱出しつつある恒星「S5-HVS1」があります。11月に発表された研究では、この星が天の川銀河の中心にあるとされる超大質量ブラックホール「いて座A*」によって放り出されたとしています。

研究によると、S5-HVS1は別の恒星との連星として誕生したものの、片方の恒星がいて座A*に捕らえられてしまいました。ところが、連星のペアであるS5-HVS1には逆に大きな運動エネルギーが与えられ、天の川銀河を脱出することになったと考えられています。

関連記事:秒速1700kmで天の川銀河を脱出する恒星。ブラックホールに弾き飛ばされたか

■太陽系にもブラックホールが存在する!?

「地球5個分の質量を持った原始ブラックホール」の論文紙面上での大きさを示したイラスト(論文より引用。画面上での表示サイズとは異なります。Credit: Jakub Scholtz et al.)

太陽系の惑星は8つありますが、海王星よりも外側にある太陽系外縁天体の軌道から、未知の惑星が存在する可能性が以前より指摘されています。「第9惑星」や「惑星X」などと呼ばれるこの惑星は地球の10倍ほどの重さがあり、太陽から海王星までの距離より20倍遠いところ(およそ600天文単位)を1万~2万年かけて公転していると予想されています。

その第9惑星が、実はビッグバンの頃に形成された原始ブラックホールなのではないかとする研究結果が9月に発表されています。太陽系が形成されてからどこかの時点で、たまたまやってきた原始ブラックホールが太陽を周回するようになったのではないかというのです。その重さは地球の5倍から15倍と推定されていて、5倍だった場合の実物大イラスト(事象の地平面のサイズ)も論文紙面に掲載されています。ちなみに10倍だった場合、その大きさはボウリングのボールくらいになるようです。

関連記事:未発見の「第9惑星」その正体は小さなブラックホールだとする説が登場

太陽の数十億倍という極めて重いブラックホールの直接撮像から、太陽系にあるかもしれない極小サイズのブラックホールに関する研究まで、今年はさまざまなブラックホールニュースがありました。来年2020年には、ブラックホールに関するどのような発見が待ち受けているのでしょうか。

降着円盤を伴わないブラックホールの想像図(Credit: NASA/ESA and G. Bacon (STScI))

 

文/松村武宏

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