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火星の大空を飛行する火星ヘリコプター「インジェニュイティ」

sorae.jp / 2021年1月25日 11時51分

NASAの火星ヘリコプター、インジェニュイティの画像。(Credit: NASA/JPL-Caltech)

NASAの火星ヘリコプター、インジェニュイティの画像。(Credit: NASA/JPL-Caltech)

2021年2月18日、いよいよNASAの火星探査車「Perseverance(パーサヴィアランス・パーセべランス)が火星に到着します。Perseveranceは、35億年以上前に形成され、かつては湖だったとされるジェゼロ・クレーターに着陸し古代の火星における生命の痕跡を探査します。

ところで、みなさんはこのパーサヴィアランスには火星ヘリコプターが搭載されていることをご存知ですか?その名は「Ingenuity(インジェニュイティ)。創意工夫などの意味があります。

重さは約1.8kgで、胴体の大きさはティッシュの箱(a tissue box)ほどになります。

Ingenuityの開発は6年前にNASAのジェット推進研究所で始まりました。最初、エンジニア達は理論的には可能だが、実際につくれるかどうかはやってみなければわからないという気持ちで開発が始まったといいます。

火星の大気の濃度は地球の大気の約1%ほどしかありません。このように薄い大気の中を飛行するためには、大きく高速で回転する回転翼を備えなければなりません。しかも、できる限り、全体を軽くつくる必要があります。

また、Perseveranceが着陸するジェゼロ・クレーターは夜には気温が-90℃にまで下がります。そのため、そのような超低温状態でも正常に動作するように、インジェニュイティに使われる既製の部品には高い品質が求められます。

開発チームは非常に高い技術的なハードルをいくつも超えなければなりませんでした。

そして、のべ4億7100万kmにも及ぶ長旅を終えて、火星に着陸すると、パーサヴィアランスは、適切な場所を探して、Ingenuityを地上に降ろします。ただ、Ingenuityはすぐに試験飛行するわけではありません。1ヶ月以上に渡って機器のチェックをする必要があるためです。

そして、その後、問題がなければ、30日(地球時間に換算すると31日)の間に、最大5回のテスト飛行をおこないます。

ただ、残念ながら、Ingenuityには科学的な観測装置は搭載されていません。火星の大気中で回転翼を使って飛行すること自体がミッションだからです。

そして、そのミッションのなかでも、特に注目したいのは、インジェニュイティに搭載されている自律的に飛行するシステムが正しく動作するかどうかです。

火星と地球はとても遠く離れています。そのため通信に片道3分から20分ほどのタイムラグが生じます。地球からIngenuityを直接操縦することはできません。

そこで、Ingenuityには、エンジニアが指定した飛行経路を、その場で取得した画像やセンサーのデータを分析しながら、自律的に飛行するシステムが搭載されています。

実は、日本のはやぶさ2にもこのような自律運用システムが搭載されていて、タッチダウンなどで大きな役割をはたしました。

こうして、最初のテスト飛行に成功した場合には、さらにテスト飛行を繰り返し続けていく予定になっています。

最後に、NASAはこのような火星ヘリコプターの将来的な用途について、火星周回探査機では得られないような高解像度の画像の取得や火星探査車、宇宙飛行士のための偵察、火星探査車では行けないような場所の探査などさまざまな用途が考えられるとしています。

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/飯銅重幸

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