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ブラックホールの活動が激変させた銀河中心付近の環境、アルマ望遠鏡が捉える

sorae.jp / 2021年3月17日 21時7分

今回の研究成果をもとに描かれた活動銀河核周辺の想像図。外側の茶色は分子ガス、内側の水色は電離ガス、その間に広がる黄色は原子ガスが存在する部分を示す(Credit: 泉拓磨/NAOJ)

今回の研究成果をもとに描かれた活動銀河核周辺の想像図。外側の茶色は分子ガス、内側の水色は電離ガス、その間に広がる黄色は原子ガスが存在する部分を示す(Credit: 泉拓磨/NAOJ)

国立天文台の泉拓磨氏らの研究グループは、強い電磁波を放射する銀河の中心部分である「活動銀河核」から放射されたX線が、その周辺環境の性質を大きく変化させている様子を捉えることに成功したとする研究成果を発表しました。今回の成果は超大質量ブラックホールの進化を理解することにつながると期待されています。

ブラックホールに落下していく周辺の星間物質(ガスや塵などの集まり)は、ブラックホールを高速で周回しながら明るく輝く高温の降着円盤を形成すると考えられています。数多くの銀河の中心に存在するとみられる超大質量ブラックホール(質量は太陽の数十万倍から数十億倍)の場合、ときには銀河全体よりも明るく輝く活動銀河核として観測されることもあります。

今回研究グループはチリの「アルマ望遠鏡」を使って、およそ2億光年先の銀河「NGC 7469」を観測しました。研究グループによると、この銀河には活動銀河核の周囲をリング状に取り囲むような直径3000光年程度の星形成領域が存在しており、活動銀河核と星形成領域におけるガスの性質の違いを理解する上で格好の観測対象だといいます。NGC 7469に存在する一酸化炭素分子(CO)と炭素原子(C)からの放射を高解像度(解像度は300光年程度)で捉えたところ、活動銀河核の周辺では炭素原子の放射が著しく強くなっていることが初めて判明したとされています。

アルマ望遠鏡によるNGC 7469の観測結果。左は一酸化炭素分子の放射、右は炭素原子の放射。色の違いは強度の高低を示す(赤いほど高い)(Credit: 泉拓磨/NAOJ)

アルマ望遠鏡によるNGC 7469の観測結果。左は一酸化炭素分子の放射、右は炭素原子の放射。色の違いは強度の高低を示す(赤いほど高い)(Credit: 泉拓磨/NAOJ)

研究グループがNGC 7469の活動銀河核における炭素原子と一酸化炭素分子の量の比を求めた結果、その値はNGC 7469の星形成領域や他の星形成銀河(星形成活動が活発な銀河)の10倍以上、天の川銀河の静かな環境の100倍以上に達したとされています。この観測結果について研究グループは、活動銀河核から放射されたX線が周辺の星間物質に効率良く作用し、ガスを加熱して分子を原子に分解したり電離させたりしたことで、周辺環境の物理化学的性質が激変した様子を捉えたものだと考えています。

研究グループによると、このように性質が変化した環境を観測することで、従来よりも活動銀河核が見つけやすくなるといいます。たとえば星間物質が豊富な2つの銀河が合体すると、合体後の中心へと流入した星間物質に含まれる塵が中心付近からの可視光線や紫外線を遮ってしまうため、「すばる望遠鏡」などの観測では合体銀河の活動銀河核を見落としてしまうことがあると研究グループは指摘します。

今回の成果について研究グループは、星間物質に埋もれて見つけにくかった活動銀河核の詳細な観測を通して、その原動力である超大質量ブラックホールの進化を包括的に理解することにつながると期待を寄せています。

「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した合体銀河「Arp 220」。星間物質が可視光線を吸収するため、その背後の活動銀河核を特定するのは難しいという(Credit: NASA, ESA, and C. Wilson)

「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した合体銀河「Arp 220」。星間物質が可視光線を吸収するため、その背後の活動銀河核を特定するのは難しいという(Credit: NASA, ESA, and C. Wilson)

 

Image Credit: 泉拓磨/NAOJ
Source: 国立天文台
文/松村武宏

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